UNISON SQUARE GARDENの活動から感じる一貫したバンドの真理 結成15周年を機に考える

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2019年07月09日 07:01  リアルサウンド

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UNISON SQUARE GARDEN『Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~ (通常盤) [2CD]』

■シンプルにそぎ落とすことこそユニゾンの真理


 UNISON SQUARE GARDENとは、枯山水である。


 多くの読者の方が何を突然言い出したのかと思っているはずだが、ここ1年ほど彼らのライブを見るたびに、そんな感想が思い浮かぶ。


 枯山水とは禅宗寺院の庭園などでよく見られる様式で(京都の龍安寺などが有名である)、白砂や小石を水に見立ててそこに大きめの石などを配置することにより一つの風景を形成する。余計なものを持ち込まないシンプルなデザインであるがゆえにそれを見る者には一定の想像力が要求されるが、虚飾を取り払った景色と向き合うことで自身の精神からも余計なものがそぎ落とされていく感覚になる。


(関連:UNISON SQUARE GARDENはなぜ“異色の存在”であり続ける? レジーが『Dr.Izzy』から考察


 今のユニゾンのライブのあり方は、前述したような枯山水の精神と非常に近いように思える(もちろんそんなことを考えてバンドをやっているわけではないだろうが)。ステージ上には余計なセットや演出が存在せず、3人のミュージシャンが派手に音を鳴らすためだけに存在している。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、それぞれのパートのクオリティが高く、本来必要な場所に的確に音が配置されるのでフォルムとしての無駄がとにかくない。ステージから発せられるのは少しのMCを除いては高度に構築されたバンドサウンドのみで、手拍子や合唱をあおるようないわゆる「お約束」もほぼ存在しない。だからこそ、オーディエンスは自分の意思でステージと向き合うことを要求される。誰からも指図されずに思い思いに音楽を楽しむオーディエンスはおそらく本当の意味での自由というものに肉薄しているはずであり、だからこそそんなオーディエンス個々の感情が偶発的にシンクロする瞬間(ライブの終盤でこの状況になることが多い)にはなかなか他のバンドのライブではお目にかかれないカタルシスが会場に現出する。


「……僕らって、とにかく身の丈に合わないことを全部排除してきて今があるんですよね。それはライヴスタイルとかに関してもそうで。(中略)いろいろやっていく中で「斎藤くんほどギターと歌を一緒にできる人なんている?あんだけできるんだったら喋る必要なくない?」ってなって、MCやめようってなった」(MUSICA2019年7月 田淵智也のインタビューより抜粋)


 「普通のロックバンドであること」を志向し続けて今年で結成15周年を迎えるユニゾン。彼らが目指す「普通」は決して「シーンの普通(もしくは売れるために求められる普通)」ではなく、「音楽を楽しむうえでの普通」である。言葉を補うと、「演奏する側も、聴く側も、何にも邪魔されずに音楽を楽しむためにはどういう状況があるべきか?」ということこそがユニゾンが最も大事にしているものである。


 このスタンスはバンド結成当時から基本的には変わっていないはずだが、ここ数年その傾向はますます強まってきている。具体的には、2015年の「シュガーソングとビターステップ」の大ヒットを経て、バンドとしてどこを目指すべきかがよりクリアになったように思える。「国民的存在になること」がゴールではなくあくまでも「音楽をやり続けること、バンドをやり続けること」に改めてフォーカスを定めたユニゾンの活動に、多くのオーディエンス、そして同業者のミュージシャンが魅了されている。


■「油断する」お祭りとしての2019年


 「我々はいつも好き勝手ライブをやって君の街に行くだけなので別に来てくださいなんて思ってないし、ましてや県外からも来て〜なんて思ってない。来たいなら来ればいいし、飽きたんなら来なければいい。ロックバンドが必要なら来ればいいし、文句があるなら来なければいい。これが普段の我々だ。


 それが今年はたった一回の記念日ライブなのだ。君の街にも行けない。これはなんとも体たらく、いつもの我々ならそうだ。しかし我々は15年間、よくやったのだ。たまには祝ってもらうんだよ。」(公式サイト 田淵智也のブログより抜粋)


 結成15周年を祝う大規模ライブ『UNISON SQUARE GARDEN PROGRAM 15th』のチケット販売を告知するブログエントリを、田淵は珍しく「待ってるぞ。来てくれ。」とファンに呼びかける言葉で締めた。時としてリスナーを突き放して考えさせるようなスタンスをとることもあるこのバンドだが、2019年はファンが喜ぶような企画を立て続けに準備している(彼らの言葉を借りると「油断している」ということになる)。


 7月3日には、結成15周年記念B面集ベストアルバム『Bee side Sea side 〜B-side Colloection Album〜』がリリースされた。こちらにも収録されている「ガリレオのショーケース」(メジャーデビューシングル『センチメンタルピリオド』のカップリング曲)が今でもライブのハイライトとして演奏されていることからもわかる通り、彼らの美学は昔から何一つ変わっていないということを端的に示しているのがこの作品である。


 また、7月24日には初のトリビュートアルバム『Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album〜』のリリースが予定されている。先ほど同業者からも支持が厚いことについて少し触れたが、今作の顔ぶれを見ればその支持の厚さが本物であることがよくわかる。the pillowsや東京スカパラダイスオーケストラといった先輩格からa flood of circleやクリープハイプといった盟友的なバンド、さらにはイズミカワソラやSKY-HIのようなソロミュージシャンまで、かなり多彩かつ豪華な面々が集まった。それぞれのミュージシャンがそれぞれの得意技でユニゾンの楽曲をさらにエッジの効いたものに仕立て直した今作は、ユニゾンもしくは参加アーティストのファンではなかったとしても楽しめるであろう素晴らしいロックかつポップなアルバムとなっている。


 そしてその流れで7月27日に開催されるのが前述した『UNISON SQUARE GARDEN PROGRAM 15th』である。このあとにもカップリング曲による全国ツアーやトリビュートアルバムに参加したアーティストとのライブも控えているが、大阪で行われるこのライブが一つの節目にはなるのは間違いない。ただただシンプルにロックバンドであり続けようとしてきた3人を支持するたくさんのオーディエンスは、大会場においても「自由な音楽との向き合い方」で自然体でありながらも熱い空気を生み出すだろう。


 2019年が終わればバンドは再び「通常営業」に戻るということらしい。ただ、「シュガーソングとビターステップ」のヒットがその後のバンドの歩むべき道をよりクリアにしたように、今年の活動がユニゾンの未来に何らかの影響を与えるはずである。そんな中長期での変化の兆しも含めて、2019年の「祝福モード」のユニゾンを楽しみたいと思う。(レジー)


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