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「知り合いからしか仕事が来ない慣習を変えたい」 ガキ使・激レアさん担当作家が「日本放送作家名鑑」を作ったワケ

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2019年06月15日 13:07  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真放送作家の深田憲作さん。目標3000人を目指してTwitterのフォロワーさんを絶賛募集中だそうです
放送作家の深田憲作さん。目標3000人を目指してTwitterのフォロワーさんを絶賛募集中だそうです

 「放送作家」はなぜテレビに必要なのか――。テレビとWeb番組の違いは――。日本テレビ系「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」やテレビ朝日系「激レアさんを連れてきた。」、テレビ東京系「青春高校3年C組」などで活躍し、6月15日には作家の得意分野や経歴を紹介するサイト「日本放送作家名鑑」をオープンさせた深田憲作さんを取材しました。



【画像:松本人志さんが考案した超難問】



●松本人志さん考案のオーディションを経て放送作家デビュー 



「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)、 「シルシルミシル」(テレビ朝日系)、「得する人損する人」(日本テレビ系)など誰もが知るテレビ番組から、過激な企画でネット上の話題を集めるAmazonプライム・ビデオ番組「今田×東野のカリギュラ」まで、幅広く活躍する深田憲作さんは、キャリア11年目の35歳。大阪体育大学を卒業後、ラジオ番組でのオーディションに合格して放送作家デビューを果たしたという異色の経歴の持ち主です。



 今回は深田さんが放送作家を志したきっかけから、気になる放送作家のギャラ事情。深田さんが立ち上げた「日本放送作家名鑑」とは一体どんなサイトなのかなどを伺いました。



――まず放送作家とは、どんなお仕事でなぜ必要なのでしょうか。



深田:一般の方からすると謎の職業ですよね、放送作家って(笑)。テレビ業界以外の方からよく聞かれるので、「企画を考える人」「(番組の)構成を考える人」「台本を書く人」「ドラマでいう脚本家にあたる仕事が放送作家で、監督にあたるのがディレクター(総合演出)」と、いろいろな説明をしますが、すごく説明が難しくて、うまく答えられたことないんですよね……(笑)。業界内では「テレビが始まったころに、青島幸男さんなどが生み出したのではないか」という説や、「本当はいらないんだけれども、テレビ業界にお金があった時代に“アイデアを生み出すスペシャリスト”として放送作家という職業が生まれた」という説を先輩の放送作家から聞いたこともあります。



――本当はいらない、というのはどういうことなんでしょう。



深田:放送作家って業界内でも「なくてもいい職業」と揶揄(やゆ)されることがよくあります。というのも「台本を書く」「企画を考える」というのは、基本的にディレクターの仕事の範ちゅうにも含まれていますから。でも一応、今のところなくなってはいないので、必要とされている職業なのかなとは思ってます。



――深田さんは、ダウンタウンの松本人志さんと、松本さんの幼馴染で放送作家の高須光聖さんがトークするラジオ番組「放送室」(TOKYO FM)をきっかけに放送作家デビューされたんですよね。



深田:そうです。番組内で高須さんの弟子というか、「ブレーンを募集する」という企画があって、それに応募したことがきっかけです。印象深かったのはオーディション1発目に出された、「赤丸・黒丸を羅列せよ」という問題でした。高須さんが番組内で「応募してくるやつが面白いかどうかを判定する方法ってあります?」と聞いたら、松本さんが「俺はある」とこの問題を提案して。それが実際に審査のお題になったんですよ。



――それってどういう答えが正解だったんですか。



深田:「赤赤黒黒」みたいに並べ方に意味があると思って応募してきた人が多かったらしいのですが、後にこの問題の意図は「与えられたルールの中でいかに裏切るか?どれだけ目立つか?」ということで、松本さんは「俺だったら赤丸を、1個を書くかな」「ただ、ここで星を書いてきたりするのはルール違反」というようなことをおっしゃっていました。つまり、エンタメの世界は“与えられたルールの中でいかに目立つか”なので、松本さんや高須さんはこの問題を見ればその人間のセンスが分かる、と言っていたということなんです。



