坂口杏里の迷走はいつ始まったのか? 大女優の娘に生まれ、「コネで芸能界入り」のリスク

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2019年07月05日 00:02  サイゾーウーマン

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羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「お金にならない」坂口杏里
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系、6月30日)

 前回、カラテカ・入江慎也を例に、「人脈はビジネスのメリットになり得るのか」について書いたが、6月30日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)を見て「コネで仕事を得ることはトクなのか?」について考えてみたくなった。

 学生時代の評価は、原則として「テストの点数」でなされる。テスト範囲も日程も全員に告知されているという意味で、平等である。しかし、この原則が崩れ始めるのが、就活あたりからではないだろうか。親の社会的ポジションによって「別のルート」を経る人とがいることを、知ってしまう。とりたてて優秀と思われていない人が人気企業に内定し、その後で「お父さんが有力者だったから」というウワサを聞くのは、今も昔もあることではないだろうか。

 例えば、元フジテレビアナウンサー・高橋真麻。父親が大物俳優・高橋英樹であることから、ネットで「コネ入社」だとバッシングされた。『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演した真麻は、当時を振り返って「ラーメンの麺2本くらいしか食べられない」ほど、精神的に追い詰められていたことを告白する。局内の立場も微妙だったようだ。「態度が悪い」とウワサを流されて上司に怒られたり、仕事は顔の見えないナレーションしかない時期もあったと『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)で明かしていた。

 しかし、真麻は父・英樹から「誰がやってもいい仕事こそ、頑張りなさい」というアドバイスを受けて、地道に信用を築いていく。時代が、“非リア充ウケ”――リア充は疎まれ、非リア充が親近感を抱かれるようになってきたこともあって、バラエティで芸人のような仕事をこなし、自虐ネタで笑いも取れる“女子アナらしくない女子アナ”真麻に注目が集まることに。そして、フリーになっても仕事が途切れない勝ち組女子アナとなった。真麻が本当にコネ入社なのかそうでないかはわからないが(フジテレビは民間企業なので、縁故採用をしても法律違反ではないはずだ)、「コネ」とみなされることで、ほかの人の何倍も苦労をしたと言えるのではないだろうか。

 しかし、真麻のようにコネ疑惑を払しょくできる、もしくはコネを使ったとしても、それを上回る結果を出せる人は、本当に稀だろう。

 明石家さんまと大竹しのぶの娘で、「芸能界最強の二世」とも呼ばれたIMALUは、親のご威光で、デビュー直後から、モデル、製菓会社のCM、『おしゃれイズム』(日本テレビ系)のメインゲスト、『A-studio』(TBS系)のアシスタントMCといった具合に、「いい仕事」を獲得するが、アシスタントMC は1年以内にクビを切られるなど、いずれも結果を出せず。コネを使えばデビューすることはできても、コネで仕事をつなぎとめることはできない。芸能界は実に厳しい世界と言えるのではないだろうか。

 IMALUは親も健在で、本人も事務所を立ち上げるなど、裏方の仕事に活路を見いだしているからよい。こうなると、心配なのが、坂口杏里のように後ろ盾(親)もおらず、けれど、芸能界にいた日々を忘れられないというタイプではないだろうか。

 大女優・坂口良子さんを母に持つ杏里は17歳で芸能界入りし、おバカキャラとしてバラエティで活躍した。しかし、良子さんを病気で亡くしたことでホストクラブにはまり、遺産を使い果たすだけでなく、借金まで作ってしまう。返済のために、AV女優に転身するが、ホストへの恐喝で警察のお世話にもなった。その後、風俗店での勤務を公表する一方、芸能界に復帰したいという希望を明らかにしているものの、具体的な成果は出ていないようだ。『ザ・ノンフィクション』では、そんな杏里の姿を追う。

 2018年6月、浅草ロック座でストリップデビューすると発表された杏里だが、本番直前のリハーサルでもフリは頭に入っておらず、太ってしまったために衣装が着られない。ステージでの立ち位置すらわからない。ロック座名物・早着替えもこなせず、「私、プロじゃないもん」と文句を言う。とうとう、ロック座は「諸事情により、出演を見送ることになりました」と杏里の降板を発表する。「降板なんて私は言っていない」と杏里は言うが、番組での様子から考えると、「踊れないので、クビになった」と推察することもできるだろう。

 いまだ借金が1000万円以上残る杏里は、「夜の仕事」を続けざるを得ない。番組のディレクターが「フツウのバーでバイトすれば?」と質問すると、「お金にならない」と即答していた。確かに“フツウ”のバイトでは、1000万円以上の借金を完済するには気の遠くなるような時間がかかるだろう。

 さて、それでは「お金になる仕事」とは何かを、杏里は考えたことがあるだろうか。「お金になる仕事」は、フツウの人ができないこと、もしくはフツウの人がやりたくないことを生業にすることではないだろうか。前者の場合、高いギャラを受け取る分、結果に責任を負わなくていけないし、後者であればお金のためと割り切って我慢する強さが必要になる。

 杏里にとって、ロック座の仕事はやりたい仕事ではなかったのかもしれない。しかし、彼女はほかのダンサーを従えて踊る“主役”である以上、結果を出せば自分の業績になるし、お金にもなる。ストリップは興行だから、評判が良ければまた声がかかるだろう。うまくいけば借金返済も夢でない。杏里にとって、ロック座公演は汚名をすすぐためにも、借金返済の意味でも踏ん張り時だったのではないだろうか。

 何がチャンスで、いつが頑張り時なのか。杏里はそれがわかっていないように見える。一般人であれば、こういう人は芸能界に入れないが、杏里の場合、コネがあるので芸能界に入れてしまい、キラキラした経験までしてしまった。ゆえに、あきらめることができないというジレンマに陥っているのではないか。

 地上波のテレビが彼女に思い出したように声をかけるのは、ゆっくりと転落していく若い女性への興味からだろうが、芸能界復帰を目指す杏里は、これをチャンスと捉えてしまっているようにも思える。取材されることは、芸能界の復帰を確約するものではないものの、「もしかしたら芸能界に復帰できるのかもしれない」とポジティブ変換しているように感じられるのだ。

 杏里の迷走は、元をただせば、芸能界向きとは言えないぼんやりとした少女が、大女優の娘に生まれ、コネで芸能界に入ってしまったことに始まっているのではないだろうか。コネで仕事を得るとは、実はものすごくリスクの高いことに思えて仕方がない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

このニュースに関するつぶやき

  • ノンフィクション見て、1300万位借金があるみたい。だけど、20代の女性が背負うには、余りにも大金。 破産宣告とかなんとかならないんだろうか? AVのギャラはどこいった?
    • イイネ!1
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