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佐藤健×鈴木亮平×松岡茉優×白石和彌監督『ひとよ』座談会 撮影現場の裏側から仕事に対する姿勢まで

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2019年11月14日 12:01  リアルサウンド

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リアルサウンド

写真(左から)鈴木亮平、白石和彌、佐藤健、松岡茉優(撮影:服部健太郎)
(左から)鈴木亮平、白石和彌、佐藤健、松岡茉優(撮影:服部健太郎)

 佐藤健主演映画『ひとよ』が11月8日より公開中だ。『凶悪』『孤狼の血』の白石和彌監督の最新作となる本作は、“家族の絆”の歓びと哀しみを描いたヒューマンドラマ。ある事件によって崩壊した母親とその子供たち三兄妹からなる家族が、15年後に再会し、再び絆を取り戻そうともがく姿が描かれる。


参考:田中裕子がいなければ企画中止だった!? 『ひとよ』佐藤健、白石和彌監督らが明かす名女優の風格


 今回リアルサウンド映画部では、崩壊した家族の三兄妹、次男・雄二役を演じた佐藤、長男・大樹を演じた鈴木亮平、末っ子の妹・園子を演じた松岡茉優、そして白石監督の4名にインタビュー。役作りや撮影現場でのエピソードから、それぞれの仕事に対する考え方まで、じっくりと語ってもらった。


ーーこれまで疑似家族のような関係性を映画で描いてきた白石監督が、本当の家族を描くのは今回が初めてですよね。


白石和彌(以下、白石):そうですね。家族を描くというのがどういうことなのかは、ちゃんと意識しました。それは逆に構えちゃうところもあったくらいだったと思います。


ーー家族を描く上で、誰がどの役を演じるかは重要な要素のひとつだったと思います。キャスティングはどのように決めていったのでしょう?


白石:そうですね。キーになるのは母親のこはるだったので、まずはお母さんを決めないといけないということで、(田中)裕子さんにオファーをしました。こはる役に裕子さんが決まらないことには進まないなと思っていたのですが、無事やっていただけることになったので、じゃあ三兄妹をどうしようかと。雄二は感情を表に出さないんだけど、家族のことを一番熱く思っているキャラクターだったので、それは健くんにお願いしたいなと思いました。健くんに関しては、普段から「今どんなことやってるのかな」と新作が出るたびに観ていたんです。それはこのメンバーだけじゃなくて、常日頃からいろんなアンテナを張っているつもりではあるんですけど、こういう湿度の高い家族って、皆さんあまりやられている印象がなかったので、だからこそいい粘着力になるタイミングがそれぞれあるんじゃないかと感じていました。


ーー皆さん白石監督に対してはどのような印象を抱いていましたか?


佐藤健(以下、佐藤):白石監督とは、ぜひどこかでご一緒したいと思っていました。シンプルに作品が面白いんですよね。これだけたくさん作品を発表しているのに、全ての作品が面白い。やっぱりすごく才能がある方なんだろうなと思っていましたし、作品のトーンや色味も僕のすごく好きなタイプです。だから、自分が関わっていなくても、白石監督作品はこれからもずっと観ていくだろうとは思っていました。


鈴木亮平(以下、鈴木):作品が全部“強い”ですよね。エンタメかつ軽いところもあるんですけど、激しさもあって、白石監督作品にしかないパワーがある。僕自身、強い映画が好きなので、そういう映画に出たいという思いがあるんです。今回のお話が来る前から、事務所に「白石監督作品に出たい!」と言っていったぐらいですから。


松岡茉優(以下、松岡):私もずっと白石監督作品に出たいと思っていました。でも、私は出たいというよりはファンのほうに近かったかもしれません。自分が出てどうこうというよりは、作品が好きだから新作を楽しみにしていたんです。でも、白石監督は俳優の“悪いところ”を撮ってくれる方だと思ったので、それがすごく楽しみでした。


ーー“悪いところ”というと?


