【F1日本GP無線レビュー】「彼は本当にピットインする?」ボッタス、ハミルトンの執念を危惧も今季3勝目を挙げ6連覇に貢献

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2019年10月17日 14:11  AUTOSPORT web

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2019年F1第17戦日本GPで優勝したバルテリ・ボッタス
日本GPはスタート直後から荒れた。スタートで一瞬クラッチが繋がって動いてしまったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が出遅れ、同じく出遅れたシャルル・ルクレール(フェラーリ)はマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)と接触し両者はマシンに大きなダメージを負った。

フェルスタッペン:一体なんなんだ! アンダーステアを出して僕の横に突っ込んできた。マシンとタイヤをチェックしてくれ

レッドブル:了解。いまのところ信頼性は大丈夫だ、ステイアウトしても大丈夫だ

 フェルスタッペン車はダメージが大きく、15周でレースを諦めなければならなくなった。ターン2への飛び込みがオーバースピードで「僕のミスだった」と認めたルクレールは、フロントウイング交換をめぐってチームとのやりとりにやや混乱があった。

ルクレール:ダメージを負った!

フェラーリ:了解、チェックしているよ

 チームからはシケインの立ち上がりでピットインの指示が出され、ルクレールはピットインが間に合わずステイアウト。

フェラーリ:BOX NOW

ルクレール:どうして? 遅すぎるよ

フェラーリ:了解

 メインストレートでは壊れた左側のフロント翼端板が路面に擦れて激しく火花が出た。

ルイス・ハミルトン(メルセデス):彼は危険だよ、火花がすごく出ている。どうして警告のフラッグを出さないんだ!?

 直後を走るハミルトンはそう言ってレースコントロールに訴えかける。

 だが2周目のセクター1でマシン挙動にそれほど大きな問題がないと判断したルクレールは、チームにこのまま走り続けることを提案する。

ルクレール:もう少し走り続けてみるのはどうだろうか?

フェラーリ:この周BOXする必要がある

ルクレール:了解。でもクルマはそんなに悪くない、かなりOKだ。それでもBOXする?

フェラーリ:BOX NOW

 バックストレートで風圧で大きく振動する左側のミラーを右手で支えながら走行するような状態のルクレールに対し、チームからはピットインの指示が出されていた。ピットインを義務づけるオレンジボールこそ出ていなかったが、レースコントロールからはフェラーリに対してピットインするようインターコムで指示があったからだ。

 だがなぜかシケインの手前になってチームからこの指示が撤回された。

フェラーリ:ステイアウト! ステイアウト!

 そして3周目に再びピットインの指示が出され、ルクレールはピットに戻りフロントウイングを交換して追い上げることになるが、結果的にこの時に走行が元で10秒加算、そして接触に対し5秒加算ペナルティが科されて実質的に優勝争いからは脱落することとなった。

 一方で好スタートでトップに立ったバルテリ・ボッタス(メルセデス)は順調に2番手ベッテル、3番手ハミルトンを引き離していた。台風によって路面がグリーンになったため想定していたよりもタイヤのデグラデーションは大きく、上位勢は2ストップ作戦を念頭においてレースを戦っていた。

メルセデス-ボッタス:良い展開だ。このまま行け

フェラーリ:我々はプランAだ。ボッタスは4.9秒前方

 16周目にベッテルがピットインしてソフトタイヤからソフトタイヤに交換して2ストップであると手の内を明かし、メルセデスAMGはすぐさま翌17周目にボッタスをピットインさせミディアムに交換し、ベッテルの前をキープする。

 この時点でボッタスのベッテルに対する優位はほぼ確定だったが、メルセデスAMGは首位のボッタスには2ストップ、そしてベッテルの後方から追うハミルトンには1ストップ作戦を採らせて両者ともに優勝のチャンスを与えようとしていた。

メルセデス-ボッタス:BOX、BOX。君は1ストップ作戦のハミルトンと戦っている

 しかしこの作戦を成功させるべく第1スティントを引っ張ったハミルトンもタイヤのデグラデーションは思いのほか早くやってきた。21周目にはピットに飛び込み、ボッタスとは僅か4周しかタイヤの差が得られなかった。

