斎藤滋×木皿陽平×冨田明宏に聞く、二次元アイドルコンテンツの現在と新プロジェクト『IDOL舞SHOW』の展望

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2019年09月26日 20:51  リアルサウンド

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左から斎藤滋×木皿陽平×冨田明宏(写真=はぎひさこ)

 この秋、二次元アイドルコンテンツシーンにあらたな大型プロジェクトが“出陣”! 『涼宮ハルヒの憂鬱』といったアニメ作品の音楽や茅原実里などのアーティストをプロデュースする斎藤滋と、音楽評論家であり内田真礼らの音楽プロデュースも手掛ける冨田明宏、そして『ラブライブ!』の担当プロデューサーとして知られる木皿陽平の3人が顔を揃える新アイドルコンテンツ、『IDOL舞SHOW』が発表された。


参考:『ラブライブ!』シリーズに新風吹き込む 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の魅力


 しかしこの3人、単に“タッグを組む”わけではない。このプロジェクトでは各々が別ユニットをプロデュースし、ユニット間でのバトルロイヤルが繰り広げられていくのだ。そこで今回はプロデューサー陣3人へインタビュー。発表された本作への取り組みはもちろん、二次元アイドルコンテンツシーンの現在地についても語ってもらった。(須永兼次)


■アイドルコンテンツ増加の背景とリアルライブの関係性


――まずは『IDOL舞SHOW』が属するアイドルコンテンツのシーンを、今みなさんがどう見られているか教えていただけますか?


冨田:最初は張本人たちにお聞きしましょうよ(笑)。


木皿:いやいや(笑)。難しいとこですけど……でも、どこかで新しい基軸が出てこないといけないと思います。


――新基軸。


木皿:そう。現実のアイドルの世界はおそらく進化していて、新基軸がずっと出続けていると思うんですけど、逆にアニメやゲームとキャストとのリンクの仕方って実は、ここ15年ぐらいの間でそんなに大きな変化はないんですよ。


冨田:それこそアイドル業界もかつては“戦国時代”と言われていて、今はももクロ(ももいろクローバーZ)やAKB48グループ、坂道系みたいな強い、存在自体がコンテンツになりえたアイドルが残ったじゃないですか。もしアニメ業界におけるアイドルコンテンツにもその戦国時代的なものがあったのだとしたら、大小さまざまな戦いはあったんじゃないかとは思っていて。そのなかで、結果『アイドルマスター』や『ラブライブ!』など強いコンテンツが残ったんだと思うんです。


木皿:我々音楽を作る立場の人間としては、当然「リアルのライブのステージでどう特別な体験をさせられるか?」を考えて生きているので、そこで新しい何かをやりたいというのはずっとあります。ただ、すごくお金がかかるとか、ある程度の大きな会場でないと作品として意味をなさないとか、そんな理由で新しい体験を提供しきれてない部分もあると思っていて。男性アイドル作品だと、個人的に新しいことをやっていると思うコンテンツはあるんですけど。たとえば『あんさんぶるスターズ!』とか。


冨田:すごいですよね。『あんスタ』のCGライブは。


木皿:ああいうイノベーションが、今の女性アイドルの作品にはあまりないのかもなって少し感じてます。だって10年間同じことをやったら、もはや伝統芸能じゃないですか。


斎藤:たしかに“伝統芸能”というのは腑に落ちるかも。世代交代していくんですよね。世襲制で。


――新しく入ってきた子たちが伝統も引き継ぎつつ、楽曲ジャンルや見せ方で新しいことを上積みしていくというのは、まさしく伝統芸能ですね。


冨田:アイドル自身がそうですからね。AKB48グループもですし、ハロプロ(ハロー! プロジェクト)なんてまさに。でもそこについたお客さんって新しく出てきたアイドルたちをまた育てていくし、それはもしかしたら、リアルとこちら側も近しい部分なのかもしれません。


――また、実際のライブイベントが増加しているのも、近年の流れだと思います。


木皿:ただ、ライブをやるには“順番”があるとも思います。ライブは準備もすごく大変だし、レベルの高いダンスも本来前提としてあると思うんです。映像ができて、それを形にしたいと役者さんやスタッフみんなで思い描いて、初めてライブが実現する。「そのコンテンツをよりお客さんに楽しんでほしい」とか「そのコンテンツをよりいいものにしたい」っていう気持ちが、ライブステージという形を取らせるんじゃないでしょうか。


