ついに掴んだ頂点の座。日本の國分諒汰がグランツーリスモ・ワールドツアー第5戦を制す【大串信の私的レポート】

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2019年11月11日 14:21  AUTOSPORT web

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地元日本で優勝を果たした國分諒汰、右はグランツーリスモシリーズプロデューサーの山内一典氏
FIAグランツーリスモ選手権ワールドツアー第5戦、東京大会がモーターショー開催中の東京お台場メガウェブ特設会場で行われた。日本国内でワールドツアーが開催されるのはこれが初めてのこと。

 イベント冒頭、グランツーリスモシリーズの山内一典プロデューサーは世界中から選抜されて集まった選手たちを前に「皆さんにしかできないレースがあります。それを見せてください」と開会の挨拶をした。

 世界一のドライバーを決定するネイションズカップ予選には、オンライン予選で勝ち上がった24名の選手が出走した。

 前回のネイションズカップ優勝者であるドイツのミカエル・ヒザルをはじめ、開幕戦で優勝したチリのニコラス・ルビラー、オーストラリアのコディ・ニコラ・ラトコフスキー、スペインのコッキー・ロペス、日本の宮園拓真、國分諒汰ら、ワールドツアーお馴染みの強豪が名を連ねた。

 ワールドチャンピオンのイゴール・フラガは、すでにワールドファイナル出場権を確保しているため今回はネイションズカップ出走を見合わせた。

 予選の結果、伏兵アドリアーノ・カラッツァ(ブラジル)がポールポジションを獲得、國分、ロペス、ラトコフスキー、ルビラーが上位につけた。前回2位に入賞した日本期待の宮園は地元を意識しすぎたか9番手に終わり、ヒザル、ロペスは予選落ちするという番狂わせとなった。

 決勝レースは、ワールドツアー史上もっとも熱い闘いとなった。コースはル・マン24時間レースが行われるサルトサーキットのフルコース8周、使用車両は1980年代1500ccターボ時代のF1をモデルにした『F1500T-A』と、リアルのレースで観たかったと思わせる設定である。

 タイヤはソフト、ミディアム、ハードの3種類を使わなければならない規則だが、このコースではタイム差はそれほど生じない。

 スタート合図とともに予選1番手と2番手のカラッツァと國分のバトルが始まった。タイヤはふたりともソフトでスタートしている。國分はスリップストリームを効かせて1周目のミュルサンヌ立ち上がりでカラッツァをかわしトップに立ったが、2周目に入ってオーバーランをしてしまいカラッツァ、ロペスに次ぐ3番手へ順位を落とした。

 國分の背後にはミディアムでスタートしたルビラーが接近する。宮園は2周でミディアムを捨て、ハード2周、ソフト4周と割り振る奇策に出た。

 國分はタイヤを労るロペスを3周目に抜き2番手に復帰すると3周目にロペスとともにピットインしてミディアムに交換した。一方トップを走るカラッツァはソフトのまま4周を走ってミディアムに交換した。

 レースの折り返しを迎えてカラッツァがトップ、1秒遅れて國分が続き、國分に迫っていたロペスはインカットのペナルティを受けて後退した。先頭のカラッツァはきわめてスムーズな走りを展開、國分を引き離しにかかった。

 残り2周となったところでトップ3は一斉にピットイン、ハードタイヤに交換して勝負に出た。國分は燃料補給を最小限にしてカラッツァより先にコースへ復帰、トップに立った。残るは2周、戦いのポイントは燃料消費だった。

 國分はすぐ背後に食らいつくカラッツァを意識しすぎたかなんと4輪脱輪のミスを犯しペナルティを受けてしまう。ユノディエールで減速ペナルティを消化する間にカラッツァがトップを奪い、勝負はあったかに見えた。

 國分はからくも2番手を守るがすぐ背後にロペスが迫る。國分とロペスが牽制しあう間に、例によってラトコフスキーと宮園がじりじりと近づいてきた。

 7周目が終わるシケインで場内を沸かせる場面が訪れた。ロペスとラトコフスキーが交錯しスピードが落ちている間に、ソフトタイヤを履く宮園がアウトから一気にロペスとラトコフスキーをかわして3番手に進出したのだ。ファイナルラップに入った時点でトップはカラッツァ、1秒7後方に國分、さらに4秒2置いて宮園が続く。

 トップを走るカラッツァはプレッシャーに負けたかテルトル・ルージュで4輪脱輪のミスを犯す。ユノディエールで國分は一気にカラッツァとの間隔を縮めトップに立った。しかしカラッツァはあきらめず國分の背後につけてスリップストリームを使うとミュルサンヌの飛び込みで國分に迫りまたもやトップを奪い返した。勝負はついたかに見えた。

 ところが國分はあきらめずカラッツァに食らいつきインディアナポリスへ向けてスリップストリームに入るとカラッツァに襲いかかり自分のスペースをこじ開けてトップに立った。カラッツァは動揺したかアルナージュでオーバーラン。それでも力を振り絞り國分を追った。國分にはもう燃料が残っておらずカラッツァを突き放す余力がなかったのだ。

 カラッツァはフォードシケインで最後の勝負に出て國分のアウト側へ飛び込んだ。しかし國分も最後の力を振り絞ってこれを封じこめ、ギリギリの状況でフィニッシュラインを駆け抜けた。日本選手として初めてワールドツアーを制した瞬間だった。

 各選手たちがシートに座り続ける國分に飛びついた。これまで、その速さは認められながら予選でミスを繰り返してきた國分がついに勝った。國分は国籍を超えた祝福に包まれたのである。2位にはカラッツァ。國分もカラッツァもフィニッシュしたときには燃料が空の状態だった。すべてを出し尽くしたワールドツアー史に刻まれる名勝負であった。

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