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久々に再会した家族はホームレスになっていた!? セレブ作家の苦い実話もの『ガラスの城の約束』

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2019年06月15日 17:52  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

写真ウディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツが毒親を演じた実話ドラマ『ガラスの城の約束』。借金に追われ、一家は流浪生活を続ける。
ウディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツが毒親を演じた実話ドラマ『ガラスの城の約束』。借金に追われ、一家は流浪生活を続ける。

 久しぶりに両親に逢ったら、両親はゴミ箱を熱心に漁るホームレスとなっていた。かなり衝撃的な家族の再会である。人気コラムニストの実話をベースにした映画『ガラスの城の約束』(原題『The Glass Castle』)は、『ルーム』(15)でアカデミー賞主演女優賞に輝いたブリー・ラーソンが、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94)や『スリー・ビルボード』(17)などで強烈な印象を残した個性派男優ウディ・ハレルソンと共演した辛口の家族ドラマとなっている。

 ニューヨークで暮らす主人公ジャネット(ブリー・ラーソン)は出版社での下積みを経験後、「ニューヨーク・マガジン」でコラムを連載する人気作家となっていた。その晩は恋人であるファイナンス・アドバイザーのデヴィッド(マックス・グリーンフィールド)に付き添って、彼の顧客と一緒に高級レストランでのディナーを楽しんでいた。顧客から「ご両親は?」と尋ねられ、ジャネットは「父は起業家、母はアーティストです」と答えるが、これは真っ赤な噓だった。

 レストランの帰り道、タクシーに乗っていたジャネットはゴミ箱を漁っているホームレスの男性を見かける。そのホームレスこそが、ジャネットの父親レックス(ウディ・ハレルソン)だった。華やかな生活を送るジャネットとはあまりにも対照的な父親のみすぼらしい姿を直視できず、ジャネットはタクシーのシートに身を沈め、声を掛けることなく過ぎ去っていく。

 NYの高級マンションでセレブな日々を過ごすジャネットだが、少女時代は恋人のデヴィッドも知らないような驚きの家庭生活を送っていた。ジャネットたち4人姉弟を生んだ母ローズマリー(ナオミ・ワッツ)と父レックスはよく言えば放任主義、福祉関係者から見ればネグレクト一家だった。両親は共に夢や理想を語り、そのことを追求するのに夢中だった。育ち盛りだった4人の子どもたちは、両親の夢と理想の犠牲となり、食事は満足に与えられず、学校に通うこともままならなかった。家賃を滞納しては、一家はボロ車に乗って夜逃げするという生活を繰り返していたからだ。

 両親のようにはなりたくない。その一心で、成長した子どもたちは両親のもとを離れ、ジャネットは今のリッチな生活を手に入れた。でも、思いがけないところで少女時代の体験がうずくことになる。一流レストランに通うようになった今も、料理が残ると給仕に頼んでドギーバッグに詰めてもらう。少女時代にひもじい体験をしていたので、余った食べ物を処分することができない。型破りだった両親から受けた影響は、セレブ生活を送るようになっても消えないままだった。

 ウディ・ハレルソン演じる父親レックスはとても複雑で、興味深いキャラクターとなっている。若い頃からレックスはとても博学で、幼いジャネットたちに夜空に輝く星々の名前を教え、夜更けに目覚めて恐怖を感じたときにはどう対処すればいいのかも伝授してくれた。ジョーク好きで、とても愉快な父親だった。でも、理想を追い求めすぎるあまり、仕事はどれも長続きせず、借金ばかりが膨らんでいく。やがてレックスはアルコール依存症となり、家の中でも暴力を振るうようになってしまう。

 母ローズマリーは画家になる夢を捨てられず、彼女もまた生活能力に乏しかった。喰うに困ったローズマリーは、レックスの実家でしばらく世話になることを提案するが、父レックスは最後の最後まで反対した。実家で暮らす祖母アーマに会って、ジャネットたちは父が反対していた理由を知ることになる。祖母アーマは偏屈で、孫であるジャネットたちにも冷たかった。それだけでなく、ジャネットの弟ブライアンのズボンを脱がせ、性的な悪戯をしようとしていた。父レックスも子どもの頃に同じような目に遭っていたのではないか。レックスが早くに家を飛び出した原因を、ジャネットら子どもたちは理解することになる。

 流行作家として成功を収めたジャネットは、疎遠となっていた両親と改めて再会し、経済的支援をすることを申し出る。ホームレス生活から脱して、まっとうな暮らしをして欲しいと。だが、娘のそんな願いは、あっさりと拒絶される。父レックスも母ローズマリーも決して落ちぶれてホームレスになったわけではなく、より自由な生活を求めて、今のライフスタイルに落ち着いたのだと言い張る。レックスは逆に、今のジャネットの生活のほうが欺瞞だらけのものではないかと反論する。結婚を控えた恋人デヴィッドが頑固者同士のこの親子を仲直りさせようとするが、火に油を注ぐ結果だった。親子間には、どうしようもない大きな断絶が横たわっていた。

 タイトルにある“ガラスの城”とは、若い頃の父レックスが、子どもたちに設計図を描いてみせた理想の住宅のこと。太陽光パネルを備え、自家発電で冷暖房完備&独自の浄水装置付き。全面ガラス張りの眺めのいい夢の邸宅だった。結局、この夢の城は建てられることなく、建設予定地はゴミ捨て場となってしまう。ガラスの城を建て、家族みんなで暮らそうという約束を果たせなかったことを老いた父は詫びるが、ジャネットには責めることができない。父といちばん仲のよかったジャネットは、父と夢を共有し、その夢の中ですでにガラスの城は建っていたのだ。夢の中で父が建てた城は、NYのどんな高級マンションよりも素敵だった。

 毒親と呼んでいい父レックスのことを、ジャネットは最後まで憎み切れない。家族を否定することは、自分自身のアイデンティティーも否定することになるからだ。世間一般とはずいぶん異なるおかしな家族で、その後はバラバラとなってしまった。それでもジャネットは、父レックスとガラスの城を夢見ていた日々のことを懐かしく思う。それは父が娘に残した一番の財産だった。

(文=長野辰次)

『ガラスの城の約束』

原作/ジャネット・ウォールズ 脚本/デスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ラナム 監督/デスティン・ダニエル・クレットン

出演/ブリー・ラーソン、ウディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツ、マックス・グリーンフィールド、セーラ・スヌーク、ジョシュ・カラス、ブリジット・ランディ=ペイン

配給/ファントム・フィルム 6月14日(金)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

http://www.phantom-film.com/garasunoshiro

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