乃木坂46 山下美月、西野七瀬とは異なる演技の魅力 『電影少女』で“自身を客観視する力”を発揮

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2019年05月30日 06:01  リアルサウンド

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 現在放送中のドラマ『電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-』(テレビ東京系)で主演を務める乃木坂46の山下美月。昨年放送された『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』(テレビ東京系)で主演を務めた元乃木坂46の西野七瀬からバトンを受け継ぐことになり、彼女と比べられることは避けられないが、西野とは違った妖艶な演技で視聴者の心をガッチリ掴んでいる。昨年公開の映画『日日是好日』への出演を皮切りに、今年は1月期のBSテレ東『神酒クリニックで乾杯を』でヒロインを務め、日本テレビ系ドラマ『ザンビ』と、早くも3本目のドラマ出演となる。


参考:場面写真一覧はこちらから


 山下美月は2016年に乃木坂46の3期生として加入。20thシングル『シンクロニシティ』に福神として初選抜され、21stシングル『ジコチューで行こう!』に収録された3期生楽曲「自分じゃない感じ」で初の単独センターを務める。ファンへの好対応やインタビューなども“山下プロ”と称されるほどで、最新シングル『Sing Out!』はドラマに集中するために参加を見送ったり、梅澤美波が「限られた見せ場で自分をどう活かすか考えていて、内に秘めた負けず嫌いがすごい強い」(「BRODY」2018年10月号)と評したように、与えられた仕事はきっちり成功させるという仕事へのプロ意識が高い彼女が、舞台や選抜などのアイドル活動を経験を重ねた今では「アイドルがマジ天職だと思っています!」(「月刊B.L.T.」2019年1月号)とも語っており、今後の成長がさらに楽しみだ。


 2018年にはファッション誌『CanCam』の専属モデルに抜擢、乃木坂46版ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』では主人公の月野うさぎ役に選ばれるなど活動は多岐にわたり、そしてAKB48グループと坂道系がタッグを組んだドリームチーム、坂道AKBの第三弾「初恋ドア」でセンターに抜擢されるなど、乃木坂の次期エース候補の一人とも言える。


 山下が初ヒロイン役を演じたドラマ『神酒クリニックで乾杯を』では、クリニックのメンバーから愛される、おっとり清純派の看護師・一ノ瀬真美役を熱演。ドジっ子という設定ながら、近づきすぎると豹変しブラックな一面が出たり、シリアスな場面では優しさを見せたりと、そのマイペースぶりが山下が持つ小悪魔的なミステリアスさとマッチしていた。


 ドラマのプロデューサーは「持ち前の圧倒的に透明感のある笑顔と、内にもつ芯の強さ、凛とした華やかさ、そして真美が持つ独特なギャップやミステリアスな雰囲気など、彼女に必要な要素を全て、山下さんが持っている気がしました」(参考:https://www.tv-tokyo.co.jp/information/2018/11/24/212989.html)と語っているが、雰囲気だけでなく、女優としてはほぼ新人なのに演技が全くわざとらしくなく、目の配り方や抑揚のある声など自然な演技に圧倒された。


 そして山下は、乃木坂のエースとして一時代を築いた西野七瀬から『電影少女』を引き継ぐことになる。とは言え、西野が演じた明るいビデオガール・天野アイとは違い、山下演じる神尾マイは悪のビデオガールというダークヒロイン。ビデオを再生した主人を癒すという役割は変わりないが、アイは主人を一生懸命応援する無邪気なタイプであるのに対し、マイは目的のためなら相手の心にあるダークサイドを巧みに操り廃人になるまで追い込んでいく。


 決して直接その行為は見せないが、相手を寝取って虜にしていくその姿はエロティックで、乃木坂メンバーがここまでやるのかと視聴者を惑わしていく山下の小悪魔っぷりが見事だ。アイはプログラミングされたビデオガールがいかに人間味を出していくか、マイはいかに人間味を消すかという、演技の違いも面白い。感情が無であればあるほど、その間に見せるふとした表情に悲しみや慈しみが伝わってくるところが、マイの魅力であり、山下の演技の深みだと考える。


 西野の場合はアイドルやモデルとしてのキャリアがある分、女優としての固定された色がなく、毎回その役になりきろうと頑張り、キャラクターに親しみが湧いてくるようなイメージでアイ役にハマっていった。一方の山下の演技は、自分と演じるキャラクターを重ね合わせていくようで、内面にある人間味を視聴者に気づかせていく、西野とはタイプが違う役者だと感じる。


 また今回のマイ役に関して山下は「普段、私が他のお仕事をしている中では見せない表情とか、仕草、いろんなものをさらけ出していて。あんなに怖い表情とか、人を罵倒するようなこともないですし。それを無でマイちゃんはやっているので、人間にはない怖さを自分の中から出す、とういうことを試行錯誤しています。殻を破って、この作品に臨んでいる」(「BARFOUT!」vol285より)と語っているが、それは2年前の「BUBKA」のインタビューの、「アイドルとして活動する時は、もう一人の自分を作って、違う人間に乗り移ってるみたいな感じ」というコメントにも共通する部分がある。女優としてもアイドルとしても、同じ感覚で自分を客観視できるからこそ、今回のマイがハマリ役となったのではないだろうか。


 アイドル活動と同じく、きっちりと分析して全力で挑む姿勢が女優業でも活かされ、若干19歳にして結果を出している山下は、今後どんな役でも演じられる器用な女優になる素質がある。山下が、その持ち前の演技力を活かして、乃木坂46のエースになる日もそう遠くはないだろう。今見ておくべき女優の一人だ。


(文=本 手)


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