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【インタビュー】『ドクター・スリープ』監督、キングとキューブリックに敬意を払い新たな挑戦へ

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2019年11月28日 08:22  cinemacafe.net

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写真『ドクター・スリープ』マイク・フラナガン監督 (C)2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved
『ドクター・スリープ』マイク・フラナガン監督 (C)2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved
『シャイニング』から40年後、雪に囲まれた展望ホテルの惨劇で生き残ったダニーのその後を、ユアン・マクレガー主演で描く『ドクター・スリープ』。

鬼才スタンリー・キューブリックが手掛け、現在でも語り継がれるホラー映画の金字塔の要素と、ホラーの帝王スティーヴン・キングによる原作の要素を見事なまでに融合させたのは、キング原作のNetflixオリジナル映画『ジェラルドのゲーム』でも注目されたホラー界の俊英 マイク・フラナガン。

キングの著作を初めて手にしたのは小学5年生のときという、根っからのキングファンが、監督&脚本を務めた本作についてたっぷりと語ってくれた。

「キューブリック版を積極的に無視し、まったく別の方向へ読者を導く」原作小説

「ものすごく怖かったし、僕の世の中への見方を完全に変えてしまった」とフラナガン監督は、初めてキングの小説に触れたときのことをふり返る。「(理解するには)幼すぎたけれど、キングの作品をどんどん読み始めたんだ」と言い、「彼の小説をたくさん読むことが人生におけるひとつの指針につながった。というのは、とても怖がりの子供だった僕は、彼の小説から一瞬で勇気を奮い起こす方法を学んだからだ」。

もちろん、2013年に発表された「ドクター・スリープ」の原作小説が発売された日のことも鮮明に覚えている。

「キングは、キューブリックがトランス一家の背景について映画で変更した点を投げ捨て、自分の視点からだけに限ってストーリーを続けていて…。愛読者にとっては、その綱引きはじつに刺激的だった。キューブリックがあの題材から創りだしたものは、彼の作品として象徴的であり、ポップカルチャーの中、そして映画ファンとしての僕の頭の中にしっかり入りこんでいた。そのキューブリック版を積極的に無視し、まったく別の方向へ読者を導くこの小説を読んで、すごくワクワクしたよ」。


そこには、映画『シャイニング』には盛り込まれなかった多くのテーマが蘇っていた。「特筆すべきは、キング自身と同じレベルの依存症に焦点を当てたことと、贖罪についても触れている点だ。僕が最初に感じたのは、『このストーリーはすごくいい』ということだった。僕は、ダニー、アブラ、ローズ・ザ・ハットという3人のキャラクターたちも大好きだ」。

また、「『シャイニング』と『ドクター・スリープ』の間にある矛盾もとても気に入った」と監督は続ける。「それは、依存症と回復、迫りくる氷と炎。キングは1作目の小説から数多くのすばらしい要素を採り、それらを何かまったく新しいものの中で輝かせたんだ」。

最大の挑戦――キングとキューブリックが描いた世界を融合させる

「僕の中には、キングの小説を忠実なかたちで映画化すべきだという強い思いがある。それと同時に、キューブリックの映画版を崇拝する気持ちもある」と監督は力説する。

「当初、自分の中のそのふたつの思いがぶつかり合っていた。でも、その両方を満足させようとするなかで、自分のためにそれをうまくやれたら、観客にも満足してもらえる作品になるんじゃないかと考えたんだ。キューブリックとキングの間の細い綱をいかに渡るかを学ぶプロセスだった。両者に敬意を払いつつ、単独の映画として成り立つ作品を作ること。僕はそれを最初から優先させた」と、絶賛を受けている本作の成功の“秘密”を打ち明ける。


「共感できる俳優」ユアン・マクレガーが演じるダニー

「ダニーは父ジャックと同じ問題――深刻なアルコール依存症に薬物摂取、そして暴力的な傾向――に苦しんでいる。ジャックはその特質により、呪われたホテルにとってあれほどたやすい標的にされてしまったのだが、ダニーはそれを受け継ぎ、それが彼の人生を決めてしまったんだ」と監督。

ダニーは「自分自身の悪魔、強さ、弱さに対処しなければならない欠点だらけの人物であり、自分自身よりもずっと大きいストーリーの中に引き込まれてしまう人物」であり、「彼を演じるには本質的に人が共感できる俳優が必要」だったと明かす。