 僕はなんとなく松本さん、高須さんの意図を理解して、紙の角に赤丸を書いて、はみ出た部分は対角の角から出ているというような工夫をしたと思います。



――松本さんっぽい、というと失礼かもしれませんが、天才が考える問題だなという感じがしますね。このオーディションに受かったのは深田さんをはじめ何人ぐらいだったのでしょうか。



深田:確か、高須さんから「700人ぐらいが応募してきた」と聞いた記憶がありますが、合格者は僕を含めて3人でした。2次試験では50人ぐらいが面接にやってきて、そこから10数人に絞られて、そのあと3〜4回ぐらい「企画を出してくれ」「直してくれ」というやりとりがありました。オーディションが始まったのが5月ぐらいだったのですが、9月ぐらいに高須さんから「事務所に来てくれ」と呼ばれて行ったらほかの2人が居て。いきなり「君たち来月から制作会社でAD(アシスタントディレクター)やってきて」と言われたんですが、これが合格だったというわけです。だから僕、半年ぐらいはAD経験があります(笑)。



――意外ですね。AD時代はどんな番組を担当されたんですか。



深田:ジーヤマという制作会社に預けられて、くりぃむしちゅーの有田哲平さんがやられていたTBS系の「むちゃぶり!」という番組を担当しました。



――修行の半年が終わったら、高須さんから「帰ってきていいよ」という連絡が入るという感じだったのでしょうか。



深田:いえいえ。期間は告げられておらず、毎日すごく大変だったので内心は「これいつまでやるんだ??」とヒヤヒヤでした(笑)。ADをはじめて3〜4カ月たった頃に、「『くりぃむナントカ』(テレビ朝日系)がゴールデンに行くから、高須さんのところにいる若手作家を入れてあげても良いよ」という話をテレビ朝日の藤井智久さん(「マツコ&有吉の怒り新党」で総裁として知られている)からいただきまして。僕ら3人はADをやりながら、番組の構成会議には出ずに企画案を週に1回出すことになりました。その結果「深田君は入れてあげてもいいですよ」ということになったらしく、高須さんから「番組に入れることになったから、AD卒業してえぇで」と言われたのが修行から半年後のことです。あとの2人は結局AD修行を1年ぐらいやってから放送作家になりましたね。



――高須さんから学ばれたことはどんなことでしたか。



深田:高須さんは僕らに手取り足取り教えるというよりは、テレビの世界に放り投げてくださった感じで「最初のきっかけは与えてあげるけど、後は自分で頑張って仕事広げていけよ」って。どちらかというと放任タイプでしたね。だから高須さんと一緒に番組をやらせてもらったというのはほとんどなくて、かばん持ちみたいなこともなかったので、他の放送作家さんのお弟子さんと比べたら全然大変な思いもしませんでした。



 僕は中学の頃に松本さんの『遺書』を読んで、なんなら人格形成にまですごく影響を受けた部分があるので、松本さんのブレーンである高須さんも「結局、面白いこと考えられるかどうかは才能だ」みたいなことをおっしゃるのかなと思っていたのですが、アドバイスしていただいたのは「人が嫌がる仕事を率先してやって、みんなから愛されるようになれ」「礼儀を大事にしなさい」と人としてのすごく基本的な部分で、企画案やネタについても「本当に頑張って考えたら良いものが浮かぶ」「20代で真剣にずーっと考えまくっていたら30代で一気に開花するときが来るから、とにかく考えて考えて考えろ」という言葉をいただいていました。僕としては「意外と泥臭いことをおっしゃるんだな」と感じたのを覚えています(笑)。



●生きる目標を無くした青年を救ったドラマ「伝説の教師」



――放送作家を志したのはこのラジオがきっかけですか。



深田:いえ、なりたいと思ったのはもっと早い段階で、「放送作家セミナー」に行ってみたり、学生時代からいろいろと模索はしていました。放送作家になりたくて、就活もせずに大学を卒業して上京したはいいものの1年ぐらいは放送作家になれなくて、「どうしようかな……」と思い悩んでいた23歳のときに、偶然ラジオでオーディションの旨を聞いたので、今思えば「運命だな」という感じはあります。