ハミルトン:ものすごくデグ(ラデーション)が進んだよ

メルセデス:OK、BOXしよう

 1ストップ作戦がかなりギリギリの線でありリスクが大きいと判断したメルセデスAMGは、ハミルトンを2ストップ作戦に切り替え、2回目のピットストップでオーバーカットで逆転する戦略に出た。

メルセデス-ハミルトン:今P3、ベッテルは2ストップ作戦だ。想定よりもデグラデーションがかなり大きい。1ストップ作戦は失うものが大きそうだ

 ベッテルは31周目にピットインし、ハミルトンはステイアウト。

ハミルトン:タイヤはまだ良い状態だ

メルセデス:ベッテルに対して1.5秒セーフだ

ハミルトン:でもトラフィックに引っかかりそうだ

 当初は逆転が可能だと考えていたが、ピットアウト後のベッテルのペースは良好で、ピットストップでの逆転は難しくなった。そのためハミルトンは第2スティントをさらに引っ張り、ミディアム対ソフトになる最終スティントでベッテルをコース上で抜く作戦に切り替えた。

 逆に首位ボッタスはベッテルに対してさらに大きな優位に立ち、勝利はほぼ確実なものとなった。

メルセデス-ボッタス:今ベッテルに対して10秒セーフだ

 大きなマージンを持ったまま36周目にピットインを済ませて最終スティントへ。ボッタスにとっての脅威はまだステイアウトして前に出たハミルトンだけだったが、すでに伝えられていたとおりハミルトンももう1回のピットインは避けられない状況だった。

 それでもハミルトンの勝利に対する執念を知るボッタスは、彼が1ストップ作戦に賭けるギャンブルに出るのではないかと危惧しているようだった。

ボッタス:レース状況は?

メルセデス:ハミルトンは10秒前方、これからピットインしなければならない

ボッタス:彼は本当にピットインする?

メルセデス:あぁ、間違いない

 ハミルトンは42周目にピットインする。

ハミルトン:彼らに対するオフセット(タイヤエイジの差)は?

メルセデス:ベッテルに9周、ボッタスに4周だ

ハミルトン:ベッテルは僕のウインドウからどのくらい離れている?

メルセデス:4秒だ。プッシュしろ

ハミルトン:タイヤはもうタレてしまっているよ

メルセデス:OK、BOX

 ハミルトンはベッテルの5秒後方に戻り、フレッシュなソフトタイヤで一気に背後に迫る。ハミルトン自身は残り11周で首位ボッタスを追いかけることまで想定していたが、ステイアウトしている間にギャップは広がり、優勝争いは断念せざるを得なかった。

メルセデス:残り11周、高速コーナー用のデフをリセットしろ。ベッテルは5秒前方。11周ユーズドのタイヤだ

ハミルトン:ボッタスまではどのくらい?

メルセデス:ボッタスは15秒前方だ

 それどころか目の前のベッテルをなかなか攻略できず、両者ともに持てるパワーを出し切って死闘を演じた。

フェラーリ:スパーク4、パフォーマンスを向上させる

ハミルトン:もっとパワーが必要だ!

 そしてボッタスがトップでチェッカードフラッグを受け、ハミルトンは3位のままフィニッシュ。それでも久々にメルセデスAMGの横綱相撲が展開され、6年連続となるコンストラクターズタイトル獲得が決まった。

メルセデス:イエス、バルテリ! やったぞ!

ボッタス:オーホホホホ! イエス!! みんなありがとう

メルセデス:キートス

ボッタス:コンストラクターズはどうだった?

メルセデス:最終順位は君、ベッテル、ハミルトン、(アレクサンダー)アルボン、ルクレール

トト・ウォルフ:バルテリ、トトだ。おめでとう。6年連続のコンストラクターズチャンピオンシップ獲得だ。みんなありがとう

ボッタス:みんなおめでとう。6連覇というのは本当に素晴らしい結果だ

ウォルフ:ありがとう、本当に素晴らしいチームだよ

 6連覇という偉業を達成したその原動力が、まさしく隅々まで体現された日本GPだったと言えるだろう。

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