冨田:あと、お客様に対して「感動したいんだな」っていうのは、すごく感じますね。エンターテインメントは全般的にそうかもしれませんけど、毎日自分のシンドくて大変な境遇がなかなか変えられずに仕事や学校へ行ったりしているなかで、自分が好きなものを生で味わって心の底から感動すると、明日への活力や生きる原動力になると思うんです。そういったコンテンツがアニメや声優さんの業界の中で出てくることによって、「キャラクターが好き」という思いに、その先の“体感としての感動”というエンターテインメントの要素がプラスされた感じがありますよね。


――普段生きづらさを感じたり、辛さを抱えている人たちの居場所のようになっている側面もある。


冨田:そうだと思いますし、僕はそれでいいと思います。僕が手掛けているアーティストのライブも、お客様ってチケット争奪戦からすごく頑張って来ていただけるから、その努力が報われてほしいなと思うし、払ったお金に見合ったものを作りたい。体感を通じて「生きていてよかった。報われた」と思ってもらいたんです。やっぱり、頑張る意味って必要だと思うから、『IDOL舞SHOW』に参加することで得られる喜びや感動に意味を見出してくださるお客様がひとりでも多くいればいいなと思っています。


――また、キャラソンとそのライブの分野でエポックメイキングだった『涼宮ハルヒの憂鬱』には、斎藤さんが携わられていました。実は僕も学生時代に“涼宮ハルヒの激奏”に行けたひとりなんですが、あの光景を生で観たときにはやっぱり泣いちゃいましたもん。


冨田:そこで“泣く”のって、二次元で見ていたものを目の前で一生懸命表現してくれている、「あ、目の前に追い求めいていた本物があるんだ」っていう感覚から来ると思うんです。それってもしかしたら、リアルなアイドルにはない感動かもしれないですね。


斎藤:たしかに。アニメの世界のものがそこにあって、一緒に騒げる場所がライブなんでしょうね。僕、今みなさんの話を聞いてて思ったんですけど、ニコニコ動画の盛り上がりがピークを超えてから、逆にライブが増えているような気がしてまして。僕、ニコ動のヘビーユーザーだったんですよ。毎晩のように入り浸ってずーっとコメントしてるのが、すごく楽しくて。でも、だんだんみんながニコ動に行かなくなってくると、ライブがどんどん増えていって……みんなと一緒に騒ぎたいんですかね? それがライブが増加していった理由のひとつなのかも。


木皿:体験の共有。


斎藤:かもしれないですよね。


■プロデューサーだからこそ肌で感じる、シーンの“変化”


――そういったコンテンツに惹かれるお客さんの反応で、変化を感じた部分はありますか?


木皿:「この人たちは本来何が好きな人なんだろう?」っていうのが、見えづらくなってるように感じます。そもそも「“アニメを好き”が大前提」が違うし、“大手を振って言いづらい”ではないですけど、昔は偏見みたいなものもありましたよね。


冨田:我々のときにはありましたね。オタク友達を増やしたいんだけど、オタク度合いを探り合う暗号みたいな、踏み絵のようなアニメタイトルに相手が反応するか試したりして(苦笑)。


斎藤:今はもう、そんなの気にしてなさそうですよね。隠さなくてもよくなったというか。


木皿:当たり前のように二次元のものが身近にあって、たとえば少年誌のグラビアでグラドルを見て「この子かわいいね」って言うのと、「『アイマス』の〇〇ちゃんいいよね」って言うのが同じ感覚なんでしょうね。それはここ数年で、一気に変わったと思います。


――その変化はアイドルコンテンツに限らず、声優アーティストやアニソンシンガーを手掛けるなかでも感じますか?


斎藤:うーん……感じる、かな。だから、楽曲制作で世代は意識しますね。若い頃は“好きな音楽=お客様の好きな音楽”って信じてやれていたんですけど、今の年代でやると年齢層が上の方しかついてこなくなりがちなので。そこは意識して若く作りませんか?


冨田:すごく気にしますね。ズレてたら怖いなって思います。


木皿:お客さんの感性って、特にこの5〜6年で急に変わってる部分ありますよね。


斎藤:あと、“みんなが好きなもの”がなくなって、それぞれ好きなものが細分化されてきた。だから僕は、結論から言うと「狙ってもしょうがない」と思って、結果的に「自分がいいと思うものを作ればそれでいいや」に戻ってきているんです。きっと意識的にヒットを狙えるスーパーな人もいると思うんですけど、自分はそういう気質じゃないので……でもときどき不安になって、若いスタッフや作家に「これ今みんな好き?」みたいに訊いたりもしてるんですけど(笑)。


一同:(笑)


冨田:逆に僕は、ものすごく考えちゃうんですよ。


斎藤:狙いにいくんですか?