松岡:人って基本的に悪いところの方が多い気がしていて。長所よりも短所の方が多いというか。私は役の長所よりも短所の方が好きで、そっちのほうがよく見えるから嬉しかったんです。だから、現場では足し算より引き算で、余計なことをしないというイメージでした。


ーー実際に現場に入ってみて、それまでの白石監督のイメージと違ったことはありましたか?


松岡:めっちゃ優しかったです。


鈴木:平和でしたね。


ーーもっと厳しいイメージがあった?


松岡:はい。しごかれるつもりで行ったんですけど、気づけばマーベルの話しかしていなかったです(笑)。


鈴木:スタッフも役者も「おらぁ! いくぞ!」みたいな感じなのかと思っていたら、全然平和でしたね。


白石:パワハラとか禁止にしてるんで(笑)。


佐藤:僕も演技のことをもっと言われるのかなと思っていたんですけど、全然そんなことなくて。現場と作品でかなりギャップのある組だと思います。


白石:そうなのかなぁ。僕自身のスタンスは変わらず、常に緊張感を持ってやっているつもりではあるんですけどね。演出に関しても、これだけの俳優が揃っていますから、それは安心してお任せできる。もちろん変なところがあれば言いますよ。


鈴木:僕らが与えられた環境で好きにやってみたのを監督に見てもらって、それを監督が調整してくれて、1番いいように撮ってくれる。そういうイメージでしたね。


松岡:だからたまに言われるとドキッとするんですよ。「あっ、そりゃそうだ! ごめんなさい」という気持ちになるんです。自分の詰めの甘さに気づくというか……。


佐藤:あれっ、そんな感じだったっけ?(笑)


松岡:いや、ほんとに!(笑)。私自身はいつもベラベラ喋っておりましたけども、言われた時には「うわ!」ってなっていましたよ。


ーー具体的にはどういう……?


松岡:しっかり覚えているのはクランクインの日。緊張していたのもあるし、どういう感じで行くのかなと探っていたのもあって、大きな声で喋ってたんですよ。そしたら監督から「園子!」って結構大きな声で言われて、それで静かにしようと思いました。


一同:(笑)。


佐藤:ただ私語を注意されただけじゃん(笑)。


鈴木:現場での言い方の問題だよね(笑)。


松岡:「園子!」の言い方が初日の私には怖かったんです。「あ、ごめんなさい!」って感じでした(笑)。


白石:いや、全然覚えてないわ(笑)。


一同:(笑)。


ーー佐藤さんは白石監督とのやり取りで印象に残っていることはありますか?


佐藤:それこそもっと細かく芝居をつけられるのかなって思っていたんですけど、それがなくて驚いたというのが一番ですね。でも、随所随所ですごくセンスのいいセリフを付け足してくれたりするんですよ。そこがリアリティに繋がっていったような気がします。


ーー今回は現場で役を作っていく部分が多かったそうですね。


佐藤:そうですね。今回の作品は特にそういう部分が強かったです。まず、自分が何かしないといけないという気負いがありませんでした。それは脚本が面白いというのもあるし、このキャストと白石組ということで、自分は存在だけしていれば、それでいいなと思えました。それだけでいい映画になるなという確信が持てたのは大きかったですね。


ーー鈴木さんと佐藤さんは、2015年に放送された『天皇の料理番』(TBS系)に続いて2度目の兄弟役です。


佐藤:『天皇の料理番』での共演があったから、かなり初期の段階から抵抗感なく兄弟という関係性を築けたと思います。


鈴木:これだけ体のサイズも違うので、初めてだったら「本当に兄弟に見えるのか」と結構気になったかもしれませんが、もう既に1回やっていたので、自然に役に入れました。それと、前の現場での絶対的な信頼感が主演の健にあったので、それも大きかったですね。茉優ちゃんもすごくセンスを持っている役者なので、いきなり3人でやったところから、ふわっと呼吸が合って、一体感が生まれたような気がします。


松岡:ちゃんと血縁者に見えないといけないので、私はそこに気をつけました。いい年の男女ですから、作品が違えば夫婦や恋人に見える可能性もある分、2人の前では特に、“女性”を捨てるというか……。


