【津川哲夫F1私的メカチェック】追い詰められてきた王者メルセデスを象徴するかのようなW10の“のど元エアロ”の変化

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2019年10月21日 06:41  AUTOSPORT web

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F1日本GP鈴鹿で撮影されたメルセデスW10の左サイドポッド(ポンツーン)下のエアロ
F1マシンのエアロダイナミクスの出発点はもちろん、フロントウイングとノーズ先端になる。そこから、マシンの上面に下面、そしてサイドに分散されていくが、そのなかでももっとも注目されているのがコクピット下側、つまりF1の喉元の空気流だ。

 ノーズ下の空気流がバージボードとコクピット下面に囲まれたトンネル部と、バージボードの上中下のエリアで動線が違うこととその意味を前回のこのコラムで解析してきたが、今回はその両サイドポッドへの出口、フロアフロント部から後方への空気流について見てみたい。

 写真はメルセデスのフロアフロントエンドをリヤ側の後方、つまり空気の出口側から観たもの。

 ステップフロアのリーディングエッジを後方から観ると、いかに上方にまくれているかがわかる。リーディングエッジに許された曲率半径を目一杯使い、その先端部を限界まで持ち上げて、ステップフロア下面に大量の空気流を送り込む努力が見える。

 この狙いはどのチームも同じだが、メルセデスのそれはもっともまくれ上がっているマシンのひとつだ。W10のエアロはライドハイトの前後変化が少なく、フロアと路面との角度が一定を保つような方向のデザインになっている。

 常に同じレベルのダウンフォースをフロアから得るコンセプトのため、床下空気流の確保はレーキエアロ組よりも重要となるわけだ。

 レッドブル・ホンダのRB15など、レーキ(マシンを前傾姿勢させるコンセプト)組はドラッグの増加を考えなければレーキ角の変化を利用してダウンフォースのレベルを意図的に変化させることが可能だが、メルセデス型はダウンフォースが安定していても、状況に応じた意図的な制御は難しい。

 したがって、常に大容量のダウンフォースを床下で得るために大量の空気流確保が必要だ。これまでは強力なパワーユニットの恩恵によるパワーアドバンテージがあったことで、ダウンフォースの増加要求をウイング等で補い、ドラッグの増加はパワーで補ってきた。

 しかし他チームのパワーユニットの進化が急速で、これまでのようにオーバーダウンフォースでの凄まじいコーナリングではドラッグが大きく、トップスピードで引けを取るようになった。

 そのため、それまでのハイダウンフォースはフロア下面の空気流を増量させて賄い、サイドフェンスのブラインドシャッター化などで効率向上を目指し、サイドポッドのエントリーダクト周りのドラッグはスラットウイングや縦置きボーダフィンなどの変更で空気効率を向上させてきた。

 終盤戦のメルセデスW10のエアロアップデート、フロアフロント、バージボードそしてポッドエントリー部に、王者マシンが若干追い詰められてきた感が垣間見える、そんな気がするのだ。

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