「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『カツベン!』

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2019年12月13日 18:12  リアルサウンド

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(c)2019「カツベン!」製作委員会

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田が『カツベン!』をプッシュします。


【動画】成田凌が銃口を突きつけられ絶体絶命に? 『カツベン!』予告編


■『カツベン!』


 本作は、『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』の周防正行監督が手がけた、「活動弁士」、通称“カツベン”を主人公としたエンターテインメント作。七色の声を持つ天才的な活動弁士の主人公・俊太郎が、予測不能のピンチに巻き込まれながらも奮闘していく姿を描く。


 正直に話すと「活動弁士」の存在を知らなかった。なので、同じように初耳だった読者に向けて説明すると、「活動弁士」=通称・カツベンとは、サイレント映画に音をつける人たちのことをいう。映画の元とされている「活動写真」は、時代劇や演劇の実写化したもののことで、カツベンは映画に音がなかった時代に、登場人物たちのセリフを代弁したり、物語の説明をしたり。「活動写真」を観るにあたって、カツベンの存在は必須であったし、弁士の腕によって作品の面白さが違った。当時は、「映画を観に行こう」ではなく「山岡秋声弁士の説明を聞きに行こう」とお気に入りの弁士が専属で務める映画館に通ったそうだ。


 本作では、周防監督が描きたかった“映画のはじまり”である「活動写真」が色んな人の目線で語られる。活動弁士を夢見る青年、元スターで落ちぶれてしまった活動弁士、「活動写真」の監督、女優を夢見る少女、映写技師、弁士と共に「活動写真」を音で彩る楽土、多くの人が「活動写真」に楽しみを持ち、それぞれに夢を抱いていた。本作や、ちょうど『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』(NHK総合)の落語を聞いていて、昔に誕生した娯楽に立ち返って感じのが、声の魅力だった。今や朗読劇や落語、ラジオ、声や話しを楽しむコンテンツは人気だが、声優、そして弁士はリアルにその場で映画を楽しむ手引きをし、声色と語りで感情を伝え、物語のテイストを操ってしまう。その魔法のような仕業に、「活動写真」が未来の形となった映画を通して魅了された。鑑賞後に本物を見たくなってしまったら、シネマート新宿では定期的に活弁上映をやっているそうなので足を運んでみるのもいいかもしれない。


 そして本作では、“声”にまつわる壮絶なオーディションを勝ち抜ぬいたという成田凌が映画初主演を務める。役者をやる前、モデルを中心に活動していた時期から、俳優志望(で熱い思いを秘めていた?)というのを知っていた筆者にとっては、こういう作品で彼が初主演を刻むというのは感慨深い。格好良さだけではなく、これまでも見せてきた不安げな情けない表情はさることながら、弁士として堂々とスクリーンの脇に立つときの声のパフォーマンスには釘付けになるだろう。これまでたくさんの恋愛が絡む作品で、成田演じる男性のクズっぷりに振り回されてきたファンがいたとすれば、ぜひ本作でより俳優として実力を伸ばし続ける成田凌を堪能していただきたい。


(リアルサウンド編集部)


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