――放送作家を志したのはなぜですか。



深田:僕は高校まで野球をやっていたのですが、プロを目指したり、大学より上で続けようと思うほどの才能はなくて、進学した大阪体育大学ではスポーツトレーナーを目指しました。でも勉強している途中で「これは違う」と感じて……。その後は「やっぱり現役選手がいいな」と思ってプロボクサーを目指してみたんですが、1回目のスパーリングでボコボコに殴られて。顔面を殴られたのに、翌朝起きたら後頭部が痛い、とか熱が出てる、とかで怖くなってしまって、「これはメンタルの弱い自分には向いてないな」と思って辞めたんです。そのときに、「野球」「トレーナー」「プロボクサー」と全ての目標も失ってしまったので「人生の目標がなくなった」とすごく落ち込んで。2週間ぐらい家に引きこもって「もう死んでやろうかな」ぐらいの心境になったんですよ。



――激動の人生ですね。



深田:こうやって話すと確かにいろいろありましたね(笑)。ひきこもり期はあまりにもやることがないので、レンタルビデオ店で借りてきた日本テレビ系の「伝説の教師」という松本さんと中居正広さんがW主演したドラマを2週間ぐらいずーっと流しっぱなしにしてたんです。そうしたら女性生徒が自殺を考える回(第8話「少女の命燃えつきて…教師漫才最後の贈物」)があって。物語の終盤に「何のために人は生きているのか」という問いに対して松本さん演じる教師・南波次郎が「笑うためや」「人間に許された唯一の特権は笑う事や。笑いながら生きるというんは人間としての証なんや」と答えたんですね。これを見て救われたという人はテレビ業界にも多いのですが、僕もそれを聞いたときに「この人かっこいいなぁ。自分の笑いの才能をいかして、自信を持って生きているなんてすごいかっこいいなぁ」と思いました(※)。



 それで「僕もそういう世界に入れないかなぁ」と考え始めた頃に、ちょうど放送作家という仕事があることも知って。結局就活を一切せずに東京へ出てきたんですよね。



(※)松本人志さん原案のドラマ「伝説の教師」。お笑い芸人の若井おさむさんが第8話を見て自殺を踏みとどまったという逸話も有名。



――その後、見事に放送作家になることができた深田さんですが、放送作家のお給料事情ってどうなっているのでしょうか。



深田:放送作家のギャラは「1オンエアでいくら」という形式なので、レギュラーが決まると半年間は1月4本分のギャラが入ってくることになります。例えば1本ギャラが5万円なら月に20万円入ってくるという事ですね。若手だと、その1本あたりの単価が安く、大御所だと高くという感じです。



――単価の幅はどれぐらいあるものなのでしょうか。



深田:深夜番組なのか、ゴールデン番組なのかにもよりますが、ド深夜の番組だと若手は1本5000円という場合もあるかと思います。



――やっぱりゴールデンだと夢があるんでしょうか。例えば深夜番組からゴールデン昇格、という場合もありますよね。



深田:確かにゴールデンに昇格すると放送作家のギャラも上がりますが、ゴールデンはゴールデンなりの難しさがあるんですよね。



――そうなんですか。ゴールデンの作家さんはウハウハなのかなと思っていました。



深田:放送作家としては「レギュラー番組が長く続くこと」が一番うれしいことなのですが、ゴールデンに行くとやっぱり視聴率が重視されますし、実はゴールデンの方が休止が多いんですよ。例えば自分が20時台のレギュラー番組をやっているとして、19時台の番組がスペシャルをやるときや単発の特番が放送されるときは休止になりますし、野球やサッカーなどのスポーツ中継で休止になることもあります。だから意外と23時以降の番組の方が安定して毎週放送されるので、定期的な収入という点で考えると深夜番組の方が安定しているかもしれませんね。



