“側にいることが自然”な存在ーー『なつぞら』広瀬すずと中川大志が結ばれるまで

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2019年08月07日 06:11  リアルサウンド

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『なつぞら』(写真提供=NHK)

 自然と側にいる人こそ、真の運命の相手であったりする。『なつぞら』(NHK総合)第105話から108話ではなつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)の恋模様が描かれた。これまでずっと「お似合いの二人」と言われてきたなつと坂場であったが、なつは恋仲を否定してきた。坂場も、否定はしないものの肯定もせず、そんな期間の長かった二人は坂場の突然のプロポーズで、付き合う期間もなく婚約者になってしまった。105話で坂場がプロポーズをし、なつが了承。しかし106〜107話で坂場となつはすれ違ってしまい一度破綻した。108話で再度坂場がプロポーズをし、咲太郎(岡田将生)も坂場を認め、晴れて正式に婚約を結ぶこととなったのだ。


【写真】なつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)のハグ


 坂場は、プロポーズの際に「映画が成功したらですよ」と話しており、その発言のせいで一度はプロポーズを申し出たことを撤回した。そしてなつに、才能に惚れていたが、自分にはなつの才能を伸ばすことはできないと伝え、なつを傷つけてしまう。


 なつは、自分ではなく「自分の絵の才能に惚れた」という言葉に反応し、坂場は結局自分を好きじゃないのではないかと坂場を責めた。この時、初めてなつの坂場に対する、好きという素直な思いが吐露される。なつはあれだけ関係を否定していたにも関わらず、坂場に強く惹かれていたのだ。


 なつはこのシーンまで、坂場に強い好意を伝えることはなかった。しかし、なつが坂場との結婚を快諾するだろうと思わせたシーンはある。雪次郎(山田裕貴)に坂場への好意を聞かれた時に「好きでも一緒に生きられないこともあるし、好きなことが一緒ならお互いに好意がなくても一緒に生きられることもある」と答えたシーンだ。十勝での天陽(吉沢亮)との関係を示唆させるような台詞であり、坂場との関係を肯定する台詞でもある。


 さらに桃代(伊原六花)にプロポーズされたことを報告する際も、「やっぱりそうなるんだなあって」と、さも“自然な流れ”だったかのように話す。天陽はなつにとって憧れの存在であり、大切な相手ではあったが一緒に生きることはできなかった。しかし坂場との関係はなつにとって“側にいることが自然”な存在なのだろう。


 恋愛において、同じタイミングで結婚を意識し、同じ方向を向いて歩いていくことができる相手であるかは重要だ。なつの「好きでも一緒に生きられないこともあるし、好きなことが一緒ならお互いに好意がなくても一緒に生きられることもある」というのはまさに、天陽と結ばれなかったことへの未練を自分で断ち切り、坂場との関係を整理するための言葉だろう。そして同時に、なつの気持ちがはっきりと現れている。


 なつにとって、アニメーションを捨てるという選択肢はなく、十勝に帰るつもりもないし、なつの人生を伸び伸び生きていくという宣言でもあった。その時に、無理にどちらかに合わせるのではなく、自然と同じ方向を向くことができる相手こそ、側にいるべき人だということだろう。そしてなつにとってそれは坂場であった。


 なつは自身の人生を曲げることなく、将来の伴侶に出会うことができた。坂場はまっすぐで不器用だが、いつでも真剣になつと同じ方向を向いてくれる男だ。それは110話で、なつの実家に挨拶に行っている最中、農協で起こっている問題に坂場も協力すると名乗り出る勢いの良さにも表れているだろう。坂場は、なつの人生を自分の人生の一部としてではなく、奥原なつとして尊重してくれる。やりたいことも、自分の気持ちもはっきりしているなつにとって、これ以上ない相手と結ばれただろう。


(Nana Numoto)


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