“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、『パラサイト』を見てポン・ジュノに殺意が芽生える!?

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2020年01月17日 19:03  日刊サイゾー

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日刊サイゾー

写真撮影=おひよ
撮影=おひよ

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士が、森羅万象を批評する不定期連載。今回取り上げるのは、カンヌ国際映画祭で最高賞に輝き、さらにはアカデミー賞作品賞の有力候補と目されている韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)だ。日本でも大絶賛の嵐が巻き起こっているが、そんななか瓜田は、キムチよりも辛口な批評を展開した!

 今作は監督から「ネタバレ禁止令」が出ているため、ストーリーについては、オフィシャルサイトに掲載されている以下の文章を引用するにとどめたい。

《“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく――》

 妻同伴で劇場入りした瓜田。映画の序盤では笑い声を上げていたが、中盤以降は静かになり、映画が終わるや否や、エンドロールも見ずに不機嫌な顔で退席してしまった。いったい何が気に入らなかったのか? 決定的なネタバレにならない範疇で語ってもらおう(編注:映画について何も知りたくない人は以下を読まないでください)。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) 初めてですよ、映画を見てる最中に殺意が芽生えてきたのは……。この監督は人間をバカにしてんのか? という猛烈な怒りを感じました。

――どこに怒りを感じましたか?

純士 貧乏一家が知恵を絞って、金持ちの家に入り込んでいく。その着想はいいと思うんですよ。浅田次郎原作の『プリズンホテル』みたいな愉快なドタバタ劇なんだろうと思って序盤は楽しんでたんですけど、あまりにも禁じ手を使いすぎるから途中で冷めてしまい、しまいには怒りを覚えました。

 義理だったり人情だったり愛だったりを完全に無視して、最終的に全部めちゃくちゃにしていいっていうんだったら、誰でもなんでも作れると思うんですよ。“映画の仁義”みたいなもんを思い切り破ってる作品じゃないですか、これ。

 貧乏一家全員が、金持ち一家に入り込む理由を作るのって、大変だったと思うんだけど、それにしたって、いとも簡単すぎやしませんか? そこにスリルがまったくない。おまけに義理や人情もないから、共感もできない。金持ち一家に長年尽くしてきたあの人まで、あんな目に遭わせてしまうというのは、映画としてあまりにもお粗末じゃないですか? 「この映画は、最終的な着地点をどうしたいの?」と、見てて心配になってきちゃったんですよ。

――その「先を読めない展開」が好評のようです。

純士 日本でいったらドリフターズのコントって、最後に家が崩れるわ、茶碗は吹っ飛ぶわで、収取がつかなくなってみんなで大騒ぎするじゃないですか。ドリフなら最後にタライが落ちてきて、いかりや長介が「ダメだこりゃ」と言えば終われるけど、映画だとそうはいかない。さて、どうするつもりなのかと思って見てたら、結局『バトル・ロワイヤル』みたいになっちゃった。仁義もへったくれもない、ああいう物語が個人的には大嫌い。ストーリー展開も無理やりすぎるところが多く目につきました。

――それは具体的には?

純士 突然すぎるセレブのパーティーにしても、ラストを描きたいがために無理やり開催された感が強いし、突然の豪雨にしても、避難所であのセリフを言わせるために無理やり起こしたとしか思えない。おかんをハンマー投げの選手にしたのだって、ただ単に「怪力で仕留める」という場面を描きたいからだろ、って。

――でもそんなことを言いだしたら、映画で伏線を張ることが、すべて否定されてしまうのでは?

純士 伏線はさりげなく回収されるからいいんであって、あんな無理やりな回収だったら興醒めですよ。発想はいいけど、表現がヘタくそなシーンはほかにもまだまだありました。モールス信号も思いつきとしてはいいけど、あんなメッセージを相手に伝えるためには、お互い何十時間張り込まなくちゃいけないんだって話で、現実味がまったくないから、感動なんてできっこない。

 笑わそうとしてるシーンも、もっとリアリティーや緊張感が伝わるようにしてほしかった。過剰に演出しすぎですよ。絶対に見つかっちゃいけない一家が、あんなにドタバタ走り回ったり、階段の壁からひょっこりはんみたいに顔を出したりっていうのは、マンガならいいけど、実写だとリアリティーがなさすぎる。結果、スリルが出ないから、当然笑えないわけですよ。

 あと、動画を撮られたことがきっかけで、攻守が逆転する場面があったじゃないですか。あれ、大きな見せ場だったと思うんですけど、そのあとのギャグシーンが長くて、途中でウンザリしちゃいました。金持ち一家がキャンプで留守にしてる間に、貧乏一家が羽根を伸ばすシーンにしたって、無駄に長くてテンポが悪い。2、3分やれば理解できるのに、いつまでもグダグダやってるからアホらしくなっちゃいました。

――人物描写はいかがだったでしょう?

