SEVENTEEN、『An Ode』で自己最高記録更新 “ダークコンセプト”に挑戦し新たなフェーズへ

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2019年09月30日 11:51  リアルサウンド

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SEVENTEEN『An Ode』

 SEVENTEENが、9月16日に3枚目のフルアルバム『An Ode』をリリースした。タイトルの『An Ode』とは「特定の人物や事柄に向けて筆者の主張の思考や感情を表現した詩」(Cambridge Dictionaryより)という意味である。現在開催中のワールドツアー『ODE TO YOU』は「君のための詩」という意味になるが、このライブツアータイトルの意味する“詩”がつまりこのアルバムを指しているということだろう。


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 今回のアルバムでやはり大きな特徴としては、SEVENTEENとしては初めての“ダークコンセプト”に挑戦していることだろう。韓国のアイドルでは一時期退廃的やミステリアスなど、ダークでネガティブなイメージのコンセプトが流行した時期があり、表現ジャンルの一種として定着している。デビュー初期には明るく清純なイメージを表現してきたアイドルが、キャリアと共にある種の“成熟”を表現したくなるとダークコンセプトを試みるというのは定番の流れと言えるだろう。実際、今回のアルバムに関してはビルボードのインタビューでも「自分達も年を重ねたのでそれに伴う成長や成熟を表現したかった」と述べている。


 タイトル曲の「毒:Fear」はメンバーそれぞれの中にある“恐怖”を“毒”として表現した曲で、今までの楽曲の歌詞にはなかったネガティブなフィルターを通しているのがSEVENTEENとしては新しい。ダークなイメージといえば前作のEP『YOU MADE MY DAWN』収録「Getting Closer」も“ダークなSEVENTEEN”を表現しようとした楽曲ではあるが、こちらは過去のパフォーマンスのイメージよりも動物的で技巧的なパフォーマンスを先に想定して作られた楽曲であり、歌詞の内容もネガティブというよりは激情的とも言うべきものだった。


 一方の「毒:Fear」はより内面を表現する歌詞であり、それに伴いパフォーマンスにおいても「Getting Closer」や先行リリースされた「HIT」よりも技巧的な面では難しくないものの、より感情的な深みが求められる表現という点で新たなチャレンジになったようだ。デビュー時はグループとしての一体感で特に注目されたSEVENTEENであるが、パフォーマンスチームリーダー・ホシによれば「当初はメンバーの足りない部分が見えたら無意識に口を出しそうになっていたが、そうすると本人ならではのカラーが出にくくなってしまう。メンバー13人それぞれがより良い姿を見せるためにそれぞれが自分流に研究をしているので、どんどん新しい面を見せられるのだと思う」と語っている(『K-POPスターへのインタビュー』朴喜我)。初期の13人のメンバーが一体になるために努力するという段階から、現在はそれぞれがインディペンデントに思考して努力することで自然と多彩なカラーが出て1つにまとまっていくという、新たなフェーズに入っているようだ。


 音楽的には、成熟とパワフルを見せるという意思を反映してだろうか、タイトル曲の「毒:Fear」だけではなく「Let me hear you say」「247」(パフォーマンスチーム)「Second Life」(ボーカルチーム)など、R&Bベースの楽曲が多い。K-POPでは頻出するジャンルだが、SEVENTEEN自身は今まであまり楽曲に取り入れてこなかったディープハウスやアーバンR&Bなども今回は取り入れている。トレンディな編曲を加えることで現代的なフレッシュさは失わないようにしているが、一方でSEVENTEENの楽曲的特色の1つでもある、トレンドのジャンルミュージックに加えるレトロなエッセンスとどこか韓国歌謡にも通じる、良い意味でメジャー感のある通俗さは変わっていない。過去の楽曲ではファンクやモダンロックなど60〜70年代がベースにあったが、今回は主に80年代〜90年代に最もメジャーなポップスジャンルのひとつであったR&Bをベースにしていたり、ゼロ年代に大流行したグリッチサウンドを彷彿とさせる「Network Love」など、やや新しい時代のジャンルのネオレトロ系の味つけが変化と言えるだろう。もちろん、ファンクベースの「Lucky」やゴスペルとヒップホップを融合したような「Snap Shoot」のような生来のSEVENTEENらしさを感じる楽曲も健在だ。


 ダークコンセプトや成熟したイメージを取り入れながらも、根底にある清涼感というのか、彼らならではのどこか品の良い雰囲気は変わらない。今回もSEVENTEENのアルバムには昔から欠かせないPRISMFILTERやシモン・ペトレンも参加している。今回ボーカルチームの楽曲の作曲にメンバーのバーノンが参加しているが、日本オリジナル楽曲の韓国語バージョンを収録してもアルバムとしての一貫性と流れが保たれるのは、メンバー全員の意見を取り入れつつも1つの方向にまとめ上げることが可能な現行の作曲システム、メンバーのウジとBUMZUによる二人三脚の自主制作スタイルをデビュー時から一貫して続けているからなのかもしれない。


 青春の喜びを描いたデビューEPの『17 Carat』から1stフルアルバムの『LOVE & LETTER』リパッケージまでを第1期SEVENTEENとするならば、青春の切なさを描いた『Going Seventeen』から『Director’s Cut』までが第2期、少年から青年への過渡期と夜明けを描いた『YOU MAKE MY DAY』『YOU MADE MY DAWN』が第3期と言えるだろう。そして、いよいよ大人への第1歩を描いたのが今作『An Ode』なのかもしれない。今作はアルバム初週販売数(フィジカル)70万枚を突破し、自己最高を記録した。世界各国のiTunes K-POPランキングでも24カ国で1位を獲得し、着実にファンドムを拡大しているSEVENTEEN。質・量共に新たな成長段階に突入したアルバムと言えるだろう。(DJ泡沫)


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