【教えてメンタルトレーナー】失敗した子どもの気持ちを切り替える方法

1

2019年06月04日 12:13  ベースボールキング

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ベースボールキング

写真
質問・ご相談
大事な試合の大事な場面でセカンドを守っていた子どもが失点に繋がるエラーをしてしまいました。試合はなんとか勝利することができましたが、その子は自信をなくしてしまったのか、次の試合を「お腹が痛い」と言って出ることを拒みました。 あとで話を聞くと、エラーした後(その後ボールは飛んでこなかったのですが)はずっと「またエラーしたらどうしよう...ボールよ来るな、来るな...」とずっとドキドキして逃げ出したかったのだそうです。それがとても辛くて、もう試合に出たくないと思ったそうです。 このような場合、失敗からすぐに気持ちを切り替えるために大人はどんな言葉をかけてあげるべきでしょうか?

藤代さんの答え


メンタルコーチの藤代圭一です。
ご質問ありがとうございます。大事な試合の大事な場面。想像するに彼にとって緊張感はとても高く、そこで失敗してしまったことが大きなショックとして残ってしまったのですね。

さて、「どのような言葉をかけると、すぐに気持ちを切り替えることができるか?」というご質問をいただきましたが、言葉をかけることだけで切り替えることはとても難しいものです。いえ、「準備せずに、言葉をかけるだけで切り替えることは難しい」といった方がいいかもしれません。

●事前に「ミスをすること」をイメージしよう

まずは、彼がミスをしてしまった時、まわりからどんな言葉が聞こえてきたでしょうか?

「なにやってんだよ」
「ちゃんとやれよ」
「いつまでも落ち込むな!」

といった言葉や、ため息や不満の表情をあらわにする選手や保護者の皆さんの中にあったとしたら、彼は「ボールが来ないでほしい」と思うのも仕方がありません。
彼は、失敗することもそうですが、その後に大切なチームメイトや監督、保護者から拒否されることを恐れている可能性もあります。

もし彼に切り替えてほしいならば、過去のミスを否定するのではなく、次の守備に自信をもって取り組んでほしいという気持ちを伝えることが大切です。上記のような、ネガティブな言葉や表現ではなく、

「次はうまくいくよ」
「大丈夫、切り替えよう」
「誰だってミスするよ、次つぎ!」

といったポジティブなものに変えてみましょう。

そして、これは子どもたち選手とあらかじめミーティングなどを実施しておくことも効果的です。大事な試合まで少し期間があることが望ましいですが、その際に、

・「もしもミスをしたら、どんな声をかけてほしい?」
・「もしもミスをしたら、どんな声をかけてほしくない?

それぞれの言葉がけに対して、みんなで書き出してみます。黒板やホワイトボード、模造紙などあれば、それをみんなでつくり、保護者のみなさんとも共有することによって、彼らが本当に望んでいる応援をすることができます。

●練習から切り替えるトレーニングをしよう

僕たち大人も会社で大きな失敗をしたり、提案先でのプレゼンテーションが思うようにいかないことは誰にだって起こり得ます。
失敗後、上司や同僚から「すぐに切り替えろ」と言われても、気持ちを前向きに持ち直すことは簡単ではありません。中には、お酒などの力を借りないと忘れられない人もいるかもしれません。

子どもたちは試合中に(それも瞬間的に)切り替えることを求められます。これは野球少年が自分のバッティングフォームをつくるために、連日、素振りをするように、日々のトレーニングが欠かせません。言葉をかけるだけで切り替えられる選手は、それまでに「切り替え」のトレーニングを積んできたと考えることができますが、一方で多くの選手は切り替えることに時間がかかってしまう要因として、普段から「切り替える練習」を取り組んでいないことにあるかもしれません。

例えば、休憩から練習の変わり目、練習Aから練習Bなどの変わり目において「切り替える」ことを意識づけていく必要があります。

サッカーを例に考えてみると「チームメイトがボールを失ってから、身体の向きを自陣に向け、3歩踏み出すまでに何秒かかるか」といったデータをストップウォッチで計り、選手と共有しているチームもあります。本来、切り替えたかどうかは本人にしかわからないものを可視化し、トレーニングしています。

これは家庭でも練習できます。たとえば、ゲームをするのであれば、あらかじめスケジュールをつくり、その時間がきたら切り替えるのです。30分と決めたら、30分で切り替える。そうした日常生活の積み重ねが、野球でもあらわれますよね。

●心は変えられないが、身体は変えられる

緊張感が大きくなると僕たちの身体も変化が起きます。胸がドキドキし、汗をかき、身体の震えを感じ、筋肉がこわばり、口が渇いたり、顔が赤らんだり、頭やお腹が痛くなったりします。
チャンスやピンチでは「いざ、リラックスしよう」としても中々できるものではありません。「心の緊張」にともなって、「身体」まで硬くなり、思考が停止して、頭が真っ白になったり、ミスを引きずりすぎることは避けたいものです。
そんなときは、直接、扱いずらい心をコントロールするのではなく、身体の緊張感をゆるめてあげましょう。たとえば、緊張した時は呼吸が浅く早くなっています。ですので、意識してゆっくり呼吸をするだけでも効果があります。また、身体全体に力を入れて意図的に力んだ状態を作り、そこから一気に力を抜くことも一つの方法です。

●失敗から切り替える儀式をつくっておく

試合のレギュレーションなどにもよりますが、もしタイムを取れるのであれば、投手の調子が悪いときにタイムを取り一呼吸おくように、彼の切り替えのために時間を止めることも効果的です。内野手であつまり、「大丈夫だよ」と声をかけるのもいいですし、円陣をつくり再スタートするのもいいかもしれません。頭で「切り替えよう」と思っても、僕らは中々切り替えることができません。けれど、身体の動きとセットにすることで、スイッチを入れ替えたように「パチっ」と不安を一度脇におくことができます。

●失敗したからこそ、身につくことがある

ジュニア年代では「ミスをすること」が大きな成長に変わることも多くあります。ミスをしてはいけないのではなく、ミスを次に活かすことが大事。ミスをしたからこそ学べることもあります。ミスをしたことを批判し、とがめるのではなく、「今日はどんな学びがあった?」と彼に聞いてみましょう。そして「どうすれば良いと思う?」と質問を重ねることによって、「もっと練習したい」「もっとうまくなりたい」というやる気に変わるかもしれません。あるチームでは「ミスはチャレンジの証」という合い言葉をつくり、試合後には必ず「今日はどんなミスがあった?」と質問し、答え合うのだそうです。もちろん、わざとミスをすることは望ましくありませんが、積極的なミスは大歓迎。そうしたチームの空気が成長したいというやる気を高めているのかもしれません。

藤代圭一さんプロフィール
一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。しつもんメンタルトレーニング主宰。
U20代表チームやインターハイ優勝チームなど全国優勝を目指すチームから地域で1勝を目指すチームまで、様々なスポーツジャンルのメンタルコーチをつとめる。
また全国各地にインストラクターを養成。その数は350名を超える。
著書に”スポーツメンタルコーチが教える「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)”がある。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定