RADWIMPS『天気の子』、セールス好調続く 野田洋次郎は“マルチな音楽家”に

0

2019年08月10日 20:21  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

RADWIMPS『天気の子』

 8月最初の週間アルバムチャートです。先月は1位→2位→2位→1位→1位とトップを独走してきた嵐『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が3位にランクダウン。とはいえ、まだまだ息の長いセールスを続けています。


(関連:映画『天気の子』とRADWIMPSの音楽が“現代の大人たち”を解放する 劇中5曲の視点から紐解く


 嵐ばかり追っていると見逃してしまいますが、ここ数週間しっかり売れ続けているもうひとつの注目作が4位のRADWIMPS『天気の子』。先々週に4.3万枚で3位、先週は2.4万枚で2位、今週は1.4万枚の売り上げを記録し、累計はすでに8.1万枚超え。バンド名義の作品としても、映画のサントラとしても、これほどのセールスをさらりと叩き出せることがまず素晴らしい。


 『天気の子』は、国民的ヒットとなったアニメーション映画『君の名は。』に続き、新海誠監督とがっちりタッグを組んで制作されたもので、いわゆるスタジオアルバムとは趣向が違います。主題歌「愛にできることはまだあるかい」を筆頭に、「大丈夫」や三浦透子をボーカルに迎えた「グランドエスケープ」など単曲の評判も高いのですが、あくまで劇伴として、アニメの世界観に寄り添っている仕事ぶりに注目したいところ。


 通常、ロックバンドのシンガーは感情の起伏が強く、自分の思いを形にしたい、そのためにも自分を深く掘り下げたい、と考える傾向があるように思います。野田洋次郎ももちろんそういう曲を書き、時には強烈なダークサイドと対峙してきたシンガーのひとり。「(劇伴において)自分の音楽性はどうでもいいと思っている」とは、自身も音楽家として活躍し、数々の劇伴を手がけてきた大友良英の言葉(参照:https://realsound.jp/2019/03/post-331637.html)。それを踏まえると、野田洋次郎って本当に前例のない才能を発揮していますよね。そんなマルチな音楽家に彼自身が望んでなったのだ、というべきかもしれません。


 ロックバンドとして「前前前世」のようなヒット曲を書き、同時に「洗脳」や「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」のようにタブーすれすれのテーマにも挑んでいく。さらにソロで実験性を爆発させ、劇伴ではプロの仕事を完遂する。他にも楽曲提供やプロデュース業も楽しんでいるようで、今の彼は、まさに音楽家として脂が乗り切った状態でしょう。気の早い話をしてしまえば、現在30代前半の彼が将来的にどんな音楽家/表現者になっているのか、楽しみでなりません。


 なお今週、もうひとつ注目すべきは、5位に初登場した(G)I-DLE『LATATA』です。K-POPの6人組グループで、“(ヨジャ)アイドゥル”と読みますが、実際に口にする場合はカッコ内をミュート、“アイドゥル”と言うのが正解。ただし日本でいうアイドルのイメージはまったく当てはまりません。ヒップホップ/トラップ/EDMをベースにした低音重視のサウンドと、カワイイよりもカッコいい女性像を押し出した歌詞世界。存在としてはBLACKPINKに近いので、すぐさま世界のマーケットで爆発しそうな勢いを感じます。


 興味深いのは(G)I-DLEのメンバーは6人中3人が外国人であること。この場合は韓国人ではない、という意味ですが、台湾人、中国人、タイ人がそれぞれひとりずつ在籍するこのグループは、韓国代表というより、アジアのクールビューティー代表、国籍や言語の違いを超えて繋がれるネクストジェネレーション代表として台頭していきそうです。もちろん中国と台湾、日本と韓国、それぞれに政治的問題は山積していますけど、音楽やカルチャーは決してそれと一緒にされてはならない一一。そんな意思を感じてしまうのは、昨今のニュースと決して無関係ではないのです。(石井恵梨子)


    ニュース設定