――その視点は思いもつかなかったので驚きました。オンエアされないとギャラが入らないということで言うと本当にその通りですよね。



深田:もちろんゴールデンでの人気長寿番組はあります。例えば「ザ!鉄腕!DASH!!」「世界の果てまでイッテQ!」(ともに日本テレビ系)といった番組は業界の最高峰ですから、憧れる人も多いと思います。



――1クールにどれぐらい担当していたら売れっ子といわれるんでしょうか。



深田:10本以上やっていたら売れっ子でしょうね。僕からすると10本はまだしも、15本以上やっている人はどんな生活をしているんだろうって思いますが、ご本人に聞いたりすると「睡眠時間は3〜4時間」という人もいますし、レギュラーに加えて企画書も年間何百本とやっている人もいるので、世の中にはバイタリティーがある人がいるんだなぁと驚かされます。



●放送作家はどの番組に注目している?



――プロの放送作家から見て「この番組はすごいな」「面白いな」と思う番組は何ですか。



深田:めちゃくちゃベタですがTBS系「水曜日のダウンタウン」ですね。最近の新元号が当たるまで帰れないやつもめちゃくちゃ面白かったです。



――「水ダウ」はうちの編集部でもファンが多くて、演出の藤井健太郎さんを取材したこともあるのですが、ぶっ飛び加減が最高ですよね。



深田:「水曜日のダウンタウン」は業界人もみんなが素直に「面白い」と認める番組ですね。そういえばインタビュアーのKikkaさんって欅坂ファンなんですよね……? 僕も欅坂ファンなんですが、テレビ東京系の「ひらがな推し」(現・「日向坂で会いましょう」)は面白いっていう業界人多いですよ。



――はい、朝起きて聞くのは「エキセントリック」、満員電車で聞くのは「不協和音」、夜に息を潜めて灯りをつけずに聞くのは「キミガイナイ」というライトな欅坂ファンです。確かに「がな推し」面白いですよね。



深田:あの番組って、日向坂46のことを知らない人や、好きじゃない人が見ても単純に面白いんですよ。それってテレビ番組としてすごく優秀な番組ということだと思います。もちろん日向坂46のみなさんがタレントとして優秀で頑張り屋さんだということも大きいと思いますが。



 そもそも日曜深夜の坂道枠・「乃木坂工事中」(テレビ愛知系)、「欅って、書けない?」(テレビ東京系)、「日向坂で会いましょう」を担当している「ケイマックス」という制作会社は、元をたどると「内村プロデュース」(テレビ朝日系)をやっていた会社なんですよ。先に挙げた3番組は「ツッコミテロップが面白い」とよく言われますが、それは「内P時代のノウハウ」がいきているからだと聞いたことがありますね。



 また放送作家だけ見てみても、3番組とも日本でトップを走っている売れっ子たちが担当しているので、面白くならないわけがないと思います。



――ドキュメンタリー番組だとどんな番組に注目されていますか。



深田:フジテレビ系の「ザ・ノンフィクション」ですね。話題になった回はなるべくチェックしているのですが、先日放送されたビッグダディの元妻の美奈子さんが出ていた「新・漂流家族」は面白かったです。



――ご自身が担当された番組で、これはよくできたなという仕事はどんなものでしょうか。



深田:そうですね……(熟考)。「笑ってはいけないシリーズ」(日本テレビ系「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」)は1年目からずっと関わらせていただいているのですが、僕の放送作家人生の中で「一番多くの人を笑わせられた」という意味では、俳優の西岡徳馬さんにやっていただいた「なんでだろう」と「乳首ドリル」のネタですかね。有りもののネタのカバーなので、放送作家として「よく思い付いたな」というネタではないのですが……。



――あれ深田さんが考案されたんですか! 放送時、めちゃくちゃ笑いました。



深田:ありがとうございます(笑)。レギュラーの「ガキ使」で「これまでで一番面白かったネタは?」みたいなトークをされていたときに、確か松本さんが「西岡徳馬さんの『なんでだろう』と『乳首ドリル』のネタは今までで一番笑った」くらいのことをおっしゃってくださっていて、それを見たときは僕もうれしかったですね。



