『オオカミちゃんには騙されない』は学園祭のような青春感を AbemaTV恋リア制作責任者鼎談【後編】

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2020年01月05日 19:21  リアルサウンド

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(左から)杉山未帆氏、若村菜摘氏、翁長朝弥氏

 AbemaTVが手がける恋愛リアリティーショー(以下、恋リア)が、いま10代20代を中心に話題となっている。なかでも、最新作『月とオオカミちゃんには騙されない』が1月5日より放送を開始する『オオカミ』シリーズや、“センバツ”制度が導入されたばかりの『恋する♥週末ホームステイ』(以下、『恋ステ』)、人気カップルを数多く生み出している『今日、好きになりました。』(以下、『今日好き』)は、絶大な人気を誇っている印象だ。


 リアルサウンドテックでは、『オオカミ』『恋ステ』『今日好き』それぞれのシリーズでプロジェクトマネージャーを務める3名にインタビュー。制作経緯や出演メンバーを選ぶ基準などについて語り合った前編に続き、後編では、それぞれの番組の特徴や魅力、AbemaTVオリジナル恋リアの展望についての話を展開している。


(関連:『月とオオカミちゃんには騙されない』、メンバー11名の写真&プロフィール公開 オープニング映像も


■「出演している高校生たちにも驚きも与えたい」
ーーどのシリーズも恋愛“リアリティーショー”とあって、毎回ドラマが生まれるとは限りません。ドラマを生むために工夫していることはありますか?


若村菜摘(以下、若村):だいぶ苦労することもあります。出演している本人たちに行動を任せている分、状況が全く動かない状態が続くこともあるんですよ。オーディションのときに、どんなにやる気があっても、やっぱり一般の高校生なので、実際にカメラの前で恋愛してくださいってなると、どうしても気構えてしまってなかなか動けないことって、結構あるんですよね。とはいえ、彼らには自発的に恋愛してほしいので、全員が一度は二人でしっかりと話し合えるシステムや、トランプに運命を預けて2ショットを決定する仕組みを設けたりしています。そのあたりは、シリーズ毎にちょっとずつ変化を加えて、ドラマが生まれるように工夫していますね。あとは、番組MCの方々が、停滞気味のシーンにもしっかりとツッコミを入れてくださったりと、スタジオで抑揚をつけてくださいます。スタジオMCの皆さんがいてくださることで、安心感がありますね。


翁長朝弥(以下、翁長):『今日好き』は、「デートをする」のようなお題を出すなどいろいろ試行錯誤したのですが、視聴者からは好評を得られませんでした。そのときに、何が良くなかったのかを一般の高校生たちにヒアリングしたら、「やらされてる感があって嫌だ」などといった意見をいただいて。じゃあ、1回原点回帰しようということになりました。最初は、初期の設定通り1泊2日で何が起こるのかをただ見ようという話になったんです。ただ、日本でやっても今まで通りで、いまいちテンションが上がらないよなと。そこで海外だったら、逃げ場がなくてお互いに助け合うしかない状況だし、気持ちも盛り上がって、自然に恋愛ができるんじゃないかと考えたんです。ハワイ編以降は、何も手を加えずにただ2泊3日の旅をさせるという、いまの形になりました。行く前に僕らが決めているのは、大まかなスケジュールだけです。サプライズも、継続メンバーに関してで、あとから誰が加わるかくらいしか用意していません。


ーーグアム編の継続メンバーで、そうたくんが来たときはびっくりしました。さとしくんだと思っていたので。


翁長:あれは、視聴者が見たいものだけでなく、出演している高校生たちにも驚きも与えたい、そしてメンバー同士の関係性も新しく築きたいという思いがあって、あえてあの順番とタイミングで入れさせていただきました。


ーーあとから参加する継続メンバーは、合流するまでの間は何をしてるのですか?


翁長:別行動をしています。行きの飛行機も別々なので、あとから加わる継続メンバーも今回誰がいるのか、いまどんな状況なのかを全く知らないんですよ。


ーー継続メンバーは弾を重ねるごとにすごく成長していきますよね。


翁長:そうなんですよ。顔つきが変わってくるんですよね。それぞれが自分がどう見られるかを自覚しているんじゃないかと。高校生の成長ってすごいなって実感しています。


ーー毎回、泊まるところもすごく豪華ですよね。


翁長:若村も言ってましたが、どうしても何も起こらないことってあるんですよ。だから、画力で魅せることも大事だなと考えています(笑)。改変前は国内だったのですが、いまは海外に行かないと恋愛模様が展開しないのではないかと不安でしょうがないです(笑)。


