Hey! Say! JUMP 山田涼介の真骨頂 『セミオトコ』が映す“アイドルとファン”の生き様

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2019年08月16日 12:32  リアルサウンド

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『セミオトコ』(c)テレビ朝日

 Hey! Say! JUMPの山田涼介主演の金曜ナイトドラマ『セミオトコ』(テレビ朝日系)が、愛に溢れていて微笑ましい。ドラマには様々なジャンルがあるが、この作品には“山田涼介とそのファンのためのドラマ“という筋が一本通っている。その清々しいほどに振り切ったことによって、届けたい視聴者にとことん寄り添うことができている。


 山田が演じるのは、1週間しか外の世界で過ごすことができないセミ。長い間、土の中で過ごし、やっと地上に出てきたところに命の危険が差し迫る。間一髪のところで、アラサー女子・おかゆ(木南晴夏)に命を救われたセミは、残り限られた命を、おかゆを幸せにするために使おうと決意。美しい男性の姿に変身して、おかゆの前に現れる……。


【写真】セミオ演じる山田涼介


 脚本を手がけたのは『南くんの恋人』や『イグアナの娘』(ともにテレビ朝日系)といったファンタジックな恋愛ストーリーから、ヒロインの成長を丁寧に描いた『ひよっこ』(NHK総合)などを手がけてきた岡田惠和。「今回、最初から山田涼介さんを勝手に希望して、オリジナル企画を考えました。面白がってくださり、出演オファーを受けていただけて嬉しかったです。これは、かなり野心作であると同時に自信作です」と語っているように、山田の魅力を存分に理解して書き下ろされたオリジナル脚本だ。


 だからこそ、「こんな山田涼介が見たい」という願望を余すことなく映像化するのはもちろんのこと、「こんな山田涼介を見せてくれるなんて」と期待以上の可愛さも飛び出す。逆に、ファンが見たくないと思われるものは、しっかりと隠していくことも忘れない。


 山田が演じるのは、セミの化身・セミオにも関わらず、本編にはリアルなセミの映像は一切出てこない。どうしてもセミの姿が必要なシーンはアニメで処理する徹底ぶり。これも山田涼介ファンの多くが、虫を得意としていないはずだという想像の賜物だ。


 また、ヒロインのおかゆとセミオのファーストキスシーンも、「チュ〜」の音だけで表現されるという気配りも甲斐甲斐しい。それができるのは、山田涼介をまっすぐに見つめる眼差しと、ファンの心理を想像する力があればこそ。


 作り手の愛情あふれる眼差しで紡がれた、優しい世界。セミオを介して、孤独だったおかゆは周囲と繋がり、生きていく希望をもらう……それは、そのままアイドル山田涼介とファンの生き様を見ているかのようだ。


 「うれしいな。おかゆさんが笑うと、僕はうれしいです。それが僕の幸せです」というセミオの言葉は、きっと山田涼介がファンに向けた本心ではないだろうか。アイドルがアイドルとして活動できるのは、ファンがその存在を見つけて応援してくれればこそ。そしてアイドルは、そのファンを笑顔にするべく活動を続ける。


 セミの命に限りがあるように、アイドルも永遠に同じような活動が続くわけではない。いつかはステージを降りる日が来る。長い目で見れば、アイドルとファンの関係も期間限定の恋物語なのだ。いや、もしかしたらアイドルとファンだけではなく、全ての恋が期間限定なのかもしれない。


 どれだけの時間を一緒に過ごしても、いつか必ずくる別れのときを想像すると涙がこみ上げてくる。その時間が幸せであれば、なおさら。「1週間“しか“いられないの?」「1週間“も”いられるよ!」ならばセミオのように、一瞬一瞬にありったけの愛を注いで生きるしかない。このドラマの作り手のように。それを見て全力で胸をときめかせる視聴者のように。そして、誰よりもファンの幸せを願う山田涼介のように。“今週も愛する人に精いっぱいの愛を伝えられたか“。金曜夜にそんな振り返りをしながら、悔いのない日々を過ごすヒントをくれる作品だ。


(佐藤結衣)


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