『火口のふたり』柄本佑&瀧内公美、“塗れ場のリアリティ”の秘密明かす 荒井晴彦監督は批判に反応

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2019年08月24日 18:51  リアルサウンド

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『火口のふたり』舞台挨拶に登壇した荒井晴彦監督、柄本佑、瀧内公美

 映画『火口のふたり』の公開記念舞台挨拶が8月24日に新宿武蔵野館で行われ、キャストの柄本佑と瀧内公美、監督の荒井晴彦が登壇した。


参考:『火口のふたり』柄本佑×瀧内公美が語る、荒井晴彦への挑戦 「“身体の言い分”に正直に生きること」


 満席となった劇場を目にした荒井監督は、「昨日、(アップリンク)吉祥寺を覗きに行ったんですけど、観客が20人ぐらいで。今日はこんなに入ってて……。今日だけじゃなきゃいいんですけども(笑)」と登場早々に皮肉を交えたコメント。さらに客席を見回しながら、「おじさん多いよね。若い女の子に観てほしいんだけど」と、10日後に結婚式を控えた直子と、直子の昔の恋人・賢治の不確実な愛を描いたR18+指定作品となる本作をアピールした。


 キャストが賢治役の柄本と直子役の瀧内の2人だけということも話題になっている本作。「実験的」だと言われていることについて、荒井監督が「単純に予算がないだけです」と話すと、会場からは笑いがこぼれる。続けて、映画監督の青山真治から「傑作」とメールをもらったことを明かし、「『本当?』と返したら、『嘘でも忖度でもありません。佑がいれば百人力かよ、とは思います』と。瀧内入れて二百人力です。2人のおかげです」と、柄本と瀧内の力量を絶賛した。MCの奥浜レイラが「本当に『役者の2人がよかった』という声もたくさん聞かれていると思うんですけど……」と口を開くと、荒井監督は「そればっかりですよ」と反応。すると、柄本がすかさず「そんなことないですよ!」とツッコミ、「青山監督が『70過ぎの高齢者にこんな若い映画を作られてはたまらない』とおっしゃってましたから」と反論すると、荒井監督が「若葉マークから急にもみじマークになっちゃって(笑)」と話し、会場は再び笑いに包まれた。


 そんな柄本との撮影について、瀧内が「現場でそんなに会話をすることもなく、最終日かその前日ぐらいにやっと喋ったという感じでした。『あそこで風車が回ってるのすごいよね』っていう話を(笑)」と振り返ると、頷きながら柄本も「『あれ風の力なんだぜ』みたいな」と、撮影中の2人のやり取りを明かした。


 本作では、10日後に結婚式を控えた直子が、故郷の秋田に帰省し、昔の恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす中で、身体を重ねていく模様が描かれていく。そんな直子の行動について、柄本は「『結婚前に一回昔の男に戻りたいという直子の気持ちに共感できる』という声を試写で結構聞いて、そこに驚愕しました。『え!? そうなの? 怖い』って(笑)」と女性の共感度が高いことを明かす。瀧内も「初日に観に行ってくれた友達がいて、『エモくて泣いた』って言ってました。その子は結婚前で、直子と同じ状況なんですよ。みんなそういう思いをしてるんだなって感じがしました。伝わってるんだなって嬉しかったです」と友人とのエピソードを披露した。


 さらに瀧内は、撮影中の荒井監督とのエピソードも披露。「初日に荒井さんがバババッと来て、『賢治はよくわからない返事ばっかりしてるじゃん。直子はどう思ってるの?』ということを言われて、『あぁ』と思って。そのまま答えずに頷いて、荒井さんは戻られたんですけど、その気持ちはすごく大事にしなきゃいけないと思って、泣くシーンに繋がりました」。そんな荒井監督は「泣かせようとは考えてなかったんですけどね。『泣かないで』って言うんだけど何度も泣くので。でも出来上がったら瀧内の方が正解だったなって反省しています」と、瀧内の泣くシーンを絶賛。柄本も「僕は隣で寝ていたんですけど、カットがかかると瀧内さんのところに監督が来て、『もうちょっと淡々とできない?』(荒井監督)、『やっぱり泣いちゃいますね』(瀧内)、『え〜泣いちゃう? なるだけ泣かないように』って(笑)。でも僕もあそこは意外でした。『そうか、泣くんだ』って」と、劇中の重要なシーンの秘話が明かされると、撮影当時を思い出した様子の瀧内の目には涙が浮かんだ。


 MCの奥浜から濡れ場のリアリティについて問われた柄本は、「台本に全部動きが書かれているんです。最初のベッドシーンにしても、キスして、愛撫して、挿入して、そっから移動して……とかが事細かに全部書かれているんです。そっちの動きを覚える方が大変でした」と回答。「ああいうのって理にかなっているというか、シミュレーションしてるわけじゃないですもんね?」と柄本に問いかけられた荒井監督は、しばらく沈黙したのちに、「ちょっとAVを観たりね。ロマンポルノの頃から書いてた。初めてそういうことをする時と、別れる最後の時とで、対位は絶対違うじゃん。初めてでバックはさすがにいかないでしょ。気持ちとそういうことって絶対関連してるから、2人の関係性の中でどういうセックスなのかは書くべきだと思う」と自身の考えを述べた。瀧内も「本当に細かかったので。アクションシーンのようでした。一個一個覚えていくという感じで。荒井さんの書いている本が生々しかったんだと思います」と、濡れ場の生々しさは荒井監督の脚本によるものだと力強く語った。


 鑑賞者の中では様々な議論があるという本作。荒井監督は気になった反応を聞かれると、「悪口は頭にきて覚えてます。この野郎って。プロでも素人でも嫌なんだけど、素人にTwitterで『説明台詞が多い』とか書かれると、『うるせぇよ! 俺、50年書いてるんだよ。言われたくねぇよ。わかってやってんだよ』って。本当にこれ言いたかった(笑)。『火口の“かこう”を“ひぐち”って読んでる奴らには言われたくねぇんだよ』って」と“荒井節”を炸裂させながらも、「批評とかよりも僕が一番嬉しかったのは、娘に『お父さん、三度目の正直だね』って言われたこと」と明かすと、会場は和やかなムードに包まれた。


 最後に挨拶を求められた3人は、「2人しか出ていなくて、これだけ“欲”を映し出している作品もなかなかないと思うので、本当に多くの人に観てもらいたいなと思っています。良かったら『良かったよ』って伝えていただければと思います」(瀧内)、「きっといろんな感想などあると思いますが、良くても悪くても宣伝してください。良かったと思われたらマストですよ。むしろ知らない人にトントンと『火口のふたり』って言ってみたりね(笑)。憧れの荒井晴彦脚本でありしかも荒井監督の作品に出られた、僕としては大事な映画ですので、皆さんで広げていっていただけたら幸いです」(柄本)、「良くても悪くても、とにかく劇場に来てもらわないと。制作会社が危ないんですよ。僕らもギャラもらってないし(笑)。お客さんが来てくれれば、4作目撮れることに繋がると思うので。今日だけじゃなくて普通の日も来てほしいな。三度目(の鑑賞)ぐらいは寝てても構いませんので、とにかく来てください。よろしくお願いします」(荒井)とコメントし、舞台挨拶を締めくくった。(取材・文=宮川翔)


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