冨田:というか、CDを1枚作るのにも自分が安心できないと怖くてしょうがないんです。だから毎回「今回は意味付けはこうで位置付けはこうで、今このタイミングだとほかにはこれこれこういうのがあるから、あなたはこうしたほうがいいんじゃない?」……みたいなところまで一回組み立てた企画書を作っちゃう(笑)。


斎藤:それって、冨田さんがライターとしての能力があるからできることかも。


冨田:いや、ビビリなんだと思います。まずそれをやらないと、自分がゴーできないんですよ。それに、単純に分析が好きなんですよね。だから頭の中で一度シミュレーションで形にしてみるのも、それが世に出たときのリアクションまで考えるのも割と好きなんです。


斎藤:自分の場合は1曲がどうというよりも、そのコンテンツやアーティストを応援してもらうためにはどうすればいいか、総合的に考える癖があるかもしれないです。もちろん曲の良し悪しはありますけど、いいチームができるとそのチーム自体を応援したくなる人たちが集まってくる、っていう現象が起こると思っていて。自分はそのチームづくりのほうが好きなのかもしれないですね。なので、僕はスタジオワークを一日中やっているだけだとダメで、たとえばアニメだったら監督やライターの方とかいろんな人に会いに行って、いいムードのチームをつくりたいんです。


木皿:GM(※ゼネラルマネジャー:現場での指揮を執るのではなく、戦略や組織作りなどに従事する役職)みたいな感じですか?


斎藤:あぁ、そんな感じかも! 選手にビシビシ指示するよりも、ちょっと引いたところで「このチームをどう活かしたらいいんだろう、そのために僕には何ができる?」みたいに考えることが多いですね。


■ユニット間のバトルが、魅力であり怖さ


――では続いて、『IDOL舞SHOW』自体について聞きます。このコンテンツは、いつ頃から動き出したんですか?


斎藤:前フリは昨年末頃から少しずつ工藤(智美)さん(※本プロジェクト全体のプロデューサー)からありましたけど、実際に集まったのは春先だった気がします。


冨田:その顔合わせの場で、この『IDOL舞SHOW』っていうタイトルも決まりましたし。


斎藤:みんなで考えたんですよね。


木皿:……いや、考えたの斎藤さんじゃないですか(笑)。


斎藤:あ、僕だったっけ(笑)。


冨田:その顔合わせのときに各ユニットの人数を決めたり、ユニット名のアイデア出しをブレスト的にして。あと、音楽性についてのざっくりとした提案もした気がします。


――その際に、特に面白そうだと感じられた部分はどんなところでしたか?


木皿:やっぱり“天下旗争奪バトルロイヤル”っていう、ユニット間のバトルですよね。普段音楽プロデューサーって基本的にはスタンドアローンなことがほとんどなので、同じ業界の先輩として見ていた方々とこういう形で“共演”するという……我々裏方の立場で、その言葉を使うのが適切かはわかりませんけど。


冨田:僕だって、2006年の『ハルヒ』のタイミングでこの業界でライターとしてやっていくといったときに、最初にイロハを教えてくださったのが斎藤さんですから。でもこのバトル要素、「すごい面白い」とか「呼んでもらえて光栄だな」って思いましたけど、同時に「怖ぇ……」とも思いました。


斎藤:僕も怖かったんですけど、この3人の並びが面白いのかもしれないと思ったし、しかも勝ち負けがはっきりするというのもいいのかもしれないと思って参加を決めました。たぶん30代中盤ぐらいだったらすごく悩んだと思うんですけど、今、割と解脱してまして。


――先ほども「一周回って」みたいな話がありましたね。


斎藤:あまりよくないことかもしれないですけど、「勝っても負けてもどっちでもいっか」っていう境地に達してるところがあって、楽しければいいかなと思ってやってるところがあります。経営者としてはもうちょっと貪欲なほうがいいと思うんですけど……人生の残り時間を考えるようになりまして。


――早くないですか?


斎藤:いや、「もうすぐ44だなぁ。仮に60が定年だとあと16年かぁ」って思うんですよ。そうすると、勝ち負けよりも「楽しんで死ぬしかない」ですよね。


冨田:いいですね。それこそまさに戦国時代みたいで。「人生五十年――」じゃないですか(笑)。


木皿:でも、3人を束ねる工藤さんがいちばん面白くないですか?


