恋愛リアリティーショー、恋愛ドラマよりもなぜ人気? “熱狂”の作り方を軸に考える

0

2019年12月20日 07:11  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 編集部の方から、「恋愛リアリティーショー、恋愛ドラマよりもなぜ人気?」というテーマでの執筆依頼をいただいた。う〜ん、これは結構難しい。


(参考:『バチェラー』の熱狂を生んだSNSの功罪 危うくも魅力的なシーズン3を振り返る


 たしかに、かつて恋愛ドラマを牽引していた、フジテレビの月曜21時枠(通常月9)は、近年は職業ドラマが多い傾向にあり、今年も『トレース〜科捜研の男〜』(1月期)、『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(4月期)、『監察医 朝顔』(7月期)、『シャーロック』(10月期)、そして来年1月からは『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』といったラインナップである。


 SNSや動画サイトと上手く連携した、『今日から俺は!!』『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』や『あなたの番です』といった日テレ22時枠の健闘も、今年のドラマにおけるトピックだが、不良コメディ、サスペンスジャンルであって、恋愛ドラマではない。


 そして、今期の地上波ドラマにおいて、『モトカレマニア』(フジテレビ系)『4分間のマリーゴールド』(TBS系)『G線上のあなたと私』(TBS系)といった恋愛ドラマは軒並み低視聴率だという(参考:【12月2日〜12月8日/ドラマ視聴熱&視聴率TOP10】初の2冠!視聴熱1位&視聴率1位「スカーレット」/ザテレビジョン)。


 しかし、近年ヒットした恋愛ドラマといえば、“恋ダンス”が一斉を風靡した『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系/2016年)、SNSを中心に“OL現象”を起こした『おっさんずラブ』(テレビ朝日系/連続ドラマは2018年)、横浜流星の大ブレイクにつながった『初めて恋をした日に読む話』(TBS系/2019年)などが記憶に新しいが、『逃げ恥』以外は、さほど視聴率自体が高いわけではなかった。


 録画視聴者の増加、あるいは見逃し配信アプリ・TVerで視聴する層も無視できない状態になっており、2019年12月19日現在のTVerランキング1位は『同期のサクラ私』2位『G線上のあなたと私』3位『シャーロック』である。もはや、視聴率だけでははかりきれない部分があるのは事実である。


 体感的に恋愛ドラマの存在感が落ちているという“時代の気分”は否めない。今年筆者は、1990年代に一斉を風靡したドラマ脚本家にインタビューする機会があったのだが、「1990年代よりも恋愛のプライオリティが下がっている」といった見解を持っていた。


 “若者の恋愛離れ”が話題になることもあるが(実際にそうなのかは不明だが)、その一方でネット配信の恋愛リアリティ番組は続々と作られている。AbemaTVの大ヒット番組『オオカミ』シリーズに出演したタレントは、SNSのフォロワーが瞬時に増えるというし、かつてドラマが担っていた「若手俳優・タレントの登竜門」という役割も果たしているように思う。海外にもファンが多いというNetflixの『テラスハウス』や、シーズン3の大番狂わせが良くも悪くも話題となったAmazon Prime Video『バチェラー・ジャパン』は新しいエピソードが更新されると、Twitterのトレンドに出演者名が頻繁にあがるなど、熱心なファンがついていることが伺える。


 単純比較はできないが、周囲をみわたしていても、とくに若年層は地上波恋愛ドラマよりも、恋愛リアリティ番組、あるいはYouTubeのカップルチャンネルを熱心に見ているという実感はたしかにある。この実感はどこから来るのか。


 ネット配信番組がほとんどのため、自由な時間に視聴できるというアドバンテージはあるものの、決め手に欠ける。思うに、恋愛リアリティ番組は、SNSと抜群に相性がいい。フィクションであるドラマと違い、虚実が曖昧であるので、「映し出されていることだけがすべてで事実」と捉える視聴者も少なくない。また、出演者本人たちがSNSアカウントを持っているケースも多く、番組に関連した視聴者の投稿に対して直接「イイネ」をつけてくれることもある。その現実との距離の近さから、出演者に対して強い感情を抱きやすく、「自分だったらこうするのに」と気軽に感想を言い合えたりするのもポイントだろう。そういった熱狂が可視化されることで、その分、「恋愛リアリティ番組の方が盛り上がっている」と感じるのではないだろうか。


 そう考えると、今年話題となったドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』『あなたの番です』も、内容はもとより、ネット上においての“熱狂”の作り方が上手かった。“恋愛ドラマ”復権の鍵は、そこにあるのかもしれない。


(藤谷千明)


    ニュース設定