 あと個人的に気に入っているのは「絶対に笑ってはいけない大脱獄24時」の回で、刑務所にいる母親に子どもが面会しに来るという場面でやったネタ。「お父さんが亡くなった」という話題が出た際に、お父さんの手紙を読み上げるというシーンで、徐々にオーバーラップして父役の元プロレスラー・天龍源一郎さんの声が入ってくる……っていうのは、面白かったかなと思います。天龍さんの“何言ってるか分からない笑い”はそれまでもあったんですが、ドラマでよく見る演出を「笑ってはいけない」に持ってきたのは良かったんじゃないかなと。



――鉄板な天龍さんと斬新な演出が絶妙な笑いを引き出していましたよね。



深田:他には、「笑ってはいけない」シリーズの中で、昼食のランクを決めるために即興替え歌を歌うというゲームをやっていたのですが、あれの元になっているのは「絶対に笑ってはいけない熱血教師24時」の「五・七・五 ちょっと工夫でこの上手さ! お料理即答褒め川柳」という企画なんです。これは「親子丼!」と言われたら、「5・7・5で親子丼を褒める」といったゲーム(※)なのですが、スタッフ間でやっても結構面白くて。高須さんにも「あれは結構良い企画だった」とほめてもらえたり、自分の中でも印象に残っています。



(※)「ステーキ」に対して月亭方正さんが「分厚くて・肉汁たっぷり・おいしいよ」。「月見うどん」に対して松本さんが「僕好きよ・月見があるから・僕好きよ」などの回答。筆者のオススメは「ひつまぶし」に対してココリコ・田中直樹さんが答えた「うなぎの雰囲気・たっぷりまぜて・三度飯」。



●ゼロイチから始まる放送作家のお仕事



――ドラマだと“脚本家”、バラエティー番組だと“構成作家”。呼び方が違うようにお仕事の内容も全然違うんでしょうか。



深田:ドラマのことはあまり分からないですが、バラエティー番組作りの流れとしては、定例会議(全体会議)で今後やる企画を決めて、その企画の担当が振り分けられます。そして担当になったディレクターと構成作家が「分科会」という小会議をやって企画のベースの構成を考えます。それを番組の定例会議に提出して、総合演出の人を中心に全員でどうすれば面白くなるのかを考えていき、新たに出た課題をまた分科会で話し合うという繰り返しです。もちろん、番組によってやり方は異なりますが。



――1つのネタにはトータルでどれぐらいの時間をかけますか。



深田:企画にもよりますが、企画構想から台本にするまでは、1ネタ2〜4週間くらいかけて作っていますかね。定例会議に3回から4回出して、修正しながら収録を迎えるという感じですね。



――放送作家の方って、営業はどうされるんでしょうか。



深田:放送作家は普段、テレビ番組での企画・台本作りとは別に、テレビ局員のディレクターや制作会社の人と一緒に番組企画書を作っています。これは番組作りにおける本当のゼロイチの部分なので100案出して1案通るかどうかという感じですし、ギャラは0円です。しかしこれをやっておくことで、そこで企画が通らなくても企画打ちをしたディレクターが別の機会に使ってくれることもあるので、重要な仕事だと思います。なので結果的にこの「企画打ち」がいわゆる“営業”なのかもしれません。



――面白いですね。これ以外にも番組の参加ルートはあるのでしょうか。



深田:番組の立ち上がり時にディレクターやプロデューサーが「この番組ならあの人が向いている」といった感じで知り合いを入れることが多いので、このタイミングで呼ばれることもありますし、コアメンバー(局員のディレクターやプロデューサー)が選んだ制作会社のディレクターから呼んでもらえることもあります。あとは番組に入った放送作家から「この人も向いているはずです」と紹介してもらえる場合もありますね。ただ全てに共通するのは知り合いから呼ばれるということです。



