岩田剛典が語る、『シャーロック』で挑む新たなワトソン像 「脚本から湧くイメージを働かせて」

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2019年10月14日 10:01  リアルサウンド

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若宮潤一役の岩田剛典

 フジテレビ月9枠で放送中のドラマ『シャーロック』。


参考:『シャーロック』は今までにない異色のホームズ作品に “ワトソン”岩田剛典の設定が今後のカギ?


 本作の原作は、世界的ミステリー小説『シャーロック・ホームズ』シリーズ。名探偵・シャーロックと医師・ワトソンがバディを組んで難事件を解決していく古典ミステリーの傑作を、オリンピックを翌年に控える“令和の東京”に舞台を移し、井上由美子脚本&西谷弘監督コンビで描く。


 本作で原作におけるワトソンの役割を果たす若宮潤一役として出演するのが、岩田剛典。若宮は、都内の病院に勤務する精神科医で、冷静かつスマートな常識人。端から見ると善良な人物に映るが、実際は傷つきやすいハートの持ち主であり、幼い頃から“良い子”の仮面をかぶり、自信のなさの裏返しから、常に虚栄心と煩悩と葛藤するナイーブな性格の役どころだ。今回シャーロックの役割を果たす誉 獅子雄を演じるディーン・フジオカとバディを組む岩田にインタビューを行った。


ーーこの作品が決まった時の率直な気持ちを教えてください。


岩田剛典(以下、岩田):最初にお話しいただいた時はシンプルに面白そうと思いましたし、フジテレビの月9枠でこういう作品をやるのもいいなと。


ーー原作は世界中にファンが存在する大きな作品です。それに対する気負いなどはありましたか?


岩田:実は僕が今まであまり『シャーロック・ホームズ』に触れてきていなくて、だからこそ気負わずにやれているんです。原作のファンの方は、「大丈夫?」「気負うでしょう」と思うんでしょうけれど、無知だからこそ、あまりそういうことは考えず現場に入れています。役者は台本を元に作品が良くなるようにやるので、正直言うと台本以外のことはあまり関係ないというくらいの気持ちでやっています。


ーー過去にたくさんの役者の方々がワトソンを演じられてきましたが、そういうのは逆に入れないようにしていたんですね。


岩田:そうですね。全部ではないけれど、いくつかは拝見しました。でもそれぞれお話も違いますし、時代背景や舞台設定も違うから、同じものにはなりようがないですよね。例えば原作だと、ワトソンは軍医でアフガニスタンから帰ってきたという設定がありますが、それを令和の東京でやるのは、感情移入しづらいのではということで、今回は精神科医になっているんです。そういうこともあり、原作に寄せるというよりは、自分の中で脚本から湧くイメージを働かせて演じることを意識しました。


ーー新たなシャーロックとのバディ感を作っていくということですね。


岩田:シャーロックがこのストーリーをかき回す主人公であり、そこに対してワトソンは振り回されつつツッコミを入れるようなポジションなのかなと。リハーサルでディーンさんと合わせてやらせていただいたんですけれど、そこですごくキャラクターを掴めたので、少し骨太なストーリーですけれど、その中にキャラクターのチャーミングさや軽快な掛け合いを混ぜて、クスッと笑えるような作風になるのかなと思っています。


ーーチャーミングさというところはどのような?


岩田:第1話を見ると、若宮は基本的に能動的に動くタイプではない人間なんです。なのでとにかく振り回される。リアクションばっかりしているので、表情豊かなキャラになっています。ある意味視聴者の方が、感情移入しやすいのが若宮であり、モノローグは全部若宮の声で進んでいくので、一番“普通の人”でないといけない。その振り回されている感じに笑ってもらえたらいいなと思います。僕としてもそういう部分も意識しながら、大げさにやっていたり、いろいろ試しながら監督と相談して演じています。


ーーディーン・フジオカさん演じるシャーロックの魅力を教えてください。


岩田:シャーロックは、マイペースで頭が切れて、人の2歩3歩どころか、10歩くらい先を歩いている人です。それでいて、頭が良すぎるせいで天然に見えるようなキャラクターだと思います。そういう天然なシャーロックをディーンさんが演じるのはすごく魅力的だなと思うんです。僕の印象ですけれど、ディーンさんはすごく品があって凛としているイメージで、お話していても素敵な方だなと感じます。そんな方がちょっとすっとぼけていて、天然ボケなところもあって、そこに対して僕が食い気味でツッコミを入れていく感じなので、バディ感がより強まっていくとドラマも楽しくなるかなという実感はあります。


ーー岩田さんは、本作が月9初出演になります。


岩田:僕の連ドラデビュー作がフジテレビの『ディア・シスター』(2014年)で、今回その時と同じスタジオを使っているんです。前室の雰囲気も変わっておらず、再び帰ってきたのが、月9で『シャーロック』でワトソンを演じて、と2周くらいしてきたような気持ちがあります。すごく嬉しい気持ちはありますけれど、それだけ多くの方が見る枠でもあるので、楽しめたら一番いいなと思っています。客観的に考えすぎて楽しくなくなっちゃうのが一番もったいないので、チャンスをいただいたからには、昔はできなかったことに挑戦していきたいです。


ーー昔はできなかったというのは?


岩田:表現力ということだと思うんですが、演技の経験を重ねてきて、想像できるようになってきた部分があります。「このシーンは多分こう動くんだろうな」、「こういう感じなんだろうな」と、台本を読んで想像ができるようになってきた自分がいるので、それを思いっきりの大舞台でチャレンジさせていただいています。


ーーなぜ想像できるようになったのでしょう。


岩田:台本を読み込むことかもしれないですね。例えば「わかった」というセリフがあっても、昔だと、そのまんま読んで喋って、監督に指摘を受けて、説明を受けてあらためてその言葉が物語において果たす役割を考えていた。今は色々なパターンを思い浮かべながら現場に入れます。5年前とは大違いですよね。今、現場がすごく楽しいんです。段取りで色々やって、違うこともあればハマることもあるし、余裕はないんですけれど、現場での遊びみたいなことも第1話から試せています。


ーー世界中で映像化されている『シャーロック・ホームズ』ですが、今作ならではの見どころを教えてください。


岩田:今回「アントールド・ストーリーズ」とサブタイトルがついており、原作では深く語られていない事件やキーワードに着想を得て今回のストーリーが作られています。ただ、舞台は令和の東京なので、大筋は原作をリスペクトしつつも、井上(由美子)さんがディティールの部分をオリジナルで描き上げていて、すごく見応えがある骨太な作品です。題材はヘビーで今の時代だからこそ起きてしまうような事件を取り扱っているので、それをあまり辛気臭くならずに、しっかりエンターテインメントにする味付けを西谷(弘)監督が考えてくださっていて、だからすごくいいバランスで様々な要素が入っているドラマになるんじゃないのかなと思っています。


ーー岩田さんご自身はシャーロックとワトソンどちらがご自身に近いと思いますか?


岩田:ワトソンだと思います。シャーロックは常人では理解できないある種超越した存在だと思いますけれど、ワトソンはしっかり地に足ついた人間なので。どっちも人間味がありますが、ワトソンの方が共感できる部分は多いかな。きっと視聴者の方のほとんどがそうだと思いますよ(笑)。


(取材・文=安田周平)


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