乃木坂46、最新シングルがミリオン級売上を記録 メロディの美しさで勝負した楽曲群を分析

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2019年09月14日 14:31  リアルサウンド

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乃木坂46『夜明けまで強がらなくてもいい』(通常盤)

参考:2019年9月16日付週間シングルランキング(2019年9月2日〜9月8日/https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2019-09-16/)


(関連:【写真】乃木坂46『真夏の全国ツアー2019』


 最新のオリコン週間シングルランキングは、乃木坂46『夜明けまで強がらなくてもいい』が964,523枚で1位を獲得した。続いて、刀剣男士 formation of 三百年『鼓動』が84,428枚で2位、鈴木愛理『Escape』が35,440枚で3位となり、乃木坂46が他を寄せ付けない圧倒的な首位を記録した週となった。


 「夜明けまで強がらなくてもいい」は乃木坂46の24枚目のシングル。作詞を秋元康、作曲を山田裕介、編曲をAPAZZIが担当している。山田裕介は過去にNMB48に「場当たりGO!」や、SKE48の「微笑みのポジティブシンキング」といった作品に曲を提供してきたり、最近ではKing & Princeにも歌詞の提供経験のあるミュージシャン。自身でもアーティストとしてJAY’S GARDENというグループでピアノとボーカルを担当している。今回のシングルは彼にとって初となる表題曲で、初週からミリオン級の売り上げを見せているため、作家としての一大転機となるのではないか。


 曲は、壮大なストリングスから幕開けし、バイオリンやギターといった楽器がフィーチャーされたクラシカルなサウンドを繰り広げる。乃木坂46の清楚で上品な、しとやかなイメージが音にも表れているだろう。冒頭のフレーズは終始曲中で印象的に繰り返され、要所要所で曲に情熱的な雰囲気をもたらす。Aメロは比較的低いメロと落ち着いたボーカルワークのため、裏で鳴るギターの軽快な響きの存在感が相対的に大きい。


 そこからBメロ、サビへとスムーズに移り変わる。転調もなければ、展開も王道で、素直な作りと言えそうだ。奇抜な動きのないシンプルなメロディラインを見せる中、サビの後半で登場する主旋律の最高音〈もう〉が非常に美しく、印象的に歌われている。仕掛けやテクニックに頼らず、音の響きやメロディの美しさで聴かせる一曲だと言えるだろう。


 そして、今回のシングルはそうした方向性にまとめている印象がある。通常盤とType-AからType-Dの各形態合わせて全6曲のカップリング曲が収録されているが、どれも爽やかな音色と美メロが印象深い。中でも乃木坂46とは縁の深い杉山勝彦が作曲した「路面電車の街」「図書室の君へ」「時々 思い出してください」「僕の思い込み」の4つの作品にその傾向が強いだろう。


 故郷への慕情を歌う「路面電車の街」の温かなメロディや、図書室で出会った〈君〉への片思いを歌った「図書室の君へ」、卒業した桜井玲香が後輩たちへ歌うソロ曲「時々 思い出してください」、杉山のJ-POP愛が随所に滲み出た「僕の思い込み」といずれもメロディの美しさが光る。


 また、全形態に収録されているカップリング曲「僕のこと、知ってる?」は、切ないピアノのフレーズと主人公の孤独を歌った歌詞から始まり、場面転換を経てサビへと移行する、これぞ乃木坂46といった展開の一曲だ。「何度目の青空か?」や「サヨナラの意味」といったグループの代表曲を彷彿とさせる作風に、どことなく聴いていても安心感がある。


 全体的にグループのイメージに即した音選びと、奇を衒わないストレートな曲作りを見せている。表題曲のセンターは4期生の遠藤さくらが抜擢されているが、そうしたサプライズ性を作品に落とし込むことはせずに、爽やかな音とメロディの美しさといった楽曲の純粋な魅力で勝負したシングルリリースだ。(荻原梓)


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