――新人さんの場合ってそういう知り合いもいないですよね。その場合はどうなるんでしょう。



深田:本当にそこをまずどうするかなんですよね。一回番組に入っちゃえば次からのつながりができるんですが、まず関わりができなければ“呼ばれようがない”んです。それに例えば僕の場合は大阪体育大学に通っていたので、スポーツが得意で、「スポーツバラエティーを担当したい」とずっと思っているんですが、知り合ったことのないディレクターはそれを知らないわけです。放送作家もタレントさんみたいに、知らない人からも番組に呼ばれる状況を作れたらいいなと思ったのも「日本放送作家名鑑」をやろうと思った理由の1つですね。



●「日本放送作家名鑑」を作った理由



――「日本放送作家名鑑」のアイデアにはクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で多くの支援が集まりました。具体的にはどんなサイトになるのでしょうか。



深田:簡単に説明すると、「日本タレント名鑑」の放送作家版です。もし「この放送作家はこんなジャンルが得意なんだ」「この企画を考えた人なんだ」ということが一目で分かるサイトがあれば、面識のないディレクターやプロデューサーから声がかかるチャンスが増えるのではと考えました。



 もともとは放送作家同士で「1番面白い放送作家は誰か?」「あの番組の企画を考えたのは誰か?」といった話をするのが好きだったので、たくさんの放送作家からそうした話が聞ければな、という趣味感覚でやりたいと思ったところがスタートだったのですが、よく考えたら「タレントは面識がない人から仕事のオファーが来るのに、放送作家は知り合いからしか仕事が来ない」ということに気付き、テレビ業界関係者や放送作家を目指している人の参考になるようなサイトが作れたら……というところに行きつきました。サイトには放送作家への取材だけではなく、“放送作家あるある”を盛り込んだ4コマ漫画も掲載する予定で、多くの人に楽しんでもらえればと考えています。



――とても面白いアイデアだと思います。サイト作りのために現在放送作家さんに取材を敢行されているとのことですが、あらためて気づいた点等はありますか。



深田:取材をする方には最初にアンケートを送ってからお話を聞きに行っているのですが、親しかった人ですらアンケートの時点で「え、この人歴史詳しいの!?」「あの企画、この人が考えたやつだったんだ!?」「この人はこの放送作家に衝撃を受けたんだ!」など、驚きの連続でした。やっぱり知り合い同士でも知らないことばかりで、取材して良かったなと思うことが多いです。



――深田さん自身が影響を受けたり、尊敬する作家さんは誰なのでしょうか。



深田:渡辺真也さんです。僕が放送作家デビューをした「くりぃむナントカ」や「シルシルミシル」でお世話になった方なのですが、誰もが認める本物の“お笑いの天才”でした。数年前に残念ながら他界してしまったのですが、僕は今もずっと尊敬の念を抱いているので、今回の日本放送作家名鑑の取材を通じて、あらためて「渡辺さんがどんな方だったのか」。天才の素顔が知れたらいいな、という思いもあります。



――今回の日本作家名鑑では何人ぐらいの作家さんを取材される予定ですか。



深田:期限は特に区切っていないですが、いったん100人を目指そうと考えています。やっぱりそこそこの人数の記事がないと、役立たないですからね。新人放送作家から大御所放送作家まで幅広く載せてこその日本放送作家名鑑だと思っているので、鋭意各方面を取材中です。



――楽しみです。深田さんが今一番取材してみたい放送作家はどなたですか。



深田:半分冗談、半分本気で言っているのは秋元康先生です。秋元先生も大成功された放送作家の1人ですから、ぜひお話を聞かせていただきたいです。ただ日本放送作家名鑑は成功者インタビューサイトではないので、秋元先生を特別扱いして掲載するわけではなく、新人放送作家とも並列で紹介する、という変なこだわりがあります。でもたぶん、あいうえお順に並べるので結局秋元先生が1番先頭に来ることになっちゃいそうですけどね(笑)。やっぱり秋元先生は放送作家界のトップになる運命なんですね(笑)。



