細かいことは気にするな! アクションスターたちを対決させた『トリプル・スレット』の意義

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2019年09月05日 20:01  リアルサウンド

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『トリプル・スレット』(c)2018 TRIPLE THREAT HOLDINGS PTY LTD ALL RIGHTS RESERVED

 スコット・アドキンス、マイケル・ジェイ・ホワイト、ジージャー・ヤーニンらが率いる凄い極悪人が悪いことをしている! イコ・ウワイスは連中に妻を殺され、トニー・ジャーとタイガー・チェンは騙されたうえに殺されかけた! ド外道どもめ、許せねぇ!


参考:世界のアクションスターたちが繰り広げる大乱闘 『トリプル・スレット』ポスター&予告公開


 本作『トリプル・スレット』(2019年)は、こういう話である。もはや物語はあってないに等しい。劇中でジャーがチャーハンを食べながら「俺ら殺されかけたけど、スコット・アドキンスたちは何者なん?」と問うと、イコさんが「極悪人だ」と答えるシーンがある。他にもスコット・アドキンスらが警察署に殴り込んで、M60やグレネードランチャーを撃ちまくって現地警官を皆殺しにするなど、まるで平松伸二先生の漫画(『ブラック・エンジェルズ』『ドーベルマン刑事』)のようだ。「とにかくスコット・アドキンスが悪くて、トニー・ジャーたちがそれを倒す。ちょっと陰謀っぽいことがあってややっこしいけど、この部分だけ理解してね」と言わんばかりである。お話に疑問を抱き始めるとキリがないが、前述の警察署殴り込みには「細かいことは気にするな」という強いメッセージ性を感じた。とにかく銃を撃ちまくる。とにかく戦う。悪いヤツはとにかく悪い。そういうわけで、私も細かいことは気にしないことにした。


 本作は今、世界で最も熱い格闘スターたちをかき集め、対決させたことに意義がある。先ほどから「スコット・アドキンス」「イコ・ウワイス」「トニー・ジャー」「タイガー・チェン」「マイケル・ジェイ・ホワイト」「ジージャー・ヤーニン」という固有名詞を出しているが、この映画は彼らを集めただけでも価値があるのだ。ここに並ぶ名前はそれぞれ主役級のアクションスターであり、格闘アクション映画の世界ではビッグネームだ。特に『マッハ!』(2003年)のジャーと、『ザ・レイド』(2011年)のイコさんは有名だろう。悪役を演じるスコット・アドキンスも実力派格闘スターとして知られ、有名どころでは『エクスペンダブルズ2』(2012年)でジェイソン・ステイサムと戦い、『ドクター・ストレンジ』(2016年)でベネディクト・カンバーバッチに霊体状態で回し蹴りを決めた男だ。さらに『イップ・マン4 完結篇(原題)』(2019年公開予定)にてドニー・イェンとの共演が控えている。タイガー・チェンは『マトリックス』(1999年)や『キル・ビル』(2003年)でスタントマンとして活動後、主演作『ファイティング・タイガー』(2013年)でキアヌと共演。マイケル・ジェイ・ホワイトやジージャー・ヤーニンも主演作が多く……と、俳優陣のキャリアを語り出すと、ページが足りないレベルなのである。


 そんなわけで、本作はいわばアクション映画の紅白歌合戦。細かいことは考えず、目の前で披露されるアクションスターたちの美技を楽しむのが良いだろう。そんな観客の期待に応えようと、本作は多少強引に見えても“夢の対決”が連発する。イコさんVSジャー、イコさんVSタイガーはもちろん、悪役のアドキンスが過去最高に悪くて強い。ジャーたちをたった1人で受け止めるラストバトルは一見の価値がある。


 「主演級のアクションスターたちを集め、それぞれのスタイルで戦わせる」。これが本作のコンセプトだ。断っておくが、本作は決して整った作品ではない。メチャクチャな話だし、妙に残虐描写に気合いが入っていたり、観ていて予算があるのかないのか分からなくなることも。しかし全体の整合性を破棄してでも、コンセプトだけはしっかり守っている。その姿勢は評価したい。


 本作を総括するなら、『ランボー/怒りの脱出』(1985年)の後に世界各国で量産された大らかなコマンド・アクションに、最前線で活躍するアクションスターを起用した、と言ったところだろうか。新しい映画なのに、どこか懐かしい。味わい深い1本だ。(加藤よしき)


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