飯豊まりえ×稲葉友が明かす、映画『シライサン』が持つ新しい怖さ 「ホラー映画の良さをあえて削ぎ落とした」

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2020年01月10日 06:01  リアルサウンド

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左から稲葉友、飯豊まりえ

 2020年1月10日より、映画『シライサン』が公開される。本作は、小説家・乙一として知られる安達寛高の完全オリジナル作にして長編映画初監督作品。“その名“ を知った者のもとに現れ、目をそらしたら殺されてしまうという新たな怨霊「シライサン」の恐怖を描く。


参考:『サイン』飯豊まりえが明かす、初の医師役への思い 「並外れた精神力がないとできない」


 ジャパニーズ・ホラーといえば、『リング』の貞子や『呪怨』の伽倻子など世界に轟くキャラクターが生まれるジャンル。今回のシライサンは名前を知った者は呪われてしまうという新たなホラーアイコンだ。


 本作で『MARS〜ただ、君を愛してる〜』(日本テレビ系でドラマ放送、その後映画化)以来4年ぶりの共演となる飯豊まりえと稲葉友。インタビューが始まると、二人の掛け合いは途切れることなく、仲の良さが伝わってきた。そんな二人に撮影の思い出や初対面の印象、シライサンというホラーキャラクターについて幅広く聞いた。


■飯豊まりえ「(稲葉友は)水みたいな人」
ーー以前ドラマで共演されているお二人ですが、初対面のお互いの印象は?


稲葉友(以下、稲葉):初対面がけっこう前なんですよね。同じ学校のクラスメイト役で、メイン5人でワイワイやってたんだけど、芝居ではあまり絡まなかったよね。


飯豊まりえ(以下、飯豊):うん。友くんの印象は、お兄ちゃんって感じだった。サバサバしているから距離感がすごく気持ちよくて。当時私はお芝居を始めたばかりで、あまり慣れていなかったから、撮影終わったあと現場で余韻に浸ってたんです。そしたら、友くんが「終わったらすぐ帰るよ」って教えてくれて(笑)。それ以来撮影が終わったらすぐ帰るように心がけてます(笑)。


稲葉:俺は窪田正孝さんを見てそれを学んだよ(笑)。「お疲れ様でした!」ってあの人ほど気持ちよく早く帰っていく人見たことない。


ーーそうなんですね(笑)。飯豊さんとしては稲葉さんはお芝居の先輩というイメージなんですか?


飯豊:はい。頭の回転がめっちゃめちゃ早いんです。


稲葉:(笑)。


飯豊:言葉の選び方もすごく丁寧で気持ちが良くて。なんか水みたいな人です。


ーー「水」ですか。


稲葉:それ覚えてる。その時、飯豊が大変な役だったんです。ヒロインに抜擢されて、大変なシーンがたくさんあったんですけど、俺と一緒の日は、大変なシーンがないんですよ。だから「友くんはオアシス」って。俺じゃなくて構成の都合上なんですけど。その積み重ねで「友くんって水みたい」って言ってました。


飯豊:でも本当で。今回もそんな感じでした。


稲葉:久々にお会いしたら、すごくかっこいい人になられていて。


飯豊:(笑)。


ーー稲葉さんはいかがでした?


稲葉;儚くて壊れそうな人だなって(笑)。18歳でこんなに気配りができるというか、いろんな人にホスピタリティが行き届いていて、一番大変な役なはずなのに、どうしてこんなに現場を明るくできるんだろうと。良い意味で親の顔が見てみたいと思いましたね。


飯豊:でも今回の現場では「水筒みたいだよね」って言ってました。


稲葉:覚えてない(笑)。


飯豊:さっき壊れそうと第一印象言ってくれたんですけど、待ち時間に「物で例えるとなんだろう」って話していて、「水筒みたいだね。意外に繊細に見えて落としても壊れないし、頑丈だよね」って言ってた。


稲葉:全然忘れてる。強くなったんだね。


■稲葉「絶対に抗う術がないのとはまた違うからこそスリリング」
ーー今お話ししている中でもお二人の仲の良さが伝わってきます。撮影現場でもこのように和気あいあいと?


稲葉:ロケバスで喋ってる時間が多かったよね。


飯豊:ね。キャストさんが少なかったですし。


稲葉:定食食べに行ったね。お魚食べました。


飯豊:コーヒーも飲みに行ったよ。この作品について、真面目な話をして。撮影ももう少しだけど、一生懸命いいもの作ろうねと。


ーーお二人にとって思い出深い撮影だったんですね。


飯豊:地方での撮影だったので、ご飯を食べる場所も限られてるから自然に「一緒に行こう」って。でもとっても早く感じました。不気味なところで撮影してたので、撮影中は毎日、早く過ぎろと思っていたんですけど。


稲葉:飯豊は常に怯えてましたね。


飯豊:撮影前のお祓いの時に住職さんが私の名前間違えてたから、これはもう呪われたと(笑)。でも立ち向かっていかなければと意気込んで現場に行ったら、友くんがけっこうスンとしているので。


稲葉:最初は飯豊を「大丈夫だよ」とする係でした。僕はマネージャーさんから「飯豊さんは絶対お祓いしたいらしいけど、稲葉はそのタイミングはスケジュール的に行けないけどどうする?」って聞かれて。断りました。


