夏帆×シム・ウンギョンが語る、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』で向き合った“等身大の自分”

0

2019年10月16日 17:01  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

夏帆とシム・ウンギョン(撮影:大和田茉椰)

 「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」にて2016年審査員特別賞に輝いた箱田優子の初監督作『ブルーアワーにぶっ飛ばす』が公開中だ。


 本作の主人公は、東京で日々仕事に明け暮れ、満ち足りた日々を送っているように見えるが、心は荒みきっている30歳の砂田。自由で天真爛漫な秘密の友達・清浦と共に、嫌いな故郷に帰ることになった砂田が、自分自身と向き合っていく。


 主人公の砂田を演じた夏帆と、親友・清浦役を務めたシム・ウンギョンにインタビューを行った。


【写真】『ブルーアワーにぶっ飛ばす』砂田と清浦の登場シーン


■夏帆「“これが今の等身大の私なんだな”と思ってすごく落ち込みました」


ーー砂田という役に関して、夏帆さんが「今まで一番やりたい役に出会えた」だと思ったと聞きました。


夏帆:今の自分の等身大でできる役をやりたいと考えていました。“一番やりたい役”と思えたのも、現場で感じたことで、人には言わないような小さな葛藤や、日々感じている寂しさ、そういう感情を表現できたらいいなと思っていました。


ーー監督が「俳優の背景のようなものが作品にじみ出て欲しい」と言われていたそうですが、どう捉えて演技していましたか。


夏帆:この作品は、箱田さんの実体験が脚本に反映されているのですが、だからといって箱田さんを演じるというわけではなくて、砂田という役が、箱田さんなのか私なのか砂田なのか、その辺の境が曖昧になったら面白いなと考えていました。撮影が進むにつれて、だんだんと、自分なのか、砂田なのか、と感じられるほど、等身大での自分の演技ができたと思っています。


ーーウンギョンさんはどうですか?


シム・ウンギョン(以下、ウンギョン):清浦の言い方も監督にちょっと近いところがあるんです。ただ、言い方を真似したりしたわけじゃなく、色々参考にしたことをどう自分のものとして芝居で出すのかを常に考えていました。監督からアドリブを出して欲しいとのリクエストがあって、やってみたりしたのですが、そこで出てくる2人の自然なキャッチポールを監督は求めていらっしゃったのかなと思います。


ーー夏帆さんは監督とはどういうやりとりを?


夏帆:撮影に入る前に監督と会う機会をいただいて、ご飯を食べに行ったり、お酒を飲みに行きました。プライベートな話や作品に対しての話を、現場でも現場の外でもして、たくさんコミュニケーションをとりました。監督がまずどういう人なのかというのを知りたかったですし、私がどういう人間で日々どういうことを考えているのかも知ってもらいたくて。


ーー実際に映画を見て、何を感じました?


夏帆:1番最初に観た時は「これが今の等身大の私なんだな」と思ってすごく落ち込みました。自分の見たくない汚い部分、ダサいところが映画の中で切り取られいて。けれど、2回目はもうちょっと客観的にこの映画を観ることができて、純粋に面白いなと感じたし、この映画がすごい好きだなって思いました。こういう言い方すると語弊があるかもしれないですけど、ここ最近で仕事した中で1番好きな作品です。


ウンギョン:この作品を見て自分自身を愛することって何だろう? と考えてしまいました。それってなかなかできないことだし、自分のことを考えると恥ずかしいことばかり思い浮かんできますし。でも、それでもそれが私の姿で、そういう足りないところがたくさんある私を自分にどう納得させて、生きていくのかが大人たちの本当の悩みなんだろうなと。『ブルーアワーにぶっ飛ばす』はそういう大人たちの孤独とか寂しさを暖かく見守っている映画だと思います。


夏帆:感じることだったり、刺さる部分ってそれぞれ違うと思うんですけど、これは自分の物語だなと感じてもらえる作品なんじゃないかなと思います。それだけ共感してもらえる作品ができたなと。


