おばあちゃんが語る「新婚」の定義に胸キュン

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2019年07月19日 16:32  おたくま経済新聞

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おばあちゃんが語る「新婚」の定義に胸キュン

 結婚してずっと伴侶と添い遂げて幸せを感じている人は、年をとっても幸せを感じている人が多いようです。たとえ大病を患ったり、認知症になったとしても……。そんな、認知症と生きる一人の女性に聞いた「結婚して何年までが新婚か」という問いの答えに、多くの人がジーンと来ているようです。


【さらに詳しい元の記事はこちら】


 「これ可愛すぎて何回もしたい話なんだけど、職場で認知症のおばあちゃんに『結婚して何年まで新婚って言えるかな?』って聞いたら『旦那様の帰りを待つ時、もう帰ってきたって思ったら新婚じゃないよ。まだ帰ってこないなって待ってるうちは新婚よ。だからうちはまだ新婚なの』ってはにかんでてもう…」とツイートを投稿したのは、作業療法士のゆきさん。



 続くツイートで、「もう何年も前に亡くなられた旦那様をずっと『まだ帰ってこないな、早く帰ってこないかな』って毎日待ってるのちょっと泣けた…認知症だから旦那様が亡くなられてること忘れちゃうのよね」と、切ない気持ちも。



 このツイートは多くの人に拡散され、その言葉に読んだ人の多くがうるうると来ているようです。認知症ゆえに、亡くした伴侶を愛おしく思う気持ちだけが残り、二度と帰ってこないのを忘れてひたすら待っている……。胸がきゅっとなります。


 そのおばあちゃんの伴侶を想う気持ちは、認知症による記憶の喪失よりも、強く心に残っているのでしょう。認知症は、最近の事柄は覚えていることが困難にはなれど、昔の物事に対する記憶は残っていることが多く、感情の記憶は昔の状態の時でも現在の時でも、強く残ると言われています。


 感情と、古い記憶が認知症によって呼び覚まされると、今を生きる私たちには理解が困難で、時には周囲の人が困ると思う行動を起こす事があります。家にいるのに、「もう帰らないと」と夕方になって突然外に出ようとしたり、何がきっかけになったか周りには分からないけど突然怒り出したり、大事なものを取られたと騒ぎだしたり。


 その背景には、古い記憶と結びついた感情が強く働いています。認知症を患うと、古い記憶の引き出しが突然開いて、その記憶と結びついた感情が爆発することもあります。子や孫は、その古い記憶の引き出しに何がしまわれているのか、実はあまり知らない事が多くあります。嫁の立場であればなおさら。


 だからなのか、先のおばあちゃんも、老人施設のデイケア(デイサービスの機能+リハビリができる施設)で作業療法のリハビリを受けている時でも、いつもおじいちゃんと過ごしていた家に早く帰りたくて落ち着かなくなってしまう、といった事もたびたびあったのだそう。


 こうした古い記憶と、そこにまつわる感情を紐解いていくと、意外と「どんな訳でこうした行動を起こすのか」が見えてくる事があります。例えば、女学生時代に同じ時間に学校へ通っていた記憶が、同じ時間に徘徊する原因になっていたり、もう高齢者扱いされるくらいの年の息子が子ども時代に大病を患った時に、病院に毎日看病に行ってた記憶が出てきたり、やたら早朝に起きて外に出ようとする行動が、実は新聞配達をしていた時の行動と一致していたり。


 筆者も、老人施設のデイサービスで長年働いてきて、そんな認知症の人たちを看てきていました。ある日、午後の同じ時間に施設から出ようとする人に、その理由を聞いた事がありました。曰く、「もう帰って夕飯の支度をしないと子どもたちが待っているから」。その子どもたちは立派に成長して、既に家庭を持っているのに。そんな時、「お子さんはどんな子だったんですか?」などと話しを振りながら、施設の庭をよく散歩したものです。そうしていると、気がまぎれるのか、そわそわした雰囲気も落ち着いて、昔話に花が咲いたり。


 伴侶に先立たれても、ずっとその愛する気持ちを大事に胸に抱いていたおばあちゃん。時々記憶の引き出しが混乱して、おばあちゃん自身もパニックになってしまうこともあったようですが、大事にしたい感情はずっと、変わらずに持ち続けていたのですね。


<記事化協力>
ゆきさん(@y15tsow)


(梓川みいな/正看護師)


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  • 大切な想いは壊れず残るものなのかな。至言に値する。
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