『シャーロック』佐々木蔵之介は果たして黒幕なのか? 市川利枝子の再登場で深まる謎

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2019年12月10日 06:01  リアルサウンド

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『シャーロック』(c)フジテレビ

 “マジシャンズセレクト”と聞けば、『古畑任三郎』の第2シーズンにあった「魔術師の選択」のエピソードが思い浮かぶ。言葉巧みに相手を誘導し、こちら側が選ばせたいものを相手に取らせるという、手品で用いられる常套テクニックである。12月9日に放送された『シャーロック』(フジテレビ系)第10話を読み解く上で最も重要なキーワードとして登場したこの“マジシャンズセレクト”は、もしかするとこのドラマ全体にとっても最重要なキーワードとなったのではないだろうか。そしてそれと同時に、“灯台もと暗し”というキーワードも忘れてはなるまい。


参考:ほか場面写真多数


 事件は支持率がガタ落ちしている都知事・鵜飼(大鶴義担)の高校生の息子・椋介(浦上晟周)が誘拐されたことから始まる。「金のため」と江藤(佐々木蔵之介)からの依頼を引き受けた獅子雄(ディーン・フジオカ)は椋介の高校を訪れ、彼が所属するバスケットボール部のコーチ・灰田(増田修一朗)からパワハラともとれる厳しい指導を受けていたことを知る。そんな中で若宮(岩田剛典)は、獅子雄がこの仕事を引き受けた理由が金だけではなく、鵜飼が守谷の息がかかったサットンビジネススクールと繋がっているからだという事実に気が付いてしまうのだ。


 まずいつも通り、今回のエピソードのモチーフを整理してみたい。有力者の息子が誘拐されるという点と、教師の名前からは真っ先に『プライオリ学校』が連想される。しかしながら同作の“語られざる事件”からのつながりは見られない。その代わりに“政治家”と、その名前に“鵜”が入っていることから『覆面の下宿人』の中の「政治家、灯台及び調教された鵜に関する件」が浮上することだろう。それだけに“灯台”を“灯台もと暗し”ということわざに見立て、椋介が誘拐を自演して寮の天井裏に隠れていたというのはなかなかユニークな脚色であったといえよう。


 しかし今回描かれた“灯台もと暗し”は、それだけはなさそうだ。サットンとつながる鵜飼に関わる事件を追うことで「守谷へのメッセージになる」と躍起になる獅子雄。そんな獅子雄に毎回事件を持ち込んできた江藤は、その業績が認められて捜査一課長まで上り詰めることになるわけだが、いつも獅子雄が解決してると手応えを感じていない小暮(山田真歩)に江藤はこう語る。「解決させてやってるだけだ。俺たちが導いてやってる」と。つまりはこれまでの一連の事件は、すべて獅子雄を守谷へとつなぐマジシャンズセレクトということだろうか。しかもラストシーンで、意味深に屋上で「君が代」を歌う江藤の姿。もしかすると、獅子雄がその見えざる影を追い続けていた守谷の正体は……という、まさに“灯台もと暗し”的な展開が充分に考えられる。


 さらにそこへ追い討ちをかけるように、獅子雄がテレビのニュース速報で目撃する、拘置所から男女4人が脱走したというニュース。その中には、第3話の地面師詐欺事件の際に獅子雄たちの前に現れた元捜査二課の刑事・市川利枝子(伊藤歩)も含まれているときた。守谷の手先でもある市川が再登場を果たすとなれば、最終回は獅子雄vs守谷と市川の熾烈な戦いが繰り広げられるということだろう。ここに獅子雄との別れを感じるたびに哀愁を帯びた表情を見せる若宮がどのように噛んでくるのか。そういえば、今回の事件の舞台となった学生寮の名前は“ライヘンバッハ”だった。これは言うまでもなく「最後の事件」ということを示唆していたと見える。 (文=久保田和馬)


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