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ハリウッドで沸く音楽映画ブーム クイーンに続いてエルトン・ジョン、ビートルズも

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2019年07月22日 08:10  ORICON NEWS

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写真『イエスタデイ』ポスター(日本公開10月11日)(C)Universal Pictures
『イエスタデイ』ポスター(日本公開10月11日)(C)Universal Pictures
 クイーンの楽曲が響くフレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』と、エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル映画『ロケットマン』。2作品の好調に沸く米国で6月末、ザ・ビートルズの楽曲に彩られたドラマ映画『イエスタデイ』が公開され、話題になっている。それぞれジャンルは異なるものの、3作品に共通しているのは、音楽と映画のシナジー効果。今後、音楽映画の可能性はどのように広がっていくのか?米英メディアの声を紹介したい。

【写真】感動が蘇る…『ボヘミアン・ラプソディ』熱いライブ場面カット

『イエスタデイ』は、「もし、自分以外の誰も、ザ・ビートルズのことを知らない世の中だったら」というユニークな設定で、売れないミュージシャンがスターダムに上り詰める様子を描く。ザ・ビートルズを敬愛する英監督ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』)がメガホンをとり、主人公をヒメーシュ・パテル、彼を支える幼なじみをリリー・ジェームズ(『マンマ・ミア! ヒア・ウィ・ゴー』)が演じている。また、主人公と印象深い絡みをする存在として、英人気ミュージシャンのエド・シーランが本人役で出演している。

 同作の主人公はザ・ビートルズではなく、あくまでも、売れないミュージシャンの青年。夢や恋、友情、自己発見についてのメッセージが込められた、ある種の青春物語であるため、伝記的要素の強い『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』とは根本的に異なる。それでも、音楽業界の内情やスターダムについての描写、熱狂的なライブシーン、伝説のミュージシャンのヒット曲に溢れている部分などに共通点を見つけることができる。

■ハリウッドの“音楽映画ブーム”の背景

 このように、伝記やミュージカル、ドラマ、ファンタジーなどジャンルは異なれど、音楽と映画がシナジー効果を生み出す作品を広義の“音楽映画”と呼ぶならば、今のハリウッドは音楽映画ブームといえるだろう。

 昨年は、レディー・ガガ主演の『アリー/スター誕生』から名曲「シャロウ〜『アリー/スター誕生』愛のうた」が生まれ、興行的にもヒット。今夏から秋にかけては、エル・ファニングがポップスターを目指すヒロインを演じる『Teen Spirit』、エリザベス・モスがパンクロッカーに扮する『Her Smell』、レニー・ゼルウィガー主演によるジュディ・ガーランドの伝記映画『Judy』、ブルース・スプリングスティーンのファンが主演の『Blinded By the Light』などが公開予定だ。

 英『ガーディアン』紙は、「ハリウッドではいつから、歌手たちがスーパーヒーロー並みに、(ジューク)ボックスオフィスを潤すようになったのか?」というタイトルを掲げ、音楽映画ブームについて分析する映画および音楽業界関係者の声を紹介。そのなかで、今のブームの理由について、『Her Smell』のアレックス・ロス・ペリー監督は「テクノロジーの発達によって失われつつある集団体験や、伝統的なロックスターへのノスタルジア」、英音楽メディア『Mojo』のダニー・エクレストン氏は「YouTubeの普及による“聴いて観られる音楽”へのファンの欲望」をあげている。

 ほかにもさまざまな理由があるはずだが、これらの心理は、若い世代に伝説のミュージシャンや楽曲をリバイバルさせることにもつながっている。『ボヘミアン・ラプソディ』は音楽伝記映画として、史上最高の興収を記録しただけでなく、クイーン人気を再燃させた。

 同作の公開から約2ヶ月後の時点で、音楽配信サービス『Spotify』におけるクイーンの楽曲配信数は333%増、そのうち70%が35歳以下のユーザーによるものだったという。フレディの歌声を生で聴くことがなかった若者たち、さらに、それまでクイーンを耳にしたことがなかった子どもたちにまで、ファンを増やす現象となったのだ。

