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健康な兵士も襲う「労作性熱中症」 過度なプレッシャーが危険因子に

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2019年08月14日 07:00  AERA dot.

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写真○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「熱中症の予防と対処法」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

*  *  *
 梅雨寒だった今年の梅雨。関東甲信地方では例年より30日遅い7月29日に、近畿地方では例年より15日遅い7月24日に梅雨明けが発表されました。梅雨が明けたかと思ったら、いきなり夏本番。30度を上回る日が続き、8月2日には、今年最多の236地点で35度を超える猛暑日を記録しました。

 このような急な気温の上昇に、身体がついていかないという方も多いのではないでしょうか。

 7月28日の夜、大阪の枚方市にある「ひらかたパーク」で、着ぐるみをかぶりショーの練習をしていた28歳男性が熱中症で死亡したと報じられました。

 また、8月2日にはJR東日本の運転士が病院に搬送されという報道もありました。JR羽越線の30代の運転士が午後1時ごろ、手のしびれや高熱やおびただしい発汗を認め、これ以上運転ができないと判断しSOSを発したそうです。運転席は直射日光が当たるため、冷房が効いていても暑いが、水を飲んでいたという苦情が寄せられるため、水分補給したいと思っても我慢してしまうのだそうです。

 消防庁の発表によると、7月29日〜8月4日の全国の熱中症による救急搬送人員は18,347人。そのうち、高齢者が54.3%(9,963人)を占めており、ついで成人が35.3%(6,474人)でした。発生場所としては、住居が41.0%(7,525人)と最も多く、ついで道路が17.1%(3,132人)、道路工事現場や工場・作業所などの仕事場が11.5%(2,102人)でした。

 気温が次第に高くなる5月ごろから、私たちの体では、血流が増えて汗が出やすくなることで、体内の熱を放出できるように変化していきます。夏の暑さに適応できるようにするためです。しかしながら、今年の梅雨は肌寒い日が続いたため、これらの変化が不十分な人が多いと考えられます。実際、7月15日〜7月28日の全国の熱中症による救急搬送人員は5,664人であり、翌週に約3倍増加と、梅雨明けと同時に急増していることがわかります。

 厚生労働省の「熱中症による死亡者数(人口動態統計)」によると、2018年の6月〜9月の熱中症による死亡者数(概数)は1518人で、猛暑だった2017年の年間の熱中症による死亡者数の635人を大幅に超えています。今年は急激に暑くなっており、油断はできないと言えそうです。

 そこで、今回は要注意の「熱中症」についてお話ししたいと思います。

 熱中症とは、さまざまな要因によって体温が外へ逃げる仕組みが破綻し、体温が調整できなくなることで身体に熱が溜まってしまう状態を言います。

 熱中症を引き起こす要因は大きく3つあります。

 一つ目は、熱中症を引き起こしやすい環境です。高温多湿、風が弱い、日差しや照り返しが強い、閉め切った室内やエアコンが設置されていない部屋、急な猛暑日などです。

 二つ目は、身体の状況です。体温調整機能が低下により暑さを感じにくい高齢者や、発汗機能が未発達で熱を身体から逃しにくい乳幼児、糖尿病や内臓に疾患を抱える方や肥満の方、栄養状態が良くない方や、下痢や嘔吐(おうと)などにより脱水状態の方、そして寝不足や二日酔いなどで体調不良の方です。

 そして三つ目は、熱中症を引き起こしやすい状況です。激しい運動や長時間の屋外作業、水分補給が不十分な状況です。

 これらが要因となることで、体温調整機能が崩れてしまい、体内に熱がこもり、体温がみるみる上昇してしまうのです。高齢者や乳幼児、基礎疾患のある人が暑熱(しょねつ)環境の中で長時間過ごすことで発症する熱中症を、非労作性熱中症・古典的熱中症といい、暑熱環境にスポーツや肉体労働などの要素が合わさって発症する熱中症を、労作性熱中症といいます。一般に、前者は予後がよくないのですが、後者は予後がいいと言われています。

 では、熱中症になるとどんな症状がみられるのでしょうか。

 熱中症の初期症状は、意識や体温は正常ですが、手足のしびれやめまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、筋肉痛、頭がボーッとする、多量の発汗といった症状です。軽度熱中症、I度熱中症とも言います。

 暑さで頭がボーッとするという症状は、皆さんもきっと経験があるのではないでしょうか。これは脳への血液量が減少により生じます。体内にこもった熱を逃がして体温を下げるために皮膚の血管が広がり、さらには発汗により全身を流れる血液の量が減少することで血圧が低下し、脳への血液量が減少するために、頭がボーッとして十分に働かなくなってしまうのです。

 中等度の熱中症は、頭痛、吐き気や嘔吐、下痢、倦怠(けんたい)感や気分の不快、判断力や集中力の低下、失神などいくつかの症状が重なり合って生じます。II度熱中症とも言い、この時、意識は正常ですが、体温は39度まで上昇し皮膚は冷たくなっています。

 重度の熱中症では、意識障害、けいれん、手足の運動障害、おかしな言動や行動などがみられます。III度熱中症とも言います。この時、体はとても熱いです。肝臓や腎臓などに障害が起きてしまうと、最悪死に至ります。

 初期症状の段階で、涼しい場所に移動し、水分や塩分補給を適切に行えば、重症化することはありません。しかしながら、意識がもうろうとしている、呼びかけても反応がない、といった重症のときは、救急車を呼ぶ必要があります。待っている間も衣類を脱がせて、氷のうで首やわきの下、太ももの付け根を冷やしたり、皮膚に水をかけてうちわや扇風機などで仰いだりして、全身の体温を下げることが大切です。熱中症で最も重要なのは、体を冷やすこと。そして、水分や塩分を補給することです。 

 6月末、欧州各地では、アフリカのサハラ砂漠からの熱波により記録的な暑さであると報じられました。6月26日には、ドイツやチェコ、ポーランドで最高38度を超え、28日にはフランス南部で45.9度を記録しました。2003年にも熱波が欧州を襲いました。猛暑によりフランスでは、推計約15,000人が死亡したと世界保健機関は報告しています。

 世界的に権威のあるNEJMという医学誌でも、2019年6月20日付けで熱中症についての記事が掲載されました。「熱波を引き起こす地球規模の温度上昇と都心部のヒートアイランドは、熱中症の主要な外的要因であり、米国国立気象局によると、熱波は他の異常気象よりも多くの人々を死に至らしめる」と書かれています。

 さらに、近年、米国の高校フットボール選手と軍人における疫学調査により、「労作性熱中症」やそれに伴った死亡率が増加していることが指摘されています。アスリートや労働者(消防士、農業労働者、工場や工事現場の作業者など)、兵士など健康な若者に最も多く、仲間やコーチからの動機付けやプレッシャーなどは、生理的な能力を超えて行動することを促すため、労作性熱中症の危険因子です。さらに、音楽フェスなどのイベントでのアルコールも、労作性熱中症の危険因子です。

 まだまだ、夏本番。甲子園のほか、さまざまなスポーツ大会や音楽フェス、花火大会など楽しいイベントが盛りだくさんだと思います。暑さを避け、水分や塩分補給をこまめに行い、熱中症対策を忘れないでくださいね。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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このニュースに関するつぶやき

  • もう一つ、外的要因。「蓄積された熱を測る方法がないこと」。リアルタイムでこれが把握されない限り、対応は常に多すぎるか、少なすぎるかになる。
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  • 「水を飲んでいたという苦情が寄せられるため」←こういう「自称:セイギノミカタ」気取りの人間こそ死ねばいいと思っている。
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