ーー(笑)。


杉山未帆(以下、杉山):『オオカミ』シリーズは、太陽LINEと月LINEがキモのひとつになっているのかなと思います。太陽LINEはメンバー全員に公開という形で気になる人を誘うことができて、指名された人以外もそのデートに参加できるというルールなので、このLINEの裏側で起こっている駆け引きやLINEが届いた瞬間の一人ひとりの表情なども映し出されます。そういったルールの中で恋愛模様が発展していくところに、ドラマがあるのかなと。あとは前作『オオカミちゃんには騙されない』で、ミッチェル和馬くんが海外の大学に行くため期限付きの参加だったことなど、そういった現実や事実もすべて盛り込んで、よりドラマチックな展開が生まれていますね。


ーー『オオカミ』シリーズは撮影期間が3カ月と長期に渡っているからこそ恋愛模様も大きく変化していきますよね。第一印象だけで終わらないというか、次々に新たな展開が起こる印象です。


杉山:3か月間、視聴者を飽きさせないために、ただデートをするだけではなく、出演メンバーの気持ちが動いていくように、アトリエ作業などの仕掛けは用意しています。全員で同じゴールを目指して、そこまで一致団結して走りきるという、学園祭のような青春感が生まれるように意識していますね。


■「『あのとき見てたよね』と言われる番組になりたい」
ーー前作の『オオカミちゃんには騙されない』から、男女逆転して“オオカミ”が女性になった理由を教えてください。


杉山:シリーズを重ねてきたので、そろそろ新しい楽しみ方を提供したいなと。


ーー変えてみて、反響はどうでしたか?


杉山:女性が“オオカミ”側に回ったときに、実際の社会と辻褄が合うように年齢層の幅を広げたので、視聴者の年齢層の幅も広がりました。また男性の視聴者層も以前より厚くなったように感じます。


ーー男性ファンが増えたのは、少し意外でした。


翁長:“オオカミちゃん”になって、圧倒的に見やすくなりましたよね。


杉山:男性は騙されたいっていう願望があるんですか?


翁長:違いますよ。どっちかというと、騙してるやつだと思われたくないんですよ。「誰、騙す?」っていうよりは、「誰に騙されたい?」のほうが会話しやすいんだと思います。


若村:あれ、可愛い女の子に騙されたいって言ってましたよね?


翁長:……。


杉山:それこそがまさに男性的視点なのではないでしょうか(笑)。


ーー『オオカミ』シリーズは次世代スターの登竜門になりつつありますが、ここまで“ブランド力”がついた要因はどこにあると考えていますか?


杉山:ここからどんどん輝いてほしい、羽ばたいていきそうだなという点を意識してキャスティングはしているのですが、実際に出演者の皆さんが人気になっていくのは、ご本人たちの実力や努力のかいあってのことです。だから『オオカミ』の出演者がそのあと人気になったというのは、結果論にすぎないと思います。


若村:ただ、完璧な一面しかいままで見ることがなかった憧れのモデルや俳優の、人間らしい側面が見られるという意味では、『オオカミ』は貴重な番組になっているのではないかなと。たとえば、『Popteen』専属モデルのめるるやあいりるたちは、恋愛を通して悲しんでいる姿や無邪気に喜ぶ顔など、彼女たちの隠れた魅力を引き出せているように思いました。


杉山:確かにモデルの皆さんは『オオカミ』に出演してから、「写真を撮ってるときの表情が明るくなった」とか、「番組を通していままでとは違った見方をしてもらった」などと言ってくださることが多いです。あとは出演されている期間、自分自身と向き合って、たくさんのことを考える時間になっていると思うので、本当に多くのことを吸収して成長されていきます。だからこそ、いろいろな一面が出てくるのかなと。


ーーどのシリーズも10〜20代を中心に根強い人気を集めていますが、AbemaTVならではの独自性やほかの恋リアとの違いはどこだと思いますか?


若村:制作陣と出演者の距離感が近く、彼らから学んだことをうまく番組に反映させていくことで、いまの若者の時流のど真ん中を捉えきれているというのが強みだと思います。


翁長:制作陣も比較的若いです。あとはアプリというツールを活かして、ターゲット層を詳細に設定し、実際の視聴層もデータとして細かく把握しているので、どうやったらティーンが見てくれるのかなど、いろんな仮説を立てては施策を試してを繰り返しているので、回を追うごとに常にアップデートしているのも成功の要因だと思います。


若村:あとは過去メンバーも含めて、出演者の皆さんが大きな資産であり、最大の強みです。ティーンからの支持や信頼が厚いインフルエンサーたちが多いので、その子たちと直接連絡が取れて意見をいただけたり、それを番組に反映させたりできるのは、これまでAbemaTVが3年かけて彼らと向き合って積み重ねてきたからこそだと思います。


ーー最後に、AbemaTVが手がける恋リアの展望を教えてください。


杉山:『オオカミ』は、最初に見ていた高校生たちがいまは大学生になっているので、大人になっても見られるように年齢層を広げていきたいなと思っています。あとは何年後かに、「あのとき見てたよね」と言われる番組になりたい。いま高校生や大学生である彼/彼女らの思い出の一つになってほしいです。(取材・文・写真=戸塚安友奈)


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