年末企画:加藤よしきの「2019年 年間ベスト映画TOP10」 歴史の生き証人になれた感覚

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2019年12月27日 10:02  リアルサウンド

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『イップ・マン外伝 マスターZ』(c)2018 Mandarin Motion Pictures Limited All Rights Reserved

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。映画の場合は、2019年に日本で劇場公開された(Netflixオリジナル映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第12回の選者は、映画ライターの加藤よしき。(編集部)


参考:マックス・チャンのアクションが凄まじい! 『イップ・マン外伝 マスターZ』は超王道の娯楽活劇に


1. 『イップ・マン外伝 マスターZ』
2. 『HiGH&LOW THE WORST』
3. 『アベンジャーズ/エンドゲーム』
4. 『アクアマン』
5. 『ロケットマン』
6. 『アメリカン・アニマルズ』
7. 『工作 黒金星と呼ばれた男』
8. 『シャザム!』
9. 『ザ・フォーリナー/復讐者』
10, 『ハンターキラー 潜航せよ』


 悩みました。リアルサウンド映画部では2015年からベスト10を書かせていただいているのですが、今まで一番悩んだと思います。『映画秘宝』にもベスト10を寄稿しているのですが、これとちょっと違います。それくらいまだ悩んでいます。


 そんな中で不動の10位を獲得したのが『ハンターキラー 潜航せよ』。私の中では毎年「10位映画」というのがあります。10位映画は「何があろうがランキングには入れる。コレが好きだと言いたいからだ……!」という基準で決めるのですが、今回はこちらになりました。潜水艦映画なのですが、世が世なら木曜洋画劇場のレギュラー入りをしている映画だと思うので、末永く愛していきたいです。『ザ・フォーリナー/復讐者』はジャッキー・チェン主演のハード・アクション。永遠のひょうきん者ジャッキーが完全にシリアスに徹しており、「これこれ、こういうのが見たかったんだよ!」と前のめりになりました。『シャザム!』と『工作 黒金星と呼ばれた男』は話の締め方が大好きで……。


 あと今回の10選からは外れていますが、『アリータ:バトル・エンジェル』や『バンブルビー』も、エンディングに入るタイミングが気持ちよかったですね。そして『アメリカン・アニマルズ』! これは才気が爆発していました。オシャレさと意地の悪さでは、今年抜群だったと思います。エルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』は、久しぶりに劇場で涙ぐんでしまいましたね。私事で辛い1年だったのですが、エルトンも頑張ったんだから俺も頑張ろうと。4位に選んだ『アクアマン』ですが、物語の語り方が巧いなと感心するばかり。回想と現代を自由自在に行き来しながら、話が全く混乱しない。どうやって撮ったのか想像できないアクションも……と感心する一方、主人公たちがアフリカに着いたらTOTOの「アフリカ」を雑にサンプリングした曲が流れるなど、ザックリしたところは本当にザックリしていて、こっちにも驚愕。度胆を抜かれた映画です。


 そして……ここからの2本は卒業式です。『アベンジャーズ/エンドゲーム』は10年くらい追いかけていたシリーズが大団円を迎えたわけで、「本当に良かった」の一言です。後夜祭的な映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も同じ場所に入れたいくらい面白かったですね。『HiGH&LOW THE WORST』も同様。3〜4年くらい付き合った作品が、良い形で完結したのが単純に嬉しいです。


 こうした思い出がいっぱいの作品を押さえて、個人的に一番気に入ったのが『イップ・マン外伝 マスターZ』。実在した武術家・葉問(イップ・マン)の伝記映画に登場する、架空の人が主役のスピンオフ作品です。これが功夫映画の巨頭ユエン・ウーピン最高傑作と言っていいほど、アクロバティックで美しくも激しい格闘シーンのつるべ打ち。格闘映画ファンとして、たまりませんでした。それに架空の人物の伝記映画って、冷静に考えたら凄くないですか? 『三国志』の架空の武将(周倉とか)や、日本でも武蔵坊弁慶の伝説がどこまで本当か分からないみたいな話もあります。けれど、21世紀に同じレベルのことが起きるとは……歴史の生き証人になれた感覚を生まれて初めて味わったので、これを1位にさせていただきました。こうした香港映画的なザックリしたマインドを大事にして、2020年も生きていきたいと思います。(加藤よしき)


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