■長年のファンにとっては音楽映画のジレンマも

 こうした音楽映画がファン層を拡大するなかで、ジレンマを抱える長年のファンの声もある。米『バラエティ』紙のオーウェン・グレイバーマン氏は、主観的な意見を述べるコラム内で「音楽界の巨人たちのなかでも神の域にあるザ・ビートルズやエルトン・ジョンをテーマとするならば、すべてを超越した映画であるべきだ」と、『ロケットマン』と『イエスタデイ』の評価基準を大幅にアップした。

 実際に歌を披露している『ロケットマン』のターロン・エガートン、『イエスタデイ』のパテルへの高評価を認めつつも、「本家にはかなわない」と述べ、『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックや『Ray/レイ』のジェイミー・フォックス、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』のマリオン・コティヤールのようにリップシンクをし、ミュージシャン本人の声をフィーチャーした作品と比較している。

 もちろん、『イエスタデイ』など、構成的にそれがあり得ない作品もあることは承知のうえで(そして、本人を超える“本人役”が存在しないことも承知のうえで)、「とにかく、本人の声で聴きたい」というファン心理は、好きなミュージシャンがいる人であれば、共感できるものかもしれない。

 また、楽曲のセレクションがヒット曲ばかりであることをファンが憂うこともある。『イエスタデイ』も、「レット・イット・ビー」や「ヘルプ!」をはじめとするヒット曲のオンパレードであるため、一般観客にとっては心躍る構成なのだが、長年のファンにとっては満足しきれない部分があるようだ。

 グレイバーマン氏も「ヒット曲をマーケティング活用せずに、高予算を投じることは不可能だという製作側の事情もわかる」としたうえで、『ロケットマン』や『イエスタデイ』が「現代の若者たちへのアピールに集中するあまり、当時の世代に何が響いたのかを忘れてはいないか?」と、複雑なファン心を吐露している。

 一方、『Mojo』のエクレストン氏は、実在の人物をテーマとした映画において、ファンの間で物議を醸すことが多い“脚色”について、「ときには、事実や時系列をアレンジしたほうがいいこともある」とコメント。その理由を「例えばロックンロールなどは、虚構と狂気のなかで築かれるものでもあるため、『まずこれが起きて、次はこれで、その次はこれ』と事実だけを並べても、真実が反映できないことがある」と説明し、「自伝を読めば、アーティストの自己分析による真実がわかるが、そのアーティストを分析する客観的な声によって、さらなる真実が浮かび上がる場合がある」と続ける。

■次に音楽映画で観たいミュージシャンの需要は?

 このように、コアファンの想い、一般観客の反応、製作側の意向が交差しつつも、確実に盛り上がりを見せている音楽映画。米国では、主要メディアからブログまで、さまざまな場所で、「次は●●の音楽映画が見たい」というランキングも発表されている。例えば、北米のエンタテインメント・ニュースサイト『スクリーンラント』は、1位にデヴィッド・ボウイ、続いて、ザ・ビートルズ、ジャニス・ジョプリン、ボブ・マーリー、サイモン&ガーファンクル、スティーヴィー・ニックス&フリートウッド・マック、エルヴィス、フランク・シナトラ、シェール、AC/DCをあげている。もちろん、こうしたランキングには、十人十色の答えがあるだろう。

 題材となるミュージシャンのファンを納得させながら、新たな世代やライト層にアピールする音楽映画を作ることは、たやすいことではないはずだ。でも、どのような視点や構成の作品であったとしても、製作側のミュージシャンへの愛やリスペクトが感じられる作品からは、何らかの形で映画と音楽のシナジーが生まれるのだろう。

 あるときは、ファン視点で語り尽くし、またあるときはライト層として新たなプレイリストを発掘する。音楽通も音楽好きも音楽に詳しくない人でも、それぞれの熱量で楽しめることこそが、音楽映画の魅力なのかもしれない。
(文/町田雪)

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