飯豊:それも嫌だったんです。私だけお祓いして他の人が憑いちゃったらどうしようと。


稲葉:あなたが祓ってくれたらみんな憑かないから。


ーー「シライサン」という架空の怪談をモチーフにしていますが、目を逸らしてはいけない中で恐怖の表情を作るのが本作のひとつ見どころなのかなと。


飯豊:難しかったです。制限がありましたからね。それでけっこう悩んで、定食屋でその話をしました。もっと大きくリアクションしたいとか、この演技で怖がってもらえるのかなとか不安になって。でも実際に完成した作品を見ると、それがリアルなのかもしれないなと思いました。実際にお化けとか架空のものが出てきたらリアクションも大きくならないのかなと。


稲葉:『シライサン』が面白いのは、目を逸らしたら死ぬという制約があって、それは逆に目を逸らさなければ生き残れる可能性があるというところ。絶対に抗う術がないのとはまた違うからこそスリリングですよね。


飯豊:自分次第なところがあるからね。


稲葉:その希望に賭けて必死に向かっていく人が面白い。それが今回は際立っていて。それこそ普通に生きていて女の子を怖がらせたら怒られるじゃないですか。でもホラー映画なら女の子が怖がっているところが見れる、そこもホラー映画の良さなのに、あえてそこを削ぎ落としたのはすごいなと思いました。


飯豊:それは思った。でもだからこそ難しかったな。ある意味挑戦でしたね。


ーー今作、小説家の乙一さんが監督をやられています。監督の印象はいかがでしたか?


稲葉:安達さんが独特だよね。


飯豊:うん。


稲葉:「優しい」というのが本当によくわかる。お話ししていても、僕らに対する言葉遣いや指示の出し方をとっても、本当に優しい方なんだなというのがすごく伝わってきて、それが作品の随所に反映されているんです。


飯豊;でも最後打ち上げの時に「人々を絶望的な気持ちにさせたい」とおっしゃっていて……。


稲葉:そうそう! だから「やばいじゃん!(笑)」ってね。だから渦巻いているものがあるのかなと。面と向かって話すと感じないけど、根源には何かがあって、だから独特に思えるんだなと感じましたね。


ーー撮影中にそういった片鱗は?


稲葉:そういったクレイジーさは全く感じなかったです。


飯豊:ディレクションも「リアクションちょっと抑えめで」みたいな。


■飯豊「撮影中でカメラが止まっちゃうこともあった」
ーー「シライサン」のビジュアルがとんでもなく怖くて。映像越しでも見つめていられないような見た目ですよね。


稲葉:目が本当に怖いですよね。あの目になった途端に、意思疎通が取れなくなって立ち居振る舞いもどこか違って、こちらを見てくるような気がして。ジャパニーズ・ホラーの醍醐味ですよね。チェーンソーを持った筋肉隆々な男が物理的に襲いかかってくるのも恐ろしいですけど、未知なもので確実に怖いというのがシライサンの中に存分に詰まっているので、それを現場で体感できたのは貴重でした。


ーーシライサンに見つめられたら目を逸らさずにいれますか?


飯豊:一人じゃ無理かなあ。途中で諦めちゃいそう。名前を知っただけで呪われるって絶望的だよね。


稲葉:映画の序盤から大事な人が殺されていくからね。あれがないと話が始まらないんだけど、実は一番残酷だよね。


ーー染谷将太さんをはじめとして、色んな人がシライサンの怪談を話して聞かせるシーンもありました。怪談って話す人によって全然違う話のように聞こえてくるなと。


飯豊:友くんは怪談向いてるね。私は途中で笑っちゃうから上手くいかない(笑)。


稲葉:作品の中でいろんな人がシライサンの怪談を話すからね。(仁村)紗和ちゃんが。


飯豊:大変そうだった。


稲葉:染谷くんの演技を見た後に俺たち二人にシライサンの怪談を伝える役だったので、悩んでいましたね。


飯豊:怖がらせるの難しいよね。私たち二人はあまり叫んでないけど、周りの人は結構叫んでるからそれがありがたかった。


稲葉:俺たちあまり「うわー!」とか言ってないね。


飯豊:紗和ちゃんの叫びが100点満点でした。


ーーちなみに現場で一番怯えられていたのは。


稲葉:いやもう(飯豊を指差す)。


飯豊:私ですね絶対に(笑)。逆にみんななんで怖くないんだろうと。


稲葉:だから撮影中何か怖いことが起こると、それをいかにポップにするかを考えていました(笑)。


飯豊:途中でカメラが止まっちゃうこととかもあって。


稲葉:カメラのケーブルが映りこまないように、天井に這わせていたんですけど、それがシーンの終わりでちょうどバターンと落ちてきて、僕らは別に気にしてなかったんですけど、飯豊だけビビっていて(笑)。そういうのをポップにするために、逆になんでもシライサンのせいにしたらだんだん面白くなってきたんです。セリフちょっと噛んだら「シライサンのせいだわ」って。


飯豊:便利便利(笑)。


(取材・文・撮影=安田周平)


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