お風呂界のエンタメ、現代銭湯建築の傑作... 都内おすすめ銭湯が丸わかり

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2019年06月13日 12:12  BOOK STAND

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『銭湯図解』塩谷 歩波 中央公論新社
銭湯といえば、私たちに身近な存在として古くから親しまれてきた公衆浴場。各家庭にお風呂が普及した今もあちこちにあり、最近ではノスタルジックな味わいがある場所として、魅力を感じる若い世代も多いようです。

 本書『銭湯図解』の著者・塩谷歩波さんもそのひとり。1990年生まれの彼女は2015年に早稲田大学大学院(建築学専攻)終了後、都内の設計事務所に勤務します。そのかたわらで、2016年末より銭湯の建物内部を俯瞰図で描く「銭湯図解」シリーズをSNS上で始めたところこれが話題に。現在は「銭湯の魅力を伝えたい」という思いとともに、イラストレーターとして、また東京・高円寺の銭湯・小杉湯で番頭として働く日々を過ごしているそう。

 そんな彼女の初めての著書では、都内を中心とした24軒の銭湯の図解をカラーの描きおろしで掲載。「アイソメトリック」という、角度をつけて建物内部を俯瞰図で描く建築図法を用いて、銭湯の浴室や脱衣所内が描き起こされています。

 ほのぼのとした味わいあるタッチの絵とともに、著者による手書きの文字が添えられエッセイ形式になっているのも本書の特徴。第1章では「銭湯を知る」として、「銭湯の原風景」だという東京・北千住の「大黒湯」(男湯)、有名商店街のそばにあり「ご飯がおいしくなる銭湯」だという東京・戸越銀座の「戸越銀座温泉」(月の湯)など初心者にふさわしい7軒がピックアップされています。

 続いて第2章「銭湯を楽しむ」は上級者コース。「現代銭湯建築の傑作」と著者が評する東京・町田の「大蔵湯」(女湯)、プロジェクションマッピングを採用した「銭湯建築のニューウェーブ」ともいえる東京・練馬の「天然温泉 久松湯」(女湯)など7軒を収録しています。

 そして第3章「銭湯を極める」はマニアックコース。著者が心が疲れて泣きたくなったときに必ず行くというのは東京・武蔵境の「境南浴場」。静かなピアノのBGMや優しいサウナの温度などが疲れた心をほぐしてくれるのだとか。ほかにもスカイツリーの色を再現した湯船やトムヤムクン湯などもあるという「お風呂界のエンタメ」こと東京・墨田の「薬師湯」(女湯)など5軒が掲載されています。

 都内の銭湯中心の本書ですが、中には日本各地へ遠征して取材したものも。明治時代からの建物と若き経営者の意欲が混じり合った京都の「サウナの梅湯」(男湯+2階)、けっしてアクセスはよくないものの銭湯マニアがこぞって訪れるという三重県の伊賀にある「昭和レトロ銭湯 一乃湯」(女湯)などなど、その土地ならではの銭湯に旅情をかき立てられます。

 多様で幅広い銭湯の魅力を水彩で表現した『銭湯図解』。どの絵からもそれぞれの銭湯の情景が浮かび上がってきて、ほっと温かな気持ちにさせられます。まるで湯上がりのようなほかほか気分になれる一冊、ぜひ皆さんも読んでみてください。



『銭湯図解』
著者:塩谷 歩波
出版社:中央公論新社
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