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赤ちゃんの死「タブー視」よりも支援が必要 日本に啓発週間を広めたい

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2019年10月09日 08:00  AERA dot.

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写真10月15日の夜7〜8時は、世界中で多くのキャンドルが灯され、お空の赤ちゃんを想う人たちがSNSなどでつながる(撮影/写真部・張溢文)
10月15日の夜7〜8時は、世界中で多くのキャンドルが灯され、お空の赤ちゃんを想う人たちがSNSなどでつながる(撮影/写真部・張溢文)
 赤ちゃんの死。その悲しみは周囲に理解されにくく、孤立する人も少なくない。赤ちゃんを亡くした「天使ママ」に生きる力を取り戻してもらいたいと、当事者たちが立ち上がった。

*  *  *
 ピンクリボンは乳がんの早期発見・啓発。グリーンリボンは移植医療の普及。さて、ピンク&ブルーリボンは何のシンボルか、ご存知だろうか。

 実は、毎年10月9日から15日は赤ちゃんを亡くした家族のための国際的な啓発週間「Baby Loss Awareness Week」で、その啓発カラーがピンクとブルーなのだ。

 この期間は流産や死産、新生児死で亡くなった赤ちゃんに想いを寄せ、家族に幸せをくれた赤ちゃんをたたえると共に、タブー視されがちな「赤ちゃんの死」への理解を広め、大切な命を失った家族への支援の必要性も知らせる機会になっている。

 啓発週間最終日の15日の夜7時から8時は、各家庭などでキャンドルに火を灯して“お空にいる”赤ちゃんを想う時間だ。インスタなどSNSで「#waveoflight」や「#BLAW」といったタグをつけて投稿し、優しい想いを共有するという。

 国内ではほとんど知られていない啓発週間を日本でも広めようと、今年、赤ちゃんを亡くした天使ママたちが活動を始めた。

 神戸市に住む小原弘美さん(40)は2017年7月、出産予定日を過ぎた41週の健診で、おなかの赤ちゃんの心拍が確認できないと告げられた。その後、陣痛促進剤を使い、3日かけて亡くなった息子を産んだ。

 昨年10月、インスタでつながったイギリス在住の天使ママを通じて啓発週間を知った。海外ではこの期間、たくさんのランドマークがピンクとブルーにライトアップされるなど盛んに啓発されていて、驚いた。

 一方、日本では赤ちゃんの死を語る場は少なく、家族や友人にもつらい想いを明かせずに苦しんでいる人がたくさんいる。厚生労働省の人口動態統計によると、2017年には死産が2万358件あった。同年の出生数が94万6065件だったので、約50人に1人が死産している計算だ。死産の大半は予測がつかず、年齢に関係なく誰にでも起きる可能性があるが、こうした現状は知られていない。

 社会の理解も進んでいない。産後の保健師による全戸訪問は赤ちゃんがいないため受けられず、一昨年度から始まった産婦健診での産後うつ病検査も、流産や死産だと行われないケースも多く、ケアが必要とされる天使ママたちが支援からすり抜けてしまっているのが現実だ。悲嘆が複雑化して、社会に適応できなくなる人や精神疾患を抱える人、命にかかわる心臓疾患などを発病する人、中には自死してしまう人もいる。こうしたことを防ぐ予防的介入のためにもグリーフケアが必要とされる。

「心身のケアが必要でも、本当に苦しい時ほど助けてという声を上げられないし、『赤ちゃんが亡くなったのに自分だけ助けてとは言えない』と、一人で苦しんでいる天使ママは少なくありません」(小原さん)

 小原さんは死産から4カ月後、片道2時間近くかけて同じ経験をした人たちの集まりに初めて参加した。生きる意欲を失いながらも、わらをもすがるように集まりに参加し、赤ちゃんへの想いや苦しい気持ちを表出し、参加者と共有する中で、悲しみを受け止められるようになっていった。自分の言葉で気持ちを語り、それを自分の耳で聴くことも、気持ちを整理していく過程で大切だった。

 神戸市内でも同じ経験をした天使ママが気持ちを吐き出せる場所をつくりたいと、死産から1年後に自助グループ「エンジェライト」を立ち上げた。ナード・アロマテラピー協会認定のアロマアドバイザーの資格を生かし、お話会の際にグリーフケアに適したアロマオイルづくりのワークショップなども企画。さらに看護師の卵や医療関係者に向けて、死産の体験や天使ママへの支援の必要性なども伝えてきた。

