韓国でエンタメ社会派映画が生まれる理由とは? 過去の“失敗”に迫る『国家が破産する日』の凄み

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2019年11月17日 10:21  リアルサウンド

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写真(c)2018 ZIP CINEMA, CJ ENM CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
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 現在公開中の韓国映画『国家が破産する日』は、1997年に韓国で起こったIMF危機について描いた作品だ。


 IMF危機以前の韓国は上り調子であった。住宅建設が盛んに行われ、1988年には韓国で初のソウルオリンピックが開催され、国民所得も上がり、1996年にはOECDにも加盟もするなど、経済も上向きであったと映画では描かれる。ユ・アイン演じるジョンハクの働く銀行では、内定を勝ち取った大学生が企業に囲い込まれるシーンもあり、まるで日本のバブル期のようにも見えてくる。


 しかし、1997年に入ると日本のバブル崩壊のように、韓国でも突然企業が続々と経営難で倒産しはじめ、海外の投資家も撤退するなどの出来事が相次ぐ。韓国の通貨が危機に陥ったのだ。この詳細については、ユ・アインが劇中、ボードを使って説明しているので見ていただきたい。


 そもそも、IMF危機というと、最近では日本でもベストセラーとなり、チョン・ユミとコン・ユという、『トガニ 幼き瞳の告発』(2011)、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2017)コンビで映画化されたことでも話題の『82年生まれ、キム・ジヨン』(著者: チョ・ナムジュ)でも記述があり、気になっていた人もいるのではないだろうか。


 筆者も、IMF危機をきっかけに韓国が変わろうとした過去があり、そのことによって韓流ドラマや、K-POPなどのエンターテインメント産業が隆盛したことなどは知っていたが(韓国映画がその流れとは違うのは、本稿に書くような別のことが理由と思われる)、ここまで詳細にわたり、その裏で何が起こっていたのかということは、本作を見るまで知らなかった。


 『国家が破産する日』のように、韓国では実際に起こった出来事を描く社会的な作品が昨今は多いし、韓国映画といえば、「社会派」というイメージを持つも人も多くなっているのではないだろうか。


 そこには、『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『1987、ある闘いの真実』などが2018年に日本で立て続けに公開されたこともあるだろう。


 しかし、以前からコンスタントに社会派の作品が多かったかというと、そうではなかったように思う。もちろん、南北問題を描いた作品などはあったが、そこは社会的な問題提起というよりは、南北問題を背景にして友情や愛、絆を描く物語も多かった。また、軍事政権時代を描いた『光州5.18』(2007)や、ポン・ジュノやイ・チャンドンのような作家性のある監督の作品にも社会性のあるテーマのものはあったが、昨今のように、“エンターテインメント作品”として、一年に何本も作られる状況ではなかったのではないか。


 現在のような社会派作品が量産されるようになった流れの中には、ソン・ガンホが主演で実際の軍事政権時代の冤罪事件をもとに作られた『弁護人』(2013)や、韓国のリアルタイムでの財閥問題とシンクロした『ベテラン』(2015)などが初期にあったのではないかと思われる。


 その後、ソン・ガンホはパク・クネ政権から、「ブラック・リスト」に入れられていたのは、よく知られる話である。パク・クネ政権時にセウォル号の事実を描いた『ダイビング・ベル セウォル号の真実』(2014年)が釜山映画祭で釜山市長からの中止要請があった(のちに映画祭では公開されたが、映画人のボイコットも数年間にわたり行われた)ことと時を同じくして、社会的な問題意義を持った作品が数多く作られるようになったと見受けられる。


 それらの作品が、冒頭でも書いたように『タクシー運転手』や『1987、ある闘いの真実』、もしくは若い検事が韓国の実際の政権交代に翻弄されるフィクションの『ザ・キング』(2017)であったのだ。しかし、映画祭での上映中止と公開、社会への疑問の高まりによる作品作りと聞くと、何か現在の日本の状況にも重なって感じられる。だが、日本ではいまだに怒りをあいまいにしたり、「中立である」と断った上で作られていることが多いのではないか。


 韓国では『国家が破産する日』を見ても、あきらかに社会の中のおかしな状況に対しての「怒り」が包み隠さずに描かれているし、過去の失敗の本質をつきとめるのが映画の役割であると考えているように思えてくる。実際に失敗の本質に迫っているもののほうが、エンターテインメントとしての完成度もおのずと高くなるのではないか。


 失敗を見つめて前に進むことをあきらめずに、なんとか少しでも自分たちの暮らしが良くなることを願っていることがストレートに描かれている。だから、観ていて胸が熱くなる。こうした社会派の作品の中のいくつかは、人口およそ5000万人の韓国で、1000万人以上の人に見られているのだから、韓国での危機意識がいかに広く共有されているかということに驚かされるのだ。(西森路代)


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