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「今までの明智光秀のイメージを白紙に戻して」池端俊策(脚本)【「麒麟がくる」インタビュー】

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2020年01月17日 10:21  エンタメOVO

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写真「麒麟がくる」
「麒麟がくる」

 いよいよ1月19日から放送開始となる大河ドラマ「麒麟がくる」。大河ドラマとしては3年ぶりに戦国時代が舞台となる本作では、「本能寺の変」を引き起こした明智光秀(長谷川博己)を中心に、織田信長(染谷将太)や斎藤道三(本木雅弘)といった武将たちが、群雄割拠の戦国絵巻を繰り広げる。脚本を手掛けるのは、「太平記」(91)以来、2度目の大河ドラマ登板となる池端俊策。多忙な執筆の合間を縫って、作品に込めた思いを語ってくれた。




−明智光秀が主人公に決まった経緯を教えてください。

 最初にNHKから「戦国時代の前半をやりたい」とオファーがありました。僕は「太平記」で室町幕府を開いた足利尊氏を書いたので、以前から室町の終わり、最後の将軍・足利義昭を書きたいと思っていました。そこでまず、義昭と関係が深い織田信長の名前が上がりましたが、信長はこれまで何度も大河ドラマで取り上げられています。次に、「斎藤道三はどうか」と。「国盗り物語」(73)とは違う道三を描いてみるのも面白いと思いましたが、道三は早く亡くなってしまいます。そんなやり取りの後、NHKの方から「明智光秀もありますね」という話が出て、僕は飛びつきました。義昭と信長を結び付けたのは光秀という説があり、義昭を描く上では外せない存在ですから。

−光秀に引かれた理由は?

 光秀は僕も書いてみたいと思っていたんです。子どもの頃、松本白鸚(初代)さんが演じた光秀を主役にした映画(『敵は本能寺にあり』(60))を見て、光秀にはいい印象があったし、僕は裏街道を行く人が大好き。今までそういう人をたくさん書いてきましたが、光秀といえば、戦国時代に裏道を歩いてきた人の代表格です。当時、最大の事件である「本能寺の変」を引き起こした張本人ということで、「これは面白い」と。

−光秀を描く上で心掛けていることは?

 「頭脳明晰(めいせき)だが、陰気な上に繊細過ぎて信長とそりが合わずに冷遇され、最後は本能寺の変を起こした」。これが今までの明智光秀像だと思いますが、僕はそういうイメージを全て白紙に戻して書いています。従来の光秀像は、信長側の視点に立った「信長公記」に書かれたもの、もしくは家康寄りから見た江戸時代の資料が基本になっています。つまり、「光秀は逆賊だった」という発想からスタートしているわけです。でも、もっと客観的な光秀がいたのではないか。それはどんな顔をしていたのか、どんな人物だったのか。想像するしかありませんが、そういうところを描いていきたいと思っています。

−とはいえ、光秀に関する資料は多くありません。その中でどのように物語を作っているのでしょうか。

 光秀は41歳の頃、信長と義昭を結び付けるあたりで歴史に登場してきますが、それ以前の若い頃に関しては全く分かりません。研究者たちが書いたものはありますが、それもあくまで推測です。ドラマの作り手としては、そういう研究結果を踏まえた上で、41歳まで何をしていたかを考えるところから出発しました。誰も見たことのない人物なので、ある意味、自由です。ただし、周囲の状況はある程度はっきりしており、織田信長や斎藤道三についての資料は残っている。だから、彼らとの関係の中で光秀を描いていこうと。

−具体的にはどのように?

 美濃という土地で生まれ育った光秀が、何を思って生きてきたのか。それを書くには「自分が光秀だったら…?」と考えざるを得ません。逆に言えば、非常にせんえつですが、自分がどう感じるかを書けばいいんだと。道三を見てどう思ったか、信長と出会ってどんな衝撃を受けたか…。自分が感じるその受け止め方やリアクションから、光秀像を導き出していく。そういうやり方で書き進めているところです。

−光秀の主君となる斎藤道三の人物像は?

 道三は従来、「油売りからのし上がって、一代で地位を築いた」と言われてきましたが、最近の研究では親子2代で…という話になっています。つまり、父親が築いたものを継いで完成させた優秀な2代目です。そうすると、己の野心をかなえようとするだけでなく、守りの部分もあったのではないかと。狡猾(こうかつ)な一方で、多少は人の気持ちを読むことができ、身内に対する愛情もある。息子を後継者に育てたいと願いながらも、思うようにいかない親としての悩みもあり…と。中でも僕が面白いと思ったのは、他人に分け与えることを嫌がるケチな一面があることです(笑)。そんなふうに、野心一筋の人ではないという形で描いています。

−織田信長はいかがでしょうか。

 信長は「異端児」と言われていますが、それは違うのではないかと思い、自分なりに人物像を考えてみました。信長に関しては、弟の信勝と権力を争い、敗れた信勝を殺そうとした際、母親が命乞いをしたという記録が残っています。信長が嫡男であるにも関わらず、母親は信勝をかばった。それはどういうことなのか。そこを考えてみたとき、母親に愛されなかった男の姿が浮かび上がってきました。母親に対するコンプレックスの裏返しから、異端児のように振る舞う…。つまり、不良少年ですね。だとすると、非常に繊細な人だろうと。だから、今までのような剛直で独裁者風なイメージとは、少し違うのかなと。

−なるほど。

 とはいえ、人間は変わっていきます。権力を手に入れ、年齢を重ねた結果、どうなっていくのか。それはまた別の話です。ただ、幼い頃の経験は後々、必ず影響してくるはず。そういうことを考え合わせながら、信長を育てていこうと思っています。

−光秀役の長谷川博己さんの印象は?

 長谷川さんは、僕が脚本を書いた「夏目漱石の妻」(16)で漱石を演じていただき、とてもすてきな俳優さんだと思っていました。非常に繊細で誠実で優しさがある。それと同時に、殺気や緊張感のようなものも併せ持っている。それが光秀のイメージとすぐに結び付きました。

−というと?

 光秀は、41歳からの十数年で有名になった人です。信長の家臣の中で、10年程度で名を挙げた人物に、光秀以上の人はいません。一時は家臣のナンバーワンで、秀吉のライバルでもあったわけですから。それほどの人物ということは、それまでは人々の間を探訪して歩き、洞察を重ねた末、一気に躍り出ていったのではないかと。そこから、透明感があり、緊張感に満ちた生き方を送り、時代を駆け上がっていく光秀の姿をイメージしました。それが、長谷川さんにぴったりでした。

−執筆が進む現在の手応えはいかがでしょうか。

 楽しみながら書いているところです。若い頃の光秀は、いろいろな土地を旅して、世の中を見て歩きます。その都度、今度は松永久秀(吉田鋼太郎)、次は将軍・足利義輝(向井理)…というように、有名な武将が次々と登場します。それを一人一人、自分なりに解釈して、歴史上の出来事と照らし合わせて点と点をつないでいく。その作業がまるで、戦国時代の人物図鑑を一つ一つ塗りつぶしていくような感覚で、楽しいです。

(取材・文/井上健一)


明智光秀役の長谷川博己

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