「何かしていないと壊れてしまいそうで。地上で子どものお世話ができない分、息子の母としてできることをすることで、生きる意味を探そうとしていたのかもしれません」

 小原さんのそうした活動を伝える新聞記事を読み、「目指す想いが一緒だ」と連絡を取ったのが横浜市に住む菅美紀さん(43)だ。原因不明の不育症で流産を繰り返し、4人の我が子を亡くした。流産は珍しいことではないと軽視されることも多く、なかなか悲しい気持ちを吐き出せなかった。流産はお骨も残らず、お墓もない。どこに我が子への想いを馳せたらいいのわからず、ビーズで小さな天使の人形を作り始めた。流産した友人たちから「作ってほしい」と依頼を受けたことをきっかけに、自分と同じようにやり場のない想いを抱く天使ママが安心して話せる場所をつくろうと「ANGEL’s HEART」を立ち上げ、お話会や天使ママを癒すイベントを開催してきた。

 ただ、菅さんは1人で活動することには限界があり、もっと広く赤ちゃんを亡くした家族に支援を届けるにはどうしたらよいかと模索していたときに、同じ想いの小原さんやほかの天使ママたちと出会い、一緒に、赤ちゃんを亡くした家族を支援する団体「Angie(アンジー)」を立ち上げた。「Baby Loss Awareness Week」の啓発週間やピンク&ブルーリボンの周知を目指しているほか、赤ちゃんを亡くした家族へのグリーフケアの必要性を訴える。

 メンバーの一人、平尾奈央さん(37)は11年前に妊娠30週で第一子の娘を死産した。その1年半後に息子を出産したが、育児に追われる中で娘の死と向き合う時間が十分に取れず、10年以上も苦しんだ経験から、こう願う。

「赤ちゃんの死に向き合えないままだと長く引きずってしまう。天使ママたちが自分の人生を生きる力を取り戻すサポートをしていきたいと思っています。この啓発週間を広め、お空にいる子の話をしやすい、優しい社会になってほしい」

 都内に住む櫻田智子さん(38)は妊娠20週のときの健診で突然、無脳症だと告げられた。おなかの赤ちゃんが脳の一部が欠損して、おなかの外では生きることが非常に難しい症状だった。人工死産の選択肢もあったが、力強い胎動に励まされ産むことを選んだ。赤ちゃんは出産予定日を過ぎた妊娠41週に、出産の途中で亡くなった。また、18年に妊娠7週で流産したときには、たったひとつの命なのに、病院で赤ちゃんとして扱ってもらえず傷つけられた。

「流産や死産では、突然当事者になり、幸せな気持ちから一気にどん底に落ちてしまう。だから妊婦さん自身も頭の片隅に、お空に帰っちゃうこともあるんだなという現実を知っておいてほしいし、もしそういう立場になったときにも、同じ経験をした人がほかにもいて、話せる場があるということもぜひ覚えておいてほしい」

 14年に妊娠7カ月で息子を死産し、その後500人以上の天使ママの話を聴いてきた谷原嘉代さん(44)は天使ママ、天使パパたちにこう呼びかける。

「15日の夜にキャンドルを灯しながら、あなたもお空の赤ちゃんもひとりじゃないよと感じてもらえたら」

 Angieでは今後、ピンク&ブルーリボンのピンバッチの制作・販売なども計画している。今年は10月15日午前11〜13時には川崎市の溝の口でイベントを予定しており、各自が持ち寄ったキャンドルに火を灯し、交流する。詳細はAngieのホームページ(https://blfs-angie.jimdosite.com/)で。(編集部・深澤友紀)

※AERA 2019年10月14日号に加筆

【おすすめ記事】間下このみが告白 息子の死で知った「不育症」との闘い


このニュースに関するつぶやき

  • ケアや支援は必要だと思うけど天使ママといういう言い方は気持ち悪い。
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  • 赤ちゃんて、無事に産まれてくることが奇跡なんだよ。 母子共に健康とはいつも限らないんだよ。 意外とそれが分かってない人が多いよね。
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