Stray Kids「부작용(副作用)」、K-POPファンにはハードル高すぎな難解曲?[レビュー]

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2019年07月03日 22:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

YouTubeより

――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。6月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!

いま聞くべき1曲‖Stray Kids−부작용(副作用)

 6月発表曲から取り上げる曲は、6月19日にスペシャルアルバムをリリースしたStray Kidsのタイトル曲「부작용(副作用)」です。まず、スペシャルアルバムって何なんだという話をすると、これはほぼ「リパッケージアルバム」と読み替えて問題ないと思います。K-POP界では、前回出したアルバムなどに新曲をいくつか追加したアルバムのことを「リパッケージアルバム」(リパケ)と言います。追加した曲を新たにタイトル曲と設定し、改めて音楽番組に出演するのですが、この手法だと全く新しいアルバムをイチから作らなくていいので、リリースまでの期間を短くできるというメリットがあり、さらに売り上げなども前回出したアルバムに合算されるらしいので数字を伸ばせるというメリットもありますが、しかしファンにとっては、うれしくもありつつ体力が持たないのでやめて欲しくもあるという、表裏一体のシステムです。

 今回、Stray Kidsがリリースしたのは、今まで出したアルバムにCD Onlyとして入っていた「Mixtape#1」〜「Mixtape#4」と、新曲3曲を追加した『Clé 2 : Yellow Wood』というアルバムです。そこから「부작용(副作用)」を取り上げようと思ったのには理由があり、この曲のリリース直後に匿名でメッセージを送れるサービスで私のところに「スキズ史上最高にダサくないですか!?」というメッセージが来たからです。

 どのグループもリリース前のニュースサイト記事などに、タイトル曲はどんなジャンルの楽曲かの説明があり、今回は「サイケデリックトランスジャンルの楽曲」という説明でした。リリースされて、なるほど……となったのですが、やはりこのようなクラブミュージックジャンルの楽曲に慣れてない方には、「부작용(副作用)」は異質に聞こえるものだよなぁと思い、今回取り上げることにしました(しばらくしてからBillboardのインタビューで本人たちが楽曲のジャンルについて「サイケデリックトランス」と明言しています)。

 まずはサイケデリックトランスについてですが、サイケトランスはジャンルとしての「トランス」のサブジャンルで、ゴアトランスが源流とされています。今はサイケトランスのサブジャンルとしてゴアトランスが並べられることもあり、それ以外にもプログレッシブサイケやトライバルサイケなど沢山のサブジャンルに分かれます。曲としてはBPM135〜150のものが多く、曲の雰囲気はうるさめなものから静かめなものまでさまざまです。

 K-POPはフレーズ毎に展開やジャンルが目まぐるしく変わる曲が多いですが、サイケトランスも曲の中で展開がかなり多く、「副作用」も2〜3曲を切り貼りしたように曲の中での展開がとにかく多いのがわかります。Stray Kidsは基本的にメンバーの3人が曲を作っており、深読みかもしれませんが、どこまで見越した上で、このジャンルを選んだのかとても気になるところです。

関連曲(入門編)

 では、サイケトランスの中から、私が昔聞いていたお気に入りを2つ紹介します。これらで、サイケトランスがどんなイメージが掴めるかと思います。

■Electric Universe - The Prayer

■Hallucinogen - Trancespotter

関連曲‖ドロップの三連符に注目

 これら2つを聞いても、まだ「副作用」と繋がらない方も多いと思います。サイケトランスはドロップ(曲が盛り上がる所謂サビのような部分)に三連符を使うような楽曲も多く、「副作用」もそのような構成になっています。次の3曲は、そのドロップに注目してください。

■GRAViiTY - The Passenger

 曲調としては静かめでシンプルですが、わかりやすい三連符の例となります。(三連符は0:15〜)

■deadmau5 - Right This Second

プログレッシブハウスやエレクトロニックで有名なdeadmau5も三連符の曲があり、聞けば段々と「副作用」に近づいてきているのを感じてもらえると思います。(三連符は2:43〜)

■Savant - Penguins

 同じくエレクトロニックやEDMのトラックメイカーSavantのこの曲は音の厚さや雰囲気もかなり副作用に近いと思います。(三連符は0:45〜)

 ハウス・テクノから昨今のEDMジャンルまで紹介しだすとキリがないぐらいこのような曲はあるのですが、上に挙げたものを聞いた後で「副作用」を聞くと、また違った印象になるかもしれません。ジャンル的に何曲も曲をつないだ1時間程度のMixがYoutubeやSoundcloudにたくさん上がっているので、気になる方は「ジャンル名 Mix」で検索すると似たような曲に出会えます。

 と、こういうことがわかった上で「副作用」を聞ければ存分に楽しめると思うのですが、Stray Kidsは随分ハードルの高いことをやってくるな……というのが今回の「副作用」を聞いての感想です。

<落選したけど……紹介したい1曲>
■(여자)아이들((G)I-DLE) - 'Uh-Oh' 

 Cube Entertainment所属、 7月31日に日本デビューの決まっている(G)I-DLE(ヨジャアイドゥル)の新曲です。この曲もStray Kidsの副作用のように参考にしているであろう90年代のHip-hop曲をたくさん挙げたくなる曲です。今までリリースしてきたタイトル曲の全てをリーダーでラッパーの ソヨンがメインで作詞作曲をしており、ラップもうまいし本当になんでもできる……。 

<近況>
韓国に行き7時間待機の上、Stray Kidsの音楽番組事前収録に入ったり、人生初のサイン会がWe In The Zoneだったりな日常を送っています。We in the zoneの日本初公演チケット、絶賛発売中なのでよろしくお願いします。

e_e_li_c_a
1987年生まれ。18歳からDJを始めヒップホップ、ソウル、 ファンク、ジャズ、中東音楽、 タイポップスなどさまざまなジャンルを経て現在K-POPをかけるクラブイベント「Todak Todak」を主催。K-POPを、楽曲的な面白さとアイドルとしての魅力双方から紹介する視点で人気を集める。

Twitter @e_e_li_c_a TodakTodak 
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