――めちゃくちゃ読みたいですそのインタビュー。面白くなる気配しかしないですよ。隅っこで構わないので同席させていただきたいぐらい興味があります(笑)。



深田:いや〜もう本当にやらせてほしいです。秋元先生を取材して、他の放送作家と同様に謝礼3000円を受け取って頂く――というのが夢ですね。「俺はギャラ3000円で秋元康にインタビューした!」って一生自慢したいですからね(笑)。あとは福田雄一さん、宮藤官九郎さん、小山薫堂さんなども放送作家のご経験がある方々なので、いつか取材させてもらえたらなと思っています。さらに現役放送作家で日本の頂点にいる鈴木おさむさん、桜井慎一さん、そーたにさん、中野俊成さん、石原健次さんといった方々も取材させていただきたいです。当然、その中の1人である師匠の高須さんを取材する、というのも夢の1つですし。



――すごく楽しみです。作家の方からはこの取り組みについてどんな声が上がっていますか。



深田:結構肯定的な意見が多くて、応援の声もいただいています。自分としてはお金を払ってでも話を聞きに行きたい方を取材させてもらうという感覚だったのですが「大変なことも多いかと思いますが、頑張ってください」と熱いLINEをくださった方もいらっしゃいましたし、自分と同じように放送作家の話を聞きたいと思っている人は多いんだなと実感しました。



●地上波テレビ番組とネット番組の違いは「自主規制」



――深田さんは地上波での活躍はもちろんのこと、Amazonプライム・ビデオ番組「今田×東野のカリギュラ」など、ネットのお仕事もされていますよね。テレビとネットで一番違うところって何だと思いますか。



深田:規制ですかね。自主規制。



――例えば地上波だと出来ないけれど、カリギュラだと実現できたという代表的な企画はありますか。



深田:カリギュラでやっているのはほとんどテレビじゃできないんじゃないですかね(笑)。そもそものコンセプトが「地上波で禁止された企画をやる」という番組でもあるので。テレビでは基本的にエロ・犯罪系はできないですけれども、カリギュラだと「夜の嬢王は誰だ!? 芸人の嫁 指名ダービー」「教えてシリガール 〜美女のイケないレッスン〜」「うちの親は大丈夫! 母ちゃん、オレオレ詐欺選手権」といった企画がありました。これらはAmazonプライム・ビデオの中でもギリギリな企画らしいので、カリギュラはかなり異端なんだとは思うのですが、テレビじゃ絶対にできないだろうなと思います。



――テレビはテロップの量がここ10年ぐらいですごく増えましたが、ネットだとテロップが少ないですよね。テレビの「テロップでまくり論」について、深田さんはどう捉えていますか。



深田:人によってはあぁいう演出が嫌いだという人もいますが、僕個人としては、テレビの進化の結果=テロップの増加なのかなと思っています。例えば今は当たり前になっている「歌にテロップを入れる」という演出も、最初に入れたときは批判があったでしょうし、「エンタの神様」(日本テレビ系)で芸人のネタにテロップを入れたときも賛否両論があったと思うんです。でも結局なんでテロップを入れるのかといえば、それは「視聴率を獲るため」ですから。歴史上のテレビマンたちが本気で視聴率を獲ろうと考えに考えて進化してきた結果だと思うので、僕は否定感情はないですけどね。



 テロップのほかにも、テレビ用語で「引っ張る」という言葉があります。例えば人やモノにモザイクを入れて、そのモザイクが外れるまで視聴者の興味を持たせたり――というのが代表的な「引っ張る」演出の一つですが、このように「どう引っ張るか」というのを多くのテレビマンが本気で考えているんです。



 でもネットの場合は地上波のように、「テレビをつけたらその番組がやっていたから見た」というよりは、その番組を見るためにチャンネルを合わせた、いわゆる“積極視聴”の視聴者が多いですから“一度視聴し始めた人は最後まで見る”という傾向があるので、地上波の番組ほどは過剰に引っ張る必要がないということだと思います。



