松本人志、「嫁とカネ」の話に募る不安――「遺言状を書いておくべき」と進言したいワケ

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2019年10月04日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

『ワイドナショー』(フジテレビ系)公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「『あたしはお金は一切いらない』って嫁は言う」ダウンタウン・松本人志
『ワイドナショー』(フジテレビ系、9月29日)

 直木賞作家・黒川博行センセイの『後妻業』(文春文庫)をご存じだろうか? 

 妻に先立たれた資産家の91歳の男性が、結婚相談所で知り合った69歳の女性と結婚する。しかし、その女性の目当てはカネで、男性を病気に見せかけて殺害し、遺産相続するということを繰り返していた。遺産を横取りされることに気づいた娘は、弁護士と事件を解明する……そんなストーリーの小説である。同書の解説によると、これは完全な創作ではなく、センセイの周辺で起きた同様の事件を小説家としての視点で膨らませたものだという。

 その後、明るみになったのが、筧千佐子事件だ。結婚紹介所を通じて筧と知り合い、結婚した男性が次々と不審死を遂げる。筧はそのたびに遺産を相続するという、小説を地で行くやり方で私腹を肥やしていたのだ。

 筧のような後妻業の女性がターゲットにするのは、高齢の資産家男性。となると、有名人や大物芸能人も狙われる可能性は大である。タレント・やしきたかじんさんが、食道がんの闘病中、自分の娘より若い30歳以上年下の一般人女性と結婚したが、2014年に亡くなった。たかじんさんの死後、夫人は後妻業ではないかと騒がれたことがあった。

 『中居正広の金曜のスマたちへ』(TBS系)によると、二人の出会いはFacebook。夫人は当時イタリアに住んでいたが、所用のために日本に帰国した際、クリスマス合コンで初めて顔を合わせたという。かつて愛した女性とそっくりだったことから、たかじんさんは夫人に強く惹かれていくが、夫人はたかじんさんを知らなったそうだ。

 たかじんさんの死後、さまざまな事実が明らかになる。「女性自身」(光文社)によると、たかじんさんのお母さんは、息子の結婚を知らなかったそうだ。初婚だと言われていた夫人の結婚は3回目。遺言書には、10億円と言われる遺産のうち、「OSAKAあかるクラブ」、大阪市、桃山学院にそれぞれ2億ずつ寄付し、残りの4億を夫人が相続すると書かれており、一人娘の取り分はゼロだったという。実の娘に相続させないという遺言は、かなり珍しいものではないだろうか。

 芸能界はこの後も、後妻業かと疑われる相続が頻発する。たかじんさんと同じ14年、昭和の名優・高倉健さんが亡くなり、秘密裏に養子縁組した元女優が、高倉さんの遺言書に沿い、40億円もの遺産を相続したというのだが、養女は健さんの実妹にも高倉さんの死を知らせず、分骨も拒否したそうだ。なお、ノンフィクションライター・森功氏の『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』(講談社)によると、高倉さんと養女の養子縁組の手続きには不審な点があるそうだ。高倉さんの本名は小田剛一(おだたけいち)だが、申請書のふりがなは、「おだごういち」になっていたというのだ。自分の名前を自分で間違えるとは、確かに考えにくい。

 どうして、後妻業が疑われるような遺産相続トラブルが起きるか。実務面で言うのなら、結婚や養子縁組をオープンにしないからだろう。相続の権利がある人に遺言の存在が周知されず、親類は不信感を持ちやすくなる。

 庶民の間でも、「遺言書がなければ、揉める」「遺言書があっても、内容次第で揉める」ということは浸透しているのに、なぜ資産家の男性たちは、そういった準備をしないのか。スターということで極端に世事に疎いからとも考えられるが、根っこの部分にあるのは、「資産家の男性ほど、おカネの話をする女性が嫌いだから」という点ではないだろうか。

 9月29日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、“紀州のドンファン”と呼ばれた資産家男性の遺産について放送された。70代の男性が、55歳年下のモデルの女性と結婚する。しかし、結婚からわずか3カ月後に男性は死亡。司法解剖の結果、男性の体内からは覚せい剤が検出される。事件の真相は謎のままだが、男性の遺言には、全財産を和歌山県田辺市に寄付すると書かれており、田辺市も寄付を受け入れることにしたと発表した。

 同番組のコメンテーターは、ダウンタウン・松本人志。大物芸能人ということで資産家だろうが、松本が自らの遺産相続について、こう話していた。

「『あたしはお金は一切いらない』って嫁は言う」

 その表情は、喜んでいるように私には見えた。恐らく、カネを欲しがらない妻を好ましいと思っているのだろう。しかし、「でも、お酒飲みだしたら、雰囲気変わってくる」「どっちが本当のお前なんや」とオチをつけていた。

 芸人としてのネタかもしれないが、私には夫の遺産を拒否する妻の気持ちがわからない。というのは、妻が専業主婦であったとしても、結婚後の財産は夫婦二人のものだから。当然夫人はもらう権利はあるし、松本が亡くなって夫人とお子さんが生きていくのにカネは必要不可欠だろう。「一切いらない」は現実的ではない発言と言えるのではないか。

 が、そういえばたかじんさんも同じような発言をしていたことを思い出す。『金スマ』によると、たかじんさんは夫人が献身的に看病してくれる姿を見て、「カネ目当てやない」とメモに書いて残していたそうだ。水を差すようで何だが、看病の真剣度とカネ目当てがどうかは、まったく別次元の問題ではなかろうか(たかじんさんの信頼を得るため、献身的を装うという作戦もないわけではない)。松本やたかじんさんの言動から考えるに、お金を持った男性というのは「カネは必要ないと言う、もしくはカネを欲しがるそぶりを見せない女性は、カネ目当てでない」と考えている部分があるのではないだろうか。

 だとすると、資産家の男性と交際する女性は、空気を読んでお金の話を避けるようになる。しかし、共に暮らし、場合によっては看病もするのなら、男性亡き後、それ相応の保証をしてほしいと思うのは人情だろう。そのためには、自動的にお金をもらえるようにする法的手続き(養子縁組や結婚)を秘密裏に行うのが一番の得策。しかし、それが親族にバレると、結婚という大きな契約を内緒にされた側は不信感を持つ、というように、後妻業でなくてもそう思えてしまうという悪循環にはまっていくのではないか。

「どうして揉めないような遺言状を書いておかなかったのか」

 芸能界で遺産相続トラブルが起こると、必ず誰かが口にする一言だが、「自分の死んだ後の話をされたくない」「カネの話をするオンナといたくない」という男性の繊細さ、もしくは小心さが、遺言状の作成にブレーキをかけているのではないか。芸能人としての栄光を傷つけないためにも、松本をはじめとした大物芸能人の皆さんは、健康なうちに遺言をしっかり書いておいていただきたいものだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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