香取慎吾から生まれる作品は自身のDNAを持った化身のよう すべての創作物にも通じるテーマ

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2019年08月26日 07:01  リアルサウンド

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『週刊文春 WOMAN vol.3 夏号』

 香取慎吾が、『週刊文春WOMAN』2019夏号の表紙画を描いた。香取が、表紙画を手がけたのは、新年号、GW号に続いて3回目。テーマは、新年号が“New Year Woman”、GW号が元号の変わるタイミングだったということもあり“New Era”、そして今回の夏号は“We New”だという。


(参考:香取慎吾、萩本欽一と久々の共演 二人のタッグから感じたテレビの本質的な役割)  


 「反対から呼んでもWe Newになるのが面白いと思いました」。ロングインタビューに答えた香取はそんなふうに語る。順を追って見ても、逆から見ても、新しい私たち……。香取の作品は、タイトルを後付けするものが多い。それでも描かれたものやタイトルを見ると、必然性を感じるし、ついつい深読みをしたくなる。“この時期の彼が、この作品を描くということは、もしかしてこんな思いがあったのでは……!?“と、アイドルとして人生の多くを私たちに披露してきた彼だからこそ、そんなふうに作品を咀嚼して楽しむことができるのだ。


 そんな彼が、“New”というキーワードのもと、「3個目もその流れでいきたいな」と、タイトルから決めて描いたという“We New”。「今回の表紙画は、今までで一番、短時間で仕上がったかもしれない」と、わずか10日で描き終えていたと話す。赤、黄、白、青、黒と無数の飛沫と、緑の靄のようなものが舞う空間に、ピンクの大きなしずく型のようなモチーフが前後・左右に半分ずつ描かれた“We New”。


 このしずくは「涙」のイメージにも通じているという。それも、幸せなときに流れる涙。「面白いのは、嬉し泣きをする時って、絶対に一人じゃない……“I”じゃなく、“We”でシェアできるような、幸福のスクラム感があるんです」と、自身もユニフォームの選考委員やスペシャルサポーターとして深く関わっているオリンピック・パラリンピックやスポーツを例に出して、わかりやすく語る。


 さらに、しずくには「“精子“感もある(笑)」とも。そして「約一億の精子の中で、一匹だけが卵子にたどり着いて生命になる。僕が“精子“に込めている思いは、『人間は、競争しあって生きていかなきゃいけないけど、元々は誰もが一番、生まれた時から一等賞なんだよ』ってことです」と続ける。


 客席回転劇場・IHIステージアラウンド東京で開催した『サントリー オールフリー presents BOUM ! BOUM ! BOUM ! 香取慎吾NIPPON初個展』。そこでは、香取の内部に入っていくというのがテーマだったが、その入口はスボンのチャックだった。宇宙空間に香取の遺影写真が浮かぶシーンや、「ようこそ世界へ」とママの格好をした香取が産んだばかりの何かを抱くシーンも。そして“We New”という作品。今の香取を見ていると、新しい地図と共に生まれた新しい自分を、自分自身で育てているようにも見える。


 「もう一つは、DNA=遺伝子ですね。生まれる、新しくなるってことは、何かを受け継ぐ部分もあると思う」小学生のころから国民的アイドルグループ・SMAPだった香取は、自分でも語るようにパーフェクトビジネスアイドルだ。そのパーフェクトなDNAが、アート活動に受け継がれていく。パーフェクトビジネスアイドルがパトロンとなり、アーティスト香取慎吾の活動を支えているのだ。かつて、ムンクが自分の作品を“子どもたち“と呼んだように、きっと香取にとっても作品一つひとつが彼のDNAを持った化身のようなものなのではないか。


 そう思うと、この表紙画をはじめ、すべての彼の作品を“香取慎吾の赤ちゃん“のように感じて一層愛しくなる。しずくのモチーフは、泣いているのかもしれないし、おしっこをしたのかもしれない。見る人の心境によっては、血液にも精液にも見えるかもしれない。抽象的なモチーフは、タイミングによって見えてくるものが変わっていく。それが、今の自分の新しい何かに気づくきっかけにもなる。また、それをNAKAMAとシェアして喜べるのが楽しい。


 NAKAMAが笑顔になるから香取が頑張れるのか、香取が頑張るからNAKAMAが笑顔になるのか。順でも逆でも“We New”と読めるように、きっとこれからも“新しい私たち“はどちらからともなく、共に生まれていくのだろう。アーティスト香取慎吾が育っていく様を、生み出される作品たちを愛でることで、私たちも新しくなり続けるのだ。(佐藤結衣)


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