【八王子学園八王子】安藤徳明監督「指導者には大切な子どもを預かる自覚が必要」

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2019年05月17日 12:12  ベースボールキング

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2016年に八王子市初となる甲子園出場を果たした八王子学園八王子。チームを率いる安藤徳明監督は「話が面白く、人望が厚い」と選手からも尊敬される人柄。そんな安藤監督に高校野球の現状や、指導者に必要なことを伺いました。



――高校野球で伸びる選手、伸びない選手の違いがあれば教えてください。

「うちにも中学時代は所属チームの中心で、いわばお山の大将といった選手が自信満々で入部してきます。彼らが持つ誰にも負けないという自信やプライドは勝負においては非常に大事だと思っています。でも、レベルが上がるにつれ、試合や練習で自分が思っていたようにプレーできない時があります。そういった状況に陥った時に『結果はどうなるかわからないが、自分の悪い部分を変えてみよう!』と素直に思い、上手くなるためにどうすればいいのか考えられる選手は伸びると思います。逆に昔の栄光にすがり、意固地になって何も変えられない選手は伸びる可能性が低いと思います」

――選手を指導する上で安藤監督が大事にしていることはなんでしょうか?

「私は練習中に『こうしなさい!』とは言わず『なんでこうしているの? 今キミは私から見てこうなっているよ』と現状を教えるだけに留めます。そこで改善したいと選手が望めば、一緒になって考えていきましょうというスタンスです。その指導方針は高校野球の前に、中学の女子バスケットボール部を教えていた経験からきています。上からこうしろ、ああしろといった指導を改め、自分の思っていることを素直に口にできる選手を育てて、日本一という結果を得たからです。つまり、指導者に言われるままの選手を育ててはダメということですね。失敗してもいいから何事もトライしてみる。それをなるべく見守ることも指導者には必要です」

――例え失敗をしてもそれが貴重な経験になり、選手自身が考える力に繋がるわけですね。ちなみに、現代の高校球児ならではの特徴などはありますか?

「指導者にビクビクする選手は昔に比べて減っていると思います。大人が安易に手を出すこともなくなりましたし、指導者に対する目も昔に比べ厳しくなっている現状がありますから。ただ、親をはじめとして周りの大人が子どもを必要以上に大事に育て過ぎているのではないかという疑問も個人的に感じます。優しく接することは良いとは思いますが、大人が正しいと思うレールに子どもを強制的に乗せているケースも多いと思います」

そうなると、子ども自身で解決する機会が減ってしまう恐れがあります。例えば昔であれば同級生と喧嘩をしたとしても、次の日学校で会わなければいけません。『先に謝った方が良いかな? じゃあなんて謝ろう? どのタイミングで声をかけようかな?』といった葛藤を経て人間関係を築いていきます。でも、最近は子どもの些細な喧嘩でも親が介入し、学校側になんとかしてくださいと要求するケースが増えています。子ども同士で解決する機会を大人が奪ってしまっては、人間関係を築くという過程を経験できないで成長してしまう可能性があります。ただ、最近のいじめ問題を含め、ここら辺の線引きが難しいということはありますけれどね」

――安藤監督自身、高校球児を育てる親の一人です(次男の大斗くんは昨年の代の主将。三男の健くんは1年生としてチームに所属)。親として指導者としての葛藤はありますか?

「私の場合は部活に忙しく、他の親御さんに比べて幼い頃に自分の子どもへ時間を割くことができませんでした。その分、妻には苦労を掛けさせてしまいました。家で練習を見てあげることもほとんどありませんでした。ただ、昨年キャプテンを務めた次男が生まれた年に八王子に赴任したので、彼らは小さい頃から野球が身近にあり、試合になれば毎年スタンドに応援に来ていました。進学を決めたのも本人の意思です。ただ一日中親といるのは耐えられないといって次男も、三男も寮に入りましたけどね(笑)。
監督としてはなるべく周りの選手と同じように見ています。周りからの目もあり本人は色々思うこともあるでしょうから、私が特別厳しくすることはないですよ」

――息子さんを高校野球へと考えている保護者の方にアドバイスがあればぜひ聞かせてください。

「チームが強いから、甲子園に行けるからではなく、大事な子どもをその指導者にちゃんと預けられるのか? という視点を大事にして欲しいと思います。思うように指導をしてくれなかったり、自分の子どもが目の前で悩んだり苦しんだりする場面も多々あると思います。子どもの肩を持ちたいのが親心です。でも、他人だからできる教育もあると私は思います。親と指導者が信頼関係を築くことで、我が子の成長する姿を多少俯瞰して見守れることができるのではないでしょうか」

――なるほど。逆に指導者は保護者から大事な子どもを預かっている立場を理解し、信頼される人間にならなければいけないということですね?

「そうです。他人の子どもを預かるということは、どれほど重たいことなのか真摯に受け止める必要があります。厳しくしたり、優しくしたり、接し方はケースによって変わりますが、なるべく我が子のように接してあげて欲しいです。
あと、野球が上手くなりたいと思っている子どもには、野球を嫌いにならずに少しでも上達する術を指導者がもっと勉強しないといけません。技術指導にしても色んな方法やアプローチの仕方があるわけですから。子どもが悩んでいたら、一緒になって考えることができる人間が指導者になって欲しいと私は思います」。

安藤監督、お忙しい中貴重な意見をありがとうございました。
(取材・写真:細川良介)

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