『パーフェクトワールド』王道ラブストーリーとして伝えた、認め合う人々の姿 最終回は菅田将暉も

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2019年06月26日 06:11  リアルサウンド

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『パーフェクトワールド』(c)カンテレ

 つぐみ(山本美月)にプロポーズをした樹(松坂桃李)は、ずっと2人の交際を反対しつづけてきたつぐみの父・元久(松重豊)の許しを得るためにつぐみの実家を訪れる。先週のエピソードでは幸福な結末へと進むためのいくつもの対話と衝突が繰り返された火曜ドラマ『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)。6月25日に放送された最終話は、奇を衒うことない王道のストーリー運びによって幕を閉じる形となった。それはつまり、元久がいかにしてつぐみと樹の結婚を認めるかということである。


参考:ほか場面写真はこちらから


 実家近くの公園で2人で話をし、思いの丈をすべて語る樹に対し、元久は相変わらずNOと突き返す。しかし元久は持病によってその場に倒れこんでしまう。しかしながら、樹の速やかかつ的確な緊急通報と、砂場のへりにぶつかって車椅子で近付くことができないにもかかわらず匍匐前進で元久のそばに駆け寄り、薬を飲ませて呼びかけつづける対応によって一命を取り留めた元久。リハビリで車椅子に乗り、周りの人に支えてもらっていることを体験した元久は、その支えになってくれたつぐみを樹が支えていることを改めて理解し、ついに2人の結婚を認めることになるのだ。


 原作コミックでは、つぐみと樹の結婚式の後に元久は病状が悪化して亡くなってしまう。しかしながら、このドラマでは元久はすっかり回復した様子で、エピローグでは樹の車椅子バスケの試合を笑顔で応援している姿が映し出されている。もっとも、原作では今回の劇中でつぐみと樹の会話の中で語られる人工授精という新たな課題に2人が直面する第2章に突入しているわけだが、そこに至る前、2人が無事に結婚するという大きなターニングポイントをフィナーレに選んだこのドラマにおいては、元久の病状の描き方を変えるという選択は、正しい脚色であったといえるのではないだろうか。


 それは、ドラマオリジナルのキャラクターであるしおり(岡崎紗絵)の目覚ましい変化についても同じことが言える。姉のつぐみが障がいを持つ樹と交際することに反対し、彼女自身も晴人(松村北斗)との出会いによって徐々に障がい者との向き合い方を変えていく。今
回の劇中で父・元久の窮地に動揺して樹を責めはするものの、最終的に彼女は「健常者と対等になるには人一倍頑張らないと」と語る晴人に対して、誰にだって弱点や欠点があるから最初からみんな対等であると笑顔で語るのだ。


 彼ら登場人物ひとりひとりの描き方の向こう側に見えるのは、「いつかこのドラマがただのありふれたラブストーリーになりますように」という、このドラマの最大のテーマであり強い想いだ。今はまだ、車椅子に乗った樹と義足の晴人という目に見えたハンデを持った2人の登場人物によって価値観を見つめ直していく人々の姿が描き出されたドラマであるわけだが、やたらと良い人すぎる是枝(瀬戸康史)であったり、誰かを支えないと生き甲斐を感じられない長沢(中村ゆり)であったりと、すべての登場人物が何かしらの弱点や欠点のような部分を抱えていることがよくわかる。それはつまり、障がいというものに関係なく、ともに生きていくもの同士がそれぞれの抱えるハンデを支え合って認め合いながら生きていくという、至極当たり前のことを問うているに他ならない。一見出来すぎた展開ばかりの“王道”のラブストーリーだからこそ、それを改めて気付かせてくれるのではないだろうか。 (文=久保田和馬)


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