冨田:うん。たぶんもう、私たちをいろいろと焚きつけることやってるんですよ。そこに乗っかって、面白くしたいですね。


■プロデューサーが明かす、各ユニットの特性と狙い


――各アイドルグループのプロデューサーが武将の生まれ変わりという設定をはじめ、コンセプトもどんどん固まってきています。(※『IDOL舞SHOW』では、斎藤重道(斎藤滋)、伊達宗人(冨田明宏)、真田幸之助(木皿陽平)という武将の生まれ変わりのプロデューサー3名が各グループを担当する)みなさんが各ユニットをどう育てていきたいのかも、注目されているポイントだと思います。


冨田:僕は“三日月眼(ルナティックアイズ)”を担当するんですが、最初の顔合わせのときにはっきりと「3人がいいです」とお伝えしました。というのも僕、3人組のグループがものすごい好きなんですよ。Perfumeとか、今のアイドルだとTask have Funとか。あと、スリーピースバンドも。英語圏では“パワートリオ”なんて言い方をするんですけど、それってフロントひとりだけが頑張っててもダメで。それぞれがめちゃくちゃ個性がないと成立しないんですよ。マキシマムなパワーできれいな三角形のパワーバランスが取れると、いいユニットとかバンドになるイメージがあるんですよね。それに、伊達政宗の兜も三日月型ですから。


――ハロプロを意識したユニットとのことですが。


冨田:それも工藤さんからの提案もあってなんですけど、僕、ハロプロのアイドルにはすごくポジティブなイメージがあって。それがすごく好きなところなんです。なので“応援してくださるファンのみなさんを承認・肯定するユニット”にしたくて、コンセプトも“ラブ! ブレイブ! イエス!”なんです。このなかなかにシンドい社会で一生懸命に生きて、三日月眼と出会ってくれたファンのみなさんを、私たちは愛を持って全肯定します……みたいな。だから“ラブ=愛”と“イエス=肯定”が入ってるんですよ。


――楽曲面でも、そういった要素を詰め込んだものになっている。


冨田:そうです。このユニットでは、とにかくエネルギーにあふれた楽曲をやれればと思っていますし、歌詞にもそういったメッセージは結構入れ込みましたね。私たちの業界のお客様の傾向として歌詞までちゃんと読んでくれているし、自分に置き換えて考えてくださる方が多いように思うので。


――続いて斎藤さん担当の“NO PRINCESS”は、SPEEDを意識したサウンドとのことですが。


斎藤:これは「ダンスユニットにしましょう」というコンセプトが元々ありまして。最初の打ち合わせでSPEEDっぽさっていう案も出たので、そこで決まりました。人数を4人にしたかったのは冨田さんと同じような理由もあって。今の自分には少ない人数でやるほうが向いてるだろうなと思って、「4人にさせてください」と言った覚えがあります。あとは、ユニットの特色的にやっぱダンスがなきゃいけないので、「踊れるキャストさんを」というお願いもしました。


――楽曲制作上で、現状こだわられている部分は?


斎藤:やっぱりダンスユニットなので、今のクラブサウンドを意識したものにしたいなと思っています。ただ、自分の場合は何をやっても必ず共通してしまうのが、“サウンドよりメロディ”というところで。メロディが強くないと絶対ダメだと思ってるところがあるんです。なので僕の場合は、ピアノ一本でも聴けるようなメロディには必ずするぞと決めています。


――また、NO PRINCESSに関しては、歌詞もあいまって特にオトナ感が出てる印象もありました。


斎藤:そこは工藤さんからのオーダーもあったので、そういったイメージにかなり寄せて作っていきました。


――そして木皿さん担当の“X-UC(テンユーシ)”は、“真田十勇士”になぞらえた10人組ユニットです。


木皿:さっき冨田さんがおっしゃっていたのとは真逆なんですが、多人数のよさとして、偶然やハプニングを楽しめるところがあると思うんです。今のところ、この10人の方々にはお会いできていないんですけど、やっていくうちに何か面白いものを発揮する方が急に出てきたり、未知数のXファクターが見つかると思うんですよね。だから、アイドルって時代ごとに意味合いや位置付けが大きく変わってくると思うし、今求められてるアイドル像とかを考えすぎないのが僕のやり方というか……やっていくうちに「お客さんやこの子たちのこういういいところが見えてくる」みたいなものを楽しみながらやりたいです。なので、今からどんなハプニングやサプライズが待っているのか、僕自身も楽しみにしています。


――ユニットとはもちろん、お客さんともコミュニケーションを取りながら、そこで生まれてきたものを大事に育てていきたい。


木皿:そうですね。あと、コンセプトにAKB48って書いてありますけど、明確な“AKBサウンド”の定義ってないと思うんです。ただ、たぶん多人数感を活かす力のあるメロディと、ギミックのある歌詞が特徴だと思うので、ストーリーやシングルの位置付けをヒアリングしながら、それに沿った楽曲制作を進めています。


■各ユニットで異なる三者三様のキャスティング秘話


ーーそれぞれのキャスティングでこだわった点はありますか?