「ユアンは、ダニーに傷ついた人間らしさをすごくもたらしてくれた。彼の演技のなかで、彼がホスピスで患者と一緒にいるシーンが僕はとても気に入っている。美しく、謙虚なんだ。僕がユアンから連想するのはそういうところだね」と語り、「しかも彼は映画史上最大級の作品に出演してきた、まさに“映画スター”なんだよ」と絶賛を惜しまない。


加えて、ダニーが抱えるトラウマについても、「ダニーはずっと自分の特別な力=シャイニングに苦しめられてきた。血の海や殺人が見えたりするんだからね。シャイニングのせいで、ダニーはもろくなり、恐ろしいモノの標的にされてきた。だが今、彼はその力のおかげで、まさに命が尽きようとしている人を見て、彼らが心安らかになるために何が必要かがはっきり分かる。それは彼を苦しませてきたこの能力を完全に再解釈させるものであり、彼の人生とシャイニングに初めて目的が生まれる」と語り、「小説においてそのときが、ダニー・トランスがストーリーのヒーローとしてほんとうの意味で登場するときだった」という。

キングが生んだ最強のヴィラン、ローズ・ザ・ハット

その一方で、レベッカ・ファーガソンが演じたローズ・ザ・ハットは、「スティーヴン・キング小説のかたき役としては長年の中でも最高傑作のひとつ」と断言する。「彼女の体験――非常に長い年月を生きてきたこと、その間にやってきた恐ろしいこと――のどれをとっても、僕たちが心を寄せるようなものは何もない。彼女はあらゆる意味で人間離れしている」。

そして、「スティーヴン・キング小説にこれまで登場した多くの悪役と比べ物にならないほどの怪物なんだが、そんな彼女にもどこか、惹きつけられるような、自信に満ちた、とてもチャーミングな側面がある」と続ける。


「レベッカ・ファーガソンは僕がこれまでに会った人の中でもとりわけチャーミングな人だ。そして彼女はすばらしい悪役に何が必要かを理解していた。それは、“好かれなければならない”ということだ。恐れられたいけれど、同時に好かれないといけない」と言い、「美しく、色っぽく、人を惹きつける。それこそ彼女の狙いなんだ。彼女はその魅力を利用して人を誘い込むんだよ」というローズ役は、まさしくレベッカにぴったりだろう。


また、“3つの異なるストーリーがまとまって1つの点になる”本作のもう1つの物語は、カイリー・カラン演じるアブラ。「アブラは自分のシャイニングを“不思議なパワー”と表現するんだが、彼女はそれが何かふつうではないものだとは考えてもいない。彼女とダニーは、そんなことよりももっと大きな問題のひとつを共有している。それは、それぞれの家族への愛情から、自分たちのとても大きな部分を占めているこの能力を隠す必要があると感じているということだ」。


キューブリックの音を求めて、原点『シャイニング』に立ち戻る

キングの原作とキューブリックの世界観を結ぶため、ときには『シャイニング』という原点に立ち戻ることも必要だったという。「キューブリックの天才ぶりが垣間見えることは『シャイニング』に多くあるが、そのひとつが音楽やサウンドデザインだった。彼は音を使って、シーンに不可解な恐怖感をもたらしていた」。

その点は『ドクター・スリープ』にも、確かに受け継がれているようだ。「音の使い方のせいで観る者はどこか不安を感じる。『ドクター・スリープ』には独自のアイデンティティをもたせることが重要だったが、同時にキューブリックが作り出した感覚にも少し立ち戻りたいと考えていたんだ」。

生粋のファン、監督が語るキング作品の魅力とは?

さらにキングについて、「周りと違う人間、そしてその違いのせいで孤独を感じている人間の物語を綴るのが非常にうまい。彼らの究極の願いは理解され、認められること。そしてその願いこそ、自らを定義することにつながる」というフラナガン監督。「世の中に自分をさらすことには常に恐怖が伴うものだ。その恐怖は誰もが若くして学ぶことだが、キングは心の底にあるその恐怖を巧みに利用して物語を綴るんだ」と、さすが長年のファンらしい分析。

本作では大人になったダニーも、その違いゆえの孤独と恐怖に立ち向かうことになる。彼は自分の人生を取り戻すことができるのか。フラナガン監督が導き出した“答え”を、スクリーンで確かめてみてほしい。

(text:cinemacafe.net)

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