鈴木:気をつけてたんだ。


松岡:気をつけていました。2人の前では、父や親戚と話すような感覚でいましたね。だから、ずっと距離が近くても「近い」と思われないようにするにはどうしたらいいのかを考えていました。


鈴木:たしかに全然色気を感じなかった。


松岡:いや、それはそれで困る!(笑)。


ーー今回の『ひとよ』もそうですが、白石監督の作品では、生きづらさを抱えた人たちの姿が描かれます。日本だけでなく、世界を見渡してみても家族を描いた作品が増えているように感じます。


白石:そうですね。ただ僕は、映画でできることとか、そんなたいそうなことは考えていないんです。ただやろうとしているテーマを掘り下げていったら、描かざるを得なくなっていく。そういうことが蓄積されているんだと思います。日本が世界と違うのは、直接的な紛争や難民問題がないこと。イスラエル映画が世界で強かったりするのは、やっぱりそこに戦争や難民問題があるからだと思うんです。でも、ないから描かないということではなくて、だからこそ普遍的なものに向かっていったりという、テーマの取捨選択があるんですよね。世の中全て地続きなので、そういうことを描いていない日本映画の方が単純に問題だと思います。やっぱり、たとえ娯楽映画でもそういうことを描かざるを得ないのが映画なんですけど、それができていない今の日本映画はどうなんだろうというのは常に考えています。


ーーそれこそ現場で話をしていたというマーベルの作品とかもそうですよね。


白石:人種の問題とかをちゃんと描いているわけですからね。日本も本当はそうあるべきだと思います。「映画は社会を映す鏡」とよく言われますけど、今の日本映画の現状を見ると、そういうことに興味がないことの皮肉とも取れるので、作り手としてはそれを変えていきたいなとは思います。


ーーキャストの皆さんはそういうことを考えたりすることはあるんですか?


松岡:昔、ドラマで引きこもりの女の子の役をした時に、最終話間近になって、一通の手紙が届いたんですよ。「私は学校に行ってないけど、(ドラマを見て)部屋から出てみようと思いました」って書いてあって。どこかで誰かを救いたいと思いながらこの仕事をさせていただいているわけですけど、そういう瞬間って本当に訪れるんだってその時に感激したんです。お医者さんみたいに直接命を救えるわけじゃないけれど、世の中で生きづらい人たちに、もっと生きてみようって思ってもらえるお手伝いがしたいとはずっと思っているんです。今回の『ひとよ』でも、家族に対して複雑な思いがある人に許されてほしいと思いながら撮影していましたし、「家族ってそういうものだよね」と思ってもらいたい。私の周りにもうまく生きられない人はたくさんいるので、そういう思いは常にあります。だから、ちょっとだけでも明日が生きやすくなるような作品に携わっていきたいなと。それは直接的にお芝居とも繋がっている気がします。


鈴木:僕はエンターテインメント、フィクションの世界っていうのは、それだけで心が癒される効果があると思ってるんです。すごく重い話とか傷ついた人たちの話でも、似たような傷を持っている人たちが、自分の苦しみを体現してくれている人を客観的に見ることで、すごく癒されることがあると思うんですよ。だからこそ僕らは、本当に同じ思いまではたどり着けなかったとしても、そこに近づくためになるべく努力はするべきだと思うし、それが好きだから僕もやっているんですけど、結果的に、作品を観てくれる人にもいい影響を与えるんじゃないかなと。僕は監督でもないし、脚本を書くわけでもないので、作品が世界を変えるというような大それたことは思っていないですけど、僕自身はすごくつらい時に映画を観るんです。そこからすごく勇気をもらえることが多いので、それに恥じないパフォーマンスを今後も続けていきたいです。


佐藤:結果として社会に何か影響を与えられるような作品に出られたらいいなと思うのは当然ありますが、僕の今のモチベーションとしては、そういうことをあらかじめ考えることはなくて。自分がやりたいことがあるから、まずはそっちを全力で人生をかけてやった上で、社会にとって必要な、社会に向けてこういう作品を作ろうというフェーズにたどり着けたらいいなと思っています。(取材・文=宮川翔)


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