アルルカン、DEZERT、シェルミィ、ユメリープ…歌詞や世界観がティーン層に刺さるV系バンド

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2019年07月23日 11:21  リアルサウンド

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アルルカン『ラズルダズル』(通常盤)

 中学生のとき、学校へ行けなくなったことがある。昼間からベッドで布団に包まる私を外へ連れ出してくれたのは、間違いなくヴィジュアル系バンドだった。部屋を出て、地元の新星堂にCDを買いに行き、初めて東京のライブハウスに足を運んだ。爆音の中、ステージに立つ真っ黒いメイクをしたバンドマンの姿に夢中になった。それから友達が増え、家や学校以外に居場所ができた。あの頃の自分と同じように、生きづらさを抱えた思春期の少年少女は、今もきっとどこかにいるはずだ。そんなティーン層に刺さるバンドを紹介したい。


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■歌詞や言葉が“刺さる”、アルルカンとDEZERT
 今年で6年目を迎えるアルルカン。今年頭から始めたワンマンツアーのファイナルでは、新木場STUDIO COAST公演を成功させるなど、その勢いは今も留まらず、今やシーンの中核的存在だ。アルルカンの魅力は、切なさと激しさの入り混じった曲やフロアとの一体感が感じられるライブなどが挙げられるが、本記事で注目したいのは暁(Vo)による歌詞だ。暁の書く歌詞には、“生きる苦しみ”を感じさせる言葉が多い。たとえば2015年にリリースされた「ジレンマ」のサビでは、〈生きてて楽しい事なんて今までそんなに無かった?それでも良い それでも良い。だから 感じる事もある 「生きてきた」時間の上 どれだけ苦しんだとしても いつか何かに変わってく〉と、現実を生きる苦しさと向き合いながらも、希望を求めてもがく暁の生きざまが感じられる。同じような苦しみを抱えて悩む人たちへ、共感と希望を与えてくれるだろう。また、最新シングル曲の「ラズルダズル」は、〈自らの弱さと ここで 戦い続ける者へ 響いていけ 僕らの歌〉という言葉で締めくくられる。現実と戦うオーディエンスへ向けた、ある種のラブソングのようにも感じられないだろうか。さらに暁は、“アルルカンを自分の遺書にしたい”とまで言う。命を懸ける覚悟で走り続けるストイックな姿は、きっとティーン世代の心にも、勇気を与えてくれるに違いない。


 感情をブチ撒けるようなライブパフォーマンスや、激しい楽曲が魅力のDEZERTは、2011年結成。2018年にL’Arc〜en〜Cielなども擁するMAVERICK DC GROUPに所属し、今年の夏には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』にも出演予定。活動の幅をさらに広げているバンドだ。DEZERTでも、千秋(Vo)の言葉に注目したい。2016年にリリースした『「最高の食卓」』収録の「ピクトグラムさん」は、疾走感のあるバンドサウンドが心地よい、ライブ終盤に披露される曲だ。この曲のラストのサビで千秋は、〈不安定でいい 1人だっていい 「自分なんか」と嫌われても 未完成でいい 汚れてもいい 出口が見つからないなら 非常口でいい もがけばいい〉とギターを掻き鳴らしながら歌う。学校、恋愛、家族、仕事……悩みの多くに、出口なんて見つからない。その非常口として、音楽があってもいい。ライブハウスに逃げ込んでもいい。そんな風に全肯定してくれるようなこの曲は、ティーン世代はもちろん、社会で生きる全ての人へ刺さる優しさがある。また、先月22日に行なわれた『血液がない!』ツアーのファイナル公演で千秋は、「不安な未来も、明るい未来も、目をつむりたくなるような過去も、楽しかった過去も、この5分間だけは全て忘れて」「バンドが綺麗事を言わなきゃ始まんねえだろ」と言い放った(参考:VISUNAVI)。そんな“綺麗事”に身を委ね、ライブの間だけでも現実の悩みや辛さを忘れることができれば、また明日を生きる原動力が生まれてくるのかもしれない。


■バンドコンセプトや世界観が“刺さる”、シェルミィとユメリープ
 2016年に始動したシェルミィは、子供特有の繊細さと残酷さをコンセプトに掲げるバンド。「いじめ」「成熟嫌悪」「メンヘラ」などをキーワードに、ストレートな言葉で10代の心を掴んでいる。今年5月にYouTube上で公開された新曲「大人になったら死にたい」の〈大人になったら 自分の価値が薄れてく様な気がして 追いかけてくる時計の秒針が、怖いよ〉という歌詞は、無気力で漠然とした不安を抱える思春期特有の感情が的確に表現されており、動画のコメント欄にも共感の声が集まった。現在開催中のツアー『全校集壊-全国編-』では、過去作品をまとめたアルバム『カルティックオカルティック』を購入すると無料で入場できるなど、ティーン世代でも足を踏み入れやすい環境が整っている。9月に高田馬場AREAで行なわれるツアーファイナルのタイトルは、『スクールカースト』。思わず目を逸らしたくなるような名前を付けられたステージでは、一体どんな景色が見られるのだろうか。


 ユメリープは、浮遊感のある楽曲と、毒々しさと可愛らしさを掛け合わせたような“病みかわ”な雰囲気が特徴。2017年に始動した、今注目の新世代バンドだ。シェルミィが現実の残酷さを突きつけているのに対し、“永眠”をテーマにするユメリープの楽曲は、幻想的で浮世離れした雰囲気がある。歌詞はグロテスクな描写や絶望を歌った言葉も多いが、全てひらがなで綴られているため、まるで童話を読んでいるかのような可愛らしさすら感じられる。アーティスト写真やMVには、黒い哺乳瓶や十字架柄の枕など、ユメリープのテーマを象徴するアイテムが使われており、そのビジュアルを見ているだけでも、世界観にどっぷりと浸かれそうだ。“病みかわ”は、10代を中心に2015年頃から流行しており、現在もファッションやメイクに取り入れられている。そんな“病みかわ”を好む10代にユメリープの世界観はぴったりとはまりそうだ。


 家や学校が世界の全てだと思ってしまわず、ライブハウスやバンドの音楽を居場所とする選択肢も、頭の片隅に置いていてほしいと思う。さまざまなジャンルのバンドが溢れるヴィジュアル系シーンだからこそ、きっと自分の居場所が見つかるはずだ。(南明歩)


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