CIDが語る、グラミー賞に選ばれる音楽制作の秘訣「商売とアンダーグラウンドの妥協点を狙って」

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2019年07月10日 18:32  リアルサウンド

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 グラミー受賞経験のあるハウス、フューチャーハウスのDJ/プロデューサーのCIDが、7月11日にSEL OCTAGON TOKYOで行われる『ROPPONGI MUSIC WEEKS 2019 SUMMER』に出演する。SEL OCTAGON TOKYOは、2019年2月にオープンしたエンタテインメント×アート×デジタルテクノロジー要素を兼ね備えたアミューズメントスポット。世界で初となる超音波を取り入れた音響理論“3D SOUND”や、国内クラブでは最大数となる10台のレーザー、さらに静脈認証を採用したセキュリティシステムなども充実している。


参考:Aoi Mizunoが語る、“クラシカルDJ”の存在意義 「スピーカーでクラシックを聴く文化を広めたい」


 CIDは2014年にグラミー賞でBest Remixed Recording(ラナ・デル・レイ「Summertime Sadness 」)を受賞し、2019年のグラミー賞にもノミネート(LSD「Audio」)した世界が注目するアーティスト。12歳からスタートしたというDJとしてのキャリアをはじめ、「Summertime Sadness」制作秘話やグラミー賞を獲得した当時の反響、そしてSEL OCTAGON TOKYO出演への喜びを語ってもらった。(編集部)


■グラミー賞にノミネートされた要因は?


ーー12歳でDJを始めたそうですが、当時はどんなプレイをしていたのですか?


CID:あの頃はとてもじゃないけど音楽を見いだすためにクラブに行けるような年齢じゃなかったから、地元のレコード店に行っては、あらゆる種類のダンスミュージックを聴いていたよ。当時のニューヨークはトランスやハードハウス、ハウスにすごく影響を受けていたから、僕がプレイしていたのもそのジャンルだね。クラブに行ける年齢になったらすぐに、ダンスミュージックのありとあらゆるサブジャンルに出会いはじめたよ。


ーーアーティストになろうと思ったのはいつ頃ですか?


CID:小さい頃からDJになりたいという思いがあって、そこからプロデュースの方法を学び始めたんだ。そこには常に音楽への愛があった。だから、アーティストになることを決心しようっていうのは、必ずしもよく考えてのことではなくて、ただ自然なことだったんだよ。もし自分自身や自分の音楽に100%集中することを決めた瞬間を挙げるなら、それはラナ・デル・レイの「Summertime Sadness」のリミックスでセドリック・ジェルヴェとグラミー賞を受賞したあとのことだね。


ーーそのときの反響はやはり大きかったですか?


CID:あのリミックスがあそこまで大きくなるなんて、本当にびっくりしたよ。多分1日か2日で完成させたものだ。いいものができたとは思っていたけど、作ったときはどれほど反響があるか見当もつかなかった。まずBeatport(音楽配信サービス)で知られるようになって、そこからクラブで広がったんだ。それで何カ月かしたら、アメリカのポップミュージックのラジオで何度も流されるようになった。あの年は大反響のリミックスがほかにもいくつかノミネートされていたから、僕たちは自分たちのリミックスが受賞できるかまったく分からなかった。受賞したのは本当に驚いたよ。


ーーセドリック・ジェルヴェとは、どんな経緯でリミックスを手掛けることになったのCIDのですか?


CID:セドリック・ジェルヴェはとても早い時期に僕を見つけてくれた。おかげでプロデューサーとして成長できたよ。「Summertime Sadness」のリミックスの話が出たときには、すでに彼と数年間仕事をしていたんだ。人生のあの時点では、ただ自分にできる限りの最高の音楽を作ろうっていう以上の目標は特になかった。結局それでこの業界で知られることになったんだけどね。グラミー賞受賞は素晴らしい経験だったし、いつか1人でノミネートされるように自分自身の音楽に専念することを始めるにあたって自信をくれたよ。


ーー2019年もLSDの「Audio」でグラミー賞にノミネートされましたが、リミックスをする際の秘訣は?


CID:リミックスをするのに決まったやり方なんてない。リミックスをやる人の中には曲を完全に作り変えようとする人もいれば、オリジナル曲の根幹を使おうとする人もいる。そしてそれをその人のサウンドやスタイルに合わせるんだ。僕の場合は、何をやるにしても、リミックスでもオリジナルでも、僕のDJのセットに合うことが条件だ。つまり僕にとって重要なポイントは、クラブで僕のセット中に流せるものに変えることかな。


ーーどうすればグラミー賞にノミネートされるような楽曲を作れますか?


CID:グラミー賞にノミネートされるようなリミックスを作ろうってしっかり計画をする人はいないと思う。音楽にはたくさんの要因が集まっていて、世間が曲やリミックスにどう反応するかは決して分からない。でも1つ重要な要因は、リミックスするアーティストだと思う。LSDの場合はDiploとSia、Labrinthが後ろにいた。みんなそれぞれとても大物だよね。リミックスに興味を持ってもらうのに、曲にこの人たちの名前が入っていたのはとても大きいよ。


■楽曲制作の秘訣は“自分がプレイしたいかどうか”


Labrinth, Sia & Diplo present LSD – Audio (CID Remix Official Dance Visual)
ーー<HEXAGON>や<Size Records>といった名門レーベルから楽曲を数多く発表されていますが、オリジナル楽曲はどのようにして作っているのですか? 


CID:僕は常に、自分がかっこいいと思う曲、そしてより影響力のあるDJがプレイするような曲を作りたいと思っているだけなんだ。<Size Records>から初めて曲を発表したときは、スティーヴ・アンジェロが愛するようなものを作ることが目標で、彼のレーベルと契約したいと思っていた。今は自分自身のレーベルに乗り出したから、ハードルはそれくらい高くしようとしている。作っているものが、自分のセットに合って、僕がどのショーでもプレイしたいと思える音楽だっていうことを確認しながらね。


ーーCIDの楽曲の特徴はどんなところにあると思いますか?


CID:僕の強みは、ちょっとだけ商業的なアピールもあって、でも同時にクラブでの信頼性もある曲を作れることかな。ある意味、商売とアンダーグラウンドの妥協点を狙っているんだ。いつだってそれが目標だね。


ーー現在のダンスミュージックシーンに関してどんな印象を持っていますか?


CID:音楽にとっていい時代だと思う。ファンはストリーミングで簡単に曲を見つけられるようになっているし、アーティストが出した昔の曲も詳しく調べることができる。しかも、EDMのサウンド人気が落ち着いてきているから、ダンスミュージックのアンダーグラウンドのスタイルを見つけることに人々がより興味を持っているんじゃないかな。


ーー今回は東京の新たな人気スポットSEL OCTAGON TOKYOでのプレイとなりますが、どんなプレイを披露してくれるのでしょうか?


CID:SEL OCTAGONでプレイすることに、とってもわくわくしているよ。とても素晴らしいクラブだって聞いているからね! 僕自身の曲をたくさんプレイするのを期待してもらって間違いないし、制作中の新しい未発表のものも楽しみにしていてもらいたいな!


ーー最後に、日本のファンに向けてメッセージを教えてください。


CID:東京は世界の中でもお気に入りの都市だから、戻ってくるのを僕がどれほど楽しみにしているか想像できると思う! ダンスフロアでみんなに会えるのが待ちきれないよ!(取材・文=杉山忠之)


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