八郎は古臭い男? 『スカーレット』名前の呼び方で変わる、男女の関係性

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2019年12月05日 12:32  リアルサウンド

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『スカーレット』(写真提供=NHK)

 丸熊陶業の工房にて、二人っきりの喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)。どうにか陶芸を教えてもらえないものかと、喜美子は直談判しにきたのだ。


 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第58話では、喜美子の妹・直子(桜庭ななみ)が草間(佐藤隆太)とともに信楽に帰ってきた。なにやら“ワケアリ”な様子である。


【写真】マスコット枠? 『スカーレット』の林遣都


 自分のことを「喜美子」と呼んで欲しい喜美子に対して、「つき合っていない人のことを名前では呼べない」という八郎。彼は自身のことを「古臭い」と称しているが、ここまで生真面目で誠実な人間はなかなか見たことがない。喜美子を応援してきた身としても、「八郎になら……」という気持ちが湧いてくる。ここで逆に彼が軽々しく、「喜美子」「きみちゃん」「きみっちょ」なんて呼んでいたならば、彼の男性として、人間としての期待値上昇も、一時停止となっていたことだろう。


 ところがだ、そんな彼に対して「じゃあ付きおうてください」なんて口にしてしまうのが喜美子。この一部始終を見ていて「まさか……そんなノリで……」と思ったものだが、彼女の表情に目を向けるとそれは真剣そのもの。いつもであれば、「はっ! しまった! 口がすべってもうた!」といった表情なり仕草なりを見せる喜美子だが、八郎を見つめるまなざしは力強い。大阪での単身修行時代、家族である川原家を守っていこうという意志、そして丸熊陶業での絵付け師としての独り立ち。いままで得てきた経験、そして現在直面している問題などから、こんな肝の据わった女性へと変わりつつあるのかもしれない。


 この二人のやり取りの中で、八郎の恋愛観・結婚観が明かされた。八人兄弟の末っ子である彼は、上の者たちを見てきて、いろいろと思うところがあるようだ。「『ただいま』と言って帰って、『おかえり』と言われるのをつまらんとは思わん」という彼の言葉からは、ささやかな日常を大切にしたいという想いも汲み取ることができる。しかしとうの喜美子は、まだ結婚についてはよく分からないご様子。彼女の中で“何か”が芽生え始めているのは確実なのだから、その“何か”に喜美子自身が気づいたときに、物語はまた大きく動きそうである。


 さて、そんなところに、東京から直子が帰ってきた。ともにやってきた草間が言うには、「信楽に帰りたい」と直子にせがまれたのだという。何がなんでも信楽を出ていきたいと言っていた直子だが、いったい彼女に何があったのだろうか。どうにも思いつめた表情をしているように思えて心配だが、誰に対しても“ふてぶてしい”直子のキャラクターは、また物語に波乱を与えてくれそうだ。


(折田侑駿)


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