■シム・ウンギョン「夏帆さんから刺激をたくさん受けました」


ーーウンギョンさんは、この作品の現場が日本映画初だったそうですね。


ウンギョン:『新聞記者』より撮影が先だったので、全てが新しい経験でした。日本のインディーズ映画の場合、制作期間が作品によって短かったり長かったりすると聞いていましたが、韓国は大体3〜4カ月ぐらいかかるので、今回の『ブルーアワーにぶっ飛ばす』のように2週間ほどで映画を撮るのは最初は想像ができなくて、ちゃんと役に入り込んで芝居ができるか心配もありました。でも、現場の雰囲気があまりにも明るくて楽しく、夏帆さんに寄り添ってもらって心強かったです。真夏の暑さは本当に厳しかったのですが、素晴らしいキャスト、スタッフの方々と一緒で、とても素敵でした。


夏帆:私もウンギョンちゃんがいるとすごい心強かったです。心の拠り所というか、ウンギョンちゃんが現場にいてくれるとすごくリラックスできて。砂田と清浦の関係とちょっと近かったのかなと思います。


 確かにローバジェットで期間も短くて、大変ではあったんですけど、純粋に映画が好きで、いい映画を作ろうという志を持っている人たちが集まった現場でした。とにかくみんないい作品を撮ろうっていう熱量が高くて。そういう場にいられるのはすごく幸せだし、今振り返っても本当にいい現場だったなと思いますね。


ーー共演してお互いの印象はいかがでした?


ウンギョン:以前から夏帆さんの作品を見ていて、特に『海街diary』が好きです。夏帆さんが演じた千佳ちゃんのキャラクターがすごく明るくて、今回の清浦のイメージにも影響を受けています。


夏帆:私も撮影に入る前にウンギョンちゃんの過去作を見ていて、すごい役者さんだなと思っていたので、実際現場でご一緒できるのが怖くもあり、楽しみでもあったんです。実際お芝居してて、アドリブもたくさんあったんですけど、そのどれもが面白くて、ついつい見入ってしまう場面が多くて。今回初めてご一緒してウンギョンちゃんのことがすごく好きになりましたし、現場にいるみんながそうだったんですよね。人を惹きつける魅力のある方だなと思いました。


ウンギョン:夏帆さんのこの作品への熱量は誰よりも強かったと思います。夏帆さんから刺激をたくさん受けました。


 夏帆さんは本当にその劇の中に生きている人みたいに馴染んでくるんです。そういう自然さが俳優として本当に羨ましいですし、刺激を受けました。これまでの作品を見ていて、夏帆さんは余裕を持って芝居をする方だなと思っていたので、一緒に共演して、本当に素晴らしい役者さんだと改めて思いました。


夏帆:ウンギョンちゃんは、すごくスケールが大きいというか、実際に面と向かってお芝居していてもスクリーンからはみ出してるんです。3Dなんじゃないかなって思うぐらい伸びやかで、吸引力みたいなものをすごく感じました。絵に映ってても、次は何するんだろうとついつい目で追ってしまうというか。


ウンギョン:とんでもないです。夏帆さんは細かい芝居が自然で、本当に羨ましいです。


夏帆:すごい褒め合いみたいに(笑)。そんな風に言ってもらえるなんて嬉しいな。


ーーどのシーンも2人のテンポ感が絶妙だなと感じたんですが、お気に入りのシーンはありますか。


ウンギョン:喫茶店のシーンは私の登場シーンで夏帆さんとも初めての芝居だったので、本当にワクワクしました。緊張もしていて、いつの間にか撮影が終わってしまったと感じてしまうくらい(笑)。大事にしてたシーンの中の1つです。その時、夏帆さんとの本格的に演技のやりとりをしましたね。


夏帆:リハーサルはしていたんですけど、2人のシーンの1番はじめがあの喫茶店のシーンだったので、私もウンギョンちゃんも緊張していたんだろうなと思います。でも、あまりシーンを切り取ってどこが好きというより全体の流れで見てるので……すごい難しいな。でもウンギョンちゃんと一緒のシーンはすごい楽しかったなって思う。


ウンギョン:私はほぼ夏帆さんと一緒のシーンしかなかったです。本当にとっても楽しかったです。


(取材・文:大和田茉椰)


    ニュース設定