冨田:キャラクターの設定を見ると、何かドラマが起きそうな感じがそれぞれにありますよね。キャスティングに関しては、木皿さんとは逆に、僕は、幸いにも木戸(衣吹)さんと中島(由貴)さんも会ったことがあって。岡咲(美保)さんだけはじめましてだけど、歌がうまいという噂はずっと聞いていて。1曲のなかで、結構複雑なメロディだったり譜割りの曲が多くなりそうなんですけど、その中でもちゃんとキャラだったり、歌のスキルが活かせそうな歌唱力を持ってる方々にしたかったんです。


――斎藤さんは、先ほど「踊れる方をお願いした」と話していましたが。


斎藤:はい。“超実力派ユニット”というコンセプトなので。そのうち僕からは、阿部寿世さんと倉知玲鳳さんのふたりを指名させていただきました。


――なぜそのふたりを?


斎藤:阿部さんは自分が懇意にしている島みやえい子さんのボーカルスクールの生徒さんで。1年前ぐらいに紹介していただいたんですけど、歌はすごくうまいしダンスもしっかり踊れていて。今はインディーズのアイドルグループに所属してるんですけど、ソロ活動もOKとのことだったのでお声がけしました。倉知さんは、自分がElements Gardenさんと深く関わりのある株式会社Sさんと懇意にしているところがあって、有望な新人として紹介されたんです。彼女は現在はRAISE A SUILENのキーボードとしても大活躍中ですね。しかし惹かれたのはすごく踊れるという点です。それが理由で推薦させていただきました。


――倉知さんすごいですよね。スピンやエビ反りしながらキーボード弾いたりしますもん。


斎藤:アクロバティックな弾き方をされてますからね(笑)。それに、チームの中に自分の意志が通じる窓口の子がいると意思疎通がしやすくて環境づくりがうまくいくという経験があったので、「どうしても」とお願いして入れさせていただきました。


――一方、X-UCはまだ選考途中(※取材時点)なんですよね。


木皿:はい。工藤さんに委ねたり自分からも意見させていただいて進めています。X-UCには他のユニットにはいない10代も3人くらいいらっしゃるので、その年代の幅広さも面白いところです。ユニットのテーマに寄せたキャスティングの冨田さん・斎藤さんとは違って、X-UCはキャラクターに寄せたキャスティングなのも特徴的な部分だと思います。


――先ほど、この15年間ぐらい女性アイドルコンテンツにあまりイノベーションがないという発言もありましたが、この3ユニットでみなさんはどんなイノベーションを起こしたいですか?


斎藤:まず、この3人が集まったこと自体がイノベーションかも。


冨田:そうですね。しかもバトルをさせるということは、その結果によって物語やキャラクターのこれからの境遇、そこから生まれる音楽が変わっていくかもしれない。それも、もしかしたら今までになかった要素なのかもしれません。そこがどう積極的に企画に反映されていくのかは他のコンテンツにない部分だと思うので、僕たちも楽しみですね。


木皿:その“競い合う”という新基軸から、面白いものが新しく生まれてくるのが楽しみです。ただ、プロデューサー同士で競うというよりは、ユニットで競うという感じですよね。


斎藤:うん。たぶんプロデューサーがこうやって前面に出るのは、最初だけで。中の子たちの個性が出てきたら僕らは自然に裏方に回っていくだろうし、そうするべきだと思います。


――では最後に、読者の方々へ『IDOL舞SHOW』へ期待していてほしいことや、意気込みなどをひと言ずつお願いします。


斎藤:この3人で揃って何かをやるっていうところがまず面白みだと思うので、僕らのバトルに期待していてください! 楽しくは、やりますけど(笑)。


冨田:三日月眼がいちばん最初に解散しないように……(笑)、誰よりも愛していただけるように頑張ります。この業界の大先輩である音楽プロデューサーのおふたりに胸を借りて、逆に僕は無邪気に楽しめたらと思ってます。


木皿:ゼロから立ち上げるユニットで、今から何が起こるかがわからないのが楽しみでなりません。この気持ちを少しでも共有できるようにお客さんと同じ目線でこの10人組を楽しみながら、みなさんにもお二方の手掛けるユニットと合わせて『IDOL舞SHOW』を楽しんでいただければうれしいです。(須永兼次)


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