――そう言われてみればそうですよね。深田さんご自身もネット番組とテレビ番組だと、ここは変えようと意識される点はあるのでしょうか。



深田:これはディレクターの仕事の範ちゅうですし、僕みたいな下っ端が考えることではないんですが、それこそ「過剰なテロップはいらない」ということは1つあると思います。テレビがなぜサイドテロップ(左上・右上・左下・右下に置かれるテロップ)を入れるかというとザッピングしたときに、「数秒で番組内容を理解できないとチャンネルを変えられる」という理由があるからなんです。特にテレビのゴールデンは「多くの人に番組内容を理解してもらう」ことが大事なので、丁寧に説明をするのですが、ネットの場合は、番組内容を理解して視聴している人がほとんどなので、過剰な説明は不要という意識が多少あります。



――一般大衆向けのテレビ、コアな層に向けたネットという感じですね。ネットの番組に関わられたのは、何かきっかけがあったんでしょうか。



深田:ディレクターに呼ばれたからですね。今のところは、ネットの番組のほとんどがテレビで活躍している制作会社が関わっていて、例えばカリギュラは一流のディレクターと放送作家が集結しています。僕なんかは会議でずっと緊張しっぱなしですから(笑)。



●ゴールデンでの視聴率の取り方



――テレビでは視聴率を取るために意識する、視聴者層みたいなものもあるんですか。



深田:視聴率を取ろうと思ったら、「3層を意識しろ」ということはよく言われますね。基本的には「F層(女性)」と「M層(男性)」があって、「F1層が20歳〜34歳の女性」「F2層が35歳〜49歳の女性」「F3層が50歳以上の女性」と年齢別に層が分かれているんですが、視聴率って実はその層ごとの数字も出るんですよ。世の中に知られている視聴率っていうのは「世帯視聴率」というものなのですが、その世帯視聴率を取るためには「M3層」「F3層」を意識した方が人口の割合的に視聴率が上がるんです。



 なので、ゴールデンの視聴率を取りたいときは「Fが見てくれるか」「3層が見てくれるか」を意識するようにというのはよく聞きます。ただ、これも今後時代の流れで変わっていく可能性もありますし、番組の評価基準が世帯視聴率ではなくなってくるというような話も聞きますが。少なくとも現時点での地上波の番組においては、「若者の視聴率はめちゃくちゃ高いけれど、年配の方があまり視聴していない」という番組は世帯視聴率が上がらないんですよね。これに対照的なのが「イッテQ」。あれは子どもから年配の方まで幅広く視聴されているので、超理想の番組です。



――「イッテQ」の人気の秘訣はどんなところにあると思いますか。



深田:「イッテQ」はごぞんじの通りナレーションも面白いんですけれど、“視覚で楽しめる番組”だと言われます。例えば人が転ぶとか、“見て笑える”=“現象の笑い”が多く含まれているので、お茶の間で子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで世代を問わず、みんなが笑える。だから世帯視聴率も獲るし、視聴率だけでなく業界人からも面白いと思われているという本当にすごい番組だと思います。



●取材後記



 テレビ視聴率調査の「ビデオリサーチ」では、2019年4月から北部九州地区でもテレビ視聴率調査をリニューアルするため、個人視聴率というデータの提供が始まりました。これは視聴率調査に協力する世帯の個人がどの時間に何の番組を見ているかが明らかになるというもので、2019年4月以前には関東地区・関西地区・名古屋地区の3地区で個人視聴率の調査が導入されていました。



 ビデオリサーチにお話を伺ったところ、「個人視聴率の調査」は視聴率調査の仕様を強化するための一環とのことで、これまでにも機械式で測定する「世帯視聴率」に加え、「日記式」(紙に1週間見た番組を記録してもらうという方法)と呼ばれる測定法で個人の視聴率も把握してきたそうですが、今後は機械的にこれらが測定できるといいます。



 近い将来、テレビ業界において個人視聴率が重視されることとなれば、現在の「F層」「3層」を重視した「世帯視聴率を獲る番組作り」から、「個人の興味を引くための番組作り」に移行する可能性もあります。今回の取材を通じて、作り手がいかに熱い思いで番組を制作しているのかに触れ、地上波テレビがまだまだ楽しく面白いものになる可能性を感じました。そして「日本放送作家名鑑」という新たなアイデアが、その一助を担うものになるかもしれません。


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