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ショーケン「傷天」ロケ地が取り壊し…ラジオマンが感慨

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2019年07月28日 16:00  AERA dot.

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写真延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFMエグゼクティブ・プランナー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFMエグゼクティブ・プランナー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は故・萩原健一さん主演のドラマ「傷だらけの天使」を振り返る。

【写真】今は亡きショーケン

*  *  *
「『傷天(しょうてん)』で有名な代々木会館が取り壊しです。1階のきぬちゃん食堂も」

 TFM在職中に北野武の『HANA‐BI』を担当した元社員Fからのメールである。「傷天」とはショーケン(萩原健一)のTVドラマ『傷だらけの天使』のこと。撮影に使われたビルの一角にある「きぬちゃん食堂」も6月27日深夜12時で終了、翌日に撤収される。

「エンジェルビル」こと代々木会館は香港の九龍城を彷彿とさせるレトロな風情、そこだけ時代に取り残された感じがした。Fと連れ立って夜7時に店に入ると東南アジア系の女性店員がイラッシャイマセと微笑んだ。ミックスフライ、砂肝炒め、特製目玉焼きにカレーライス。壁一面に手書きメニューが貼ってあり、いい大人がB級グルメに夢中になった。

 ドラマの中のショーケンは屋上のペントハウスに住んでいた。ドラム缶の風呂に入り、山手線の通過音で目を覚ますとゴーグルをおでこに上げて、コンビーフを牛乳で流し込んだ。牛乳瓶の紙の蓋を口で開けてごくごく飲む。そのアドリブが格好良かった。

 高校生だった僕も冒頭のこのシーンを覚えている。監督は深作欣二ら、脚本市川森一、木村大作撮影と豪華なスタッフに、ショーケン自らキャスティングした水谷豊とのコンビで、反抗と挫折を繰り返す探偵の下働きを演じた。

 ショーケンの衣装も印象的だった。BIGIである。報道ディレクターだった頃、BIGIのデザイナー(当時)だった菊池武夫さんの事務所に伺った。僕が暁星の後輩と知り、忙しい中、笑顔で出迎えていただいた。

 あの頃は寝る暇なんてなかった。とにかく新しいものを世の中は求めていた。そんな中、ショーケンに呼び出された。「まったく新しいドラマになる。衣装を頼みたい」と言う。どんなに華やかな場所にいてもいつも何かを考えている風だったショーケンが新しいドラマと言ったのが『傷だらけの天使』だった……。そんな話を伺った。

 菊池さんが用意したのは、バギーパンツと体のラインに沿ったダブルのジャケット。ドラマのエンドロールにBIGIのロゴが入り、名前は瞬く間に広まった。日本のメンズとして初めてパリに進出、DCブームの火付け役となるが、きっかけは「傷天」だった。

 自分には威勢の良さだけだ、引き出しが足りないとショーケンは次に倉本聰さんを訪ねている。それが『前略おふくろ様』。板前見習い、山形生まれの青年が「前略おふくろ様」と手紙を読む。このモノローグが話題になった。

 学生運動後の虚無感を描く『青春の蹉跌』では監督・神代辰巳と組んでキネマ旬報主演男優賞を、黒澤明の『影武者』に出演すると、作品はカンヌ映画祭パルムドールを取った。

 演者萩原健一の華やかな開花である。結婚と離婚を繰り返し、大麻所持や恐喝未遂容疑で逮捕など私生活が荒れた時期もあった。しかし、その都度返り咲いた。彼の演技に、「何をしでかすかわからない。毎回考えてきて、違う演技をする。そんな若者は彼ぐらいだ」と三國連太郎は唸った。

 きぬちゃん食堂の最終日は雨だった。レジには、萩原の遺影が飾られていた。翌日には何もかも撤収という話に、この写真はどこに行くのだろうと気になった。

 NHK大河『いだてん』で高橋是清を演じるショーケンを見たのはその3日後。物言わぬアップのショットが永遠に思えた。

※週刊朝日  2019年8月2日号

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