豪州SCバサースト1000:疑惑の”チームオーダー”で審議継続も、王者マクローリンが初勝利

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2019年10月21日 13:51  AUTOSPORT web

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DJRチーム・ペンスキーのフォード・マスタングと、王者スコット・マクローリン/アレクサンダー・プレマ組がバサースト1000初勝利
VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第12戦となるだけでなく、世界的な名声も博しているシリーズ最大の祭典『バサースト1000』が10月10〜13日の週末に開催され、リザルト上は今季を席巻してきたDJRチーム・ペンスキーのフォード・マスタングと、王者スコット・マクローリン/アレクサンダー・プレマ組が勝利。しかし終盤のポジション争いに際し、規定で禁止されている「チームオーダーを発動した」との疑惑が持ち上がり、最終結果は暫定のままという異例の事態となっている。

 シーズン終盤戦のレース距離800マイル(約500km)越えのイベントに課される“エンデューロ・カップ”の開幕戦となり、セカンド登録ドライバーとともにドライバー交代を伴う耐久色の濃い1戦は、ライバル勢から勝者に対して「シリーズの信用に傷をつけた」との厳しい声が上がる、後味の悪い結末となった。

 2019年を象徴するように、今季デビューのフォード・マスタングがここマウントパノラマでも速さを見せつけ、木曜のプラクティスからコースレコードを更新。その中心にいたのが、ポイントスタンディングを独走する17号車マクローリンとDJRチーム・ペンスキーだった。

 その勢いは土曜の予選でも遺憾なく発揮され、マクローリンが自身2度目となるバサーストでのポールポジションを獲得。フロントロウ2番手にも同じくティックフォード陣営のチャズ・モスタートが並び、その背後にキャメロン・ウォーターズも続いてマスタングがトップ3を独占した。

 一方、プラクティスでクラッシュを喫していた"セブンタイムス・チャンピオン"ことジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)がファクトリーチームの意地を見せ4番手。そのチームメイトであるSVGこと2016年王者のシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが5番手に続き、レッドブル・レーシング・オーストラリア勢がフォード追撃の包囲網を整える、いつもの展開となった。

 迎えた日曜正午前のスタート以降は、このバサースト1000が今季初レースとなるセカンドドライバーの力量や各陣営のピット戦略、燃料給油タイミングやタイヤ交換に伴うレースペースのマネジメントで、めまぐるしくポジションが入れ替わるも、首位を行くのは常にマスタング。

 チャズ・モスタート/ジェームス・モファット組や、DJRの12号車ファビアン・クルサード/トニー・ダルベルト組らマスタング勢が首位をキープし、さらにトップ10圏内ではイベント直前にドラッグ低減の性能調整を受けたケリー・レーシングのニッサン・アルティマ勢も混じってのタイムバトルが展開されていく。

 するとレース終盤、161ラップのチェッカーまで残り30周を迎えた時点で888号車ジェイミー・ウインカップ/クレイグ・ラウンズ組が首位に立ったところで最終スティントが近づいてくると、優勝争いは燃費走行組とセーフティカー出動タイミングがカギを握る、頭脳戦の様相を呈してくる。

 この日、再三出動のセーフティカーが明けた130周目のリスタートでウインカップがリードを守るも、彼の888号車はトリプルエイト・レースエンジニアリングの戦略により極端な燃費走行を強いられており、背後に迫る2台のDJRチーム・ペンスキー勢が優位な燃調マッピングでみるみる差を縮めてくる。

 さらにその背後では、TCRオーストラリアにも参戦中のアンドレ・ハイムガートナーとブライス・フルウッド組のニッサン・アルティマが先頭集団に追いつき、GRM(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ)のジェームス・ゴールディン/リチャード・マスカット組を抑え4番手を守る好走を見せる。

 さらにニッサン陣営のもう1台、5番手を走るエースのリック・ケリー/デイル・ウッド組も、SVGとガース・タンダーの97号車を6番手に封じるなど、マスタング、コモドア、アルティマが全く異なるペースでトラック上での周回を重ねていく。

 すると最後のピットウインドウが近づいた135周目。ワイルドカード枠で「夢のバサースト1000」にチャレンジしていた北米インディカーのスター・ペア、アレクサンダー・ロッシ/ジェームズ・ヒンチクリフ組の27号車が、ここまでの力走もむなしくマーレイ・コーナーでグラベルトラップに捕まり、再びのセーフティカー導入に。

 これがトリガーとなり上位勢は一気にピットへ向かうと、首位888号車ウインカップと2番手17号車マクローリンは同時にボックスへと入り、3番手を走っていた12号車のクルサードは"ダブル・スタッキング"と呼ばれるピットロード作業待ちを避けるべく、コース上を極端なスローペースで走行し、後続の燃費走行組は我慢のレースペースで築いたトラックポジションを台無しにされ、大混乱に陥ることに。

 DJR陣営の無線では「エンジンの水温が異常値を示している、速度を抑えてピットに戻れ」との内容だったが、これが実質的なチームオーダーだとしてレース後のライバル陣営から規定違反の審議依頼が出され、レース後のパドックは紛糾する事態に。

 セーフティカーピリオド中の隊列維持違反でクルサードにはレース中にドライブスルー・ペナルティが課されトップ10圏外へと脱落し、残り周回に向け再びバトルが再開されると、マクローリンに対しては燃料セーブの指示が飛び、「このままセーフティカーなしだとガソリンは最後まで保たない」との無線が入り、首位ウインカップとの差はみるみる開いていく。

 しかし残り10周。1コーナーのアクシデントでついにセーフティカーが入ると、ここでスプラッシュ&ゴーを決断した888号車ウインカップに対し、マクローリンはなんとステイアウトを選択。セーフティカー中スロー走行でのガス欠回避に賭けると、153周目のリスタート以降は同じ戦略で追いすがった97号車SVGと、WAU(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)のジェームス・コートニー(/ジャック・パーキンス組)をなんとか抑え切る。

 そしてフィニッシュ目前。ニッサンのハイムガートナー組のクラッシュによる、この日最後のセーフティカーが明けた161周目のスプリントも制した、DJR組の17号車マスタングがトップチェッカー。王者マクローリンが、マウントパノラマで待望の初勝利を飾った。

 チェッカー後にチームオーダーの件を問われたマクローリンは「レース後記者会見まで、その件に関してはまるで知らなかったんだ。僕らは速いマシンを持っていて、レースにも勝ったけれど……それに関しては少し整理してみる必要がありそうだ」とコメント。

 スチュワードもこの件について「スポーティングレギュレーションD24.1項、チームオーダーの禁止に該当する可能性がある」との声明を発表して事態の調査に乗り出しており、続く第13戦ゴールドコースト600までの間に、ポイント剥奪か、金銭的罰金かのペナルティは避けられないものと見られている。

 その裁定決定を前にした現時点では、スコット・マクローリン/アレクサンダー・プレマ組が"エンデューロ・カップ"をリードするとともに、ドライバーズランキングでもマクローリンが3308ポイントの独走態勢をキープ。2位に2686ポイントのSVG、3位に2521ポイントのクルサード、そしてこのレースで4位に終わったウインカップは2380ポイントのランク5位となっている。

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