純士 全体的にずさんでしたね。あれだけ事業に成功してる社長が、名刺1枚で人を簡単に信用するわけがないし、パンツ1枚で運転手をクビにするのもおかしい。本来なら、車の中に女物のパンツが落ちてたら、嫁の浮気を疑うとかの思考があってもいいはずじゃないですか。なのに、ペテン師の言い分がすんなり通っちゃう。そんなバカな、って話ですよ。そんなバカな、というコント路線で最後までいくならOKなんだけど、そこに社会的テーマみたいなものまで盛り込んできたから、ざけんなよ! と思うわけですよ。

 そんななか比較的、人物描写が丁寧だったのは小さな男の子でした。インディアンを好きだとか、絵を描いてるとか、無線ごっこをしてるとかの意味ありげな描写があったじゃないですか。でも、その人物描写が特に生かされることなく終わっちゃったから、そこでも大いにガッカリしました。

――作品のメッセージみたいなものは伝わってきましたか?

純士 よくわからなかった。最後に残された奴が肉親に会いたがる気持ちはわかるけど、じゃあ消えてった奴らに関する説明はほったらかしか? 俺はいったい何を見せられてるんだ? って、監督に対して腹まで立ってきちゃって。

 貧富の差みたいな社会的問題提起を入れようとしてたみたいだけど、あんなぐちゃぐちゃな展開になるなら、無闇に人が死ぬB級ホラーと何も変わらないですよ。

――奥様の感想はいかがでしょう?

瓜田麗子(以下、麗子) グダグダさや強引さは、全然気にならなかった。映画ってそんなもんやと思うから。でも私は、貧乏はいいけど、心の貧乏な人が嫌いなんですよね。この映画に出てくる人たちはモラルがなさすぎて……。ダメさの中に愛とか正義があるならいいけど、最後まで心が貧乏で、誰も幸せになってない。なんて後味の悪い映画なんやろう……と思いました。

純士 嫁の言うとおりですよ。貧乏一家が実はハートフルだった、とかの救いがあればOKなんです。で、たとえば金持ち一家が事業でヘタを打って、そこに水害まで起きて、あのお屋敷が崩壊するほどの打撃を受けたときに、貧乏一家が「今まで世話になったんだから」と一念発起し、すべてのウソを打ち明けた上、金持ち一家のピンチを救ってあげるとかのストーリーだったらまだよかったけど、最後まで闇の部分で引っ張っちゃったから、きつかったな。

 この監督は本当に、何を描きたかったんだろう? 貧乏一家の中で、比較的良心的と思えた人物が、真っ先にああいう目に遭っちゃうところもワケがわからない。こんな意地汚い発想で、よくカンヌを獲れたなぁ……。理解に苦しむわ。

麗子 強いてこの映画から教訓を見いだすのであれば、やっぱ「心の貧乏な人は幸せになれへん」ってことかな。

純士 でもそれを言うなら、あの人やこの人が、なんであんな目に遭うわけ? クズが全滅するのは構わないけど、そのほかの人々にはたいして罪がなかったじゃん。そんな話からは、教訓なんて何も得られないよ。この映画から唯一学んだことといえば、「愛撫は時計回りがいい」ってことぐらいかな。

麗子 まあ、「予想を裏切られた」という意味ではショッキングな映画ではあったな。韓国版の『万引き家族』みたいな作品なんかな? と思って見始めたけど、純士の言うとおり実態はB級映画やったな。

 個人的によかったんは、「純士がこの映画を受け入れなかった」ってことやな。ひょっとしたら「面白い」言うんちゃうかな? って不安やってん。だって純士は、『友へ チング』とか好きやん? ちょっと病んでるやつ。

純士 病んでるけど、あれは人を殺すのにも理由というか大義があった。俺、“仁義なき殺人”はダメだと思ってるの。映画においては。

麗子 でも、『ジョーカー』では感動しとったやん?

純士 あれにはちゃんと、彼なりの大義みたいなもんがあったじゃん。北野武監督の『アウトレイジ』も、1作目と2作目には、自分なりの仁義を貫くストーリーがあった。でも、3作目の最終章はなんでもありって感じで、あまり好きにはなれなかった。なんでもかんでも「この野郎! バキューン!」で通用するならストーリーもクソもねえだろ、と。あんだけ人を殺して、自分まで殺すのはずるい。人の命や尊厳を舐めすぎだろ、と思ったんですよ。今日見た『パラサイト』にも、同様のいら立ちを感じました。

――純士さんは、仁義をことさら重んじる人なんですね。

純士 『こち亀』とか『寅さん』を見て育ってきたから、俺には武士の情けとか、武士の心があるんですよ。世話になった人へ恩を返す話とか、誰かのために一肌脱ぐ話とかが子どもの頃から大好きで。そういうのを「心」と思ってきちゃってるから、「誰でも彼でも死んじまえ!」みたいな話には病的なアレルギーがあるんですよ。

 同じ韓国映画でも、『シュリ』や『友へ チング』や『シルミド』には美学があった。男としてのけじめ、みたいなもんがね。でも『パラサイト』には、それがなかった。登場人物のほとんどが、最後までクズ。

麗子 しかも、それを悪いとも思ってへん。

純士 よくこんな作品を世界に晒せるな。恥を知れ、と言いたい。

麗子 後味が悪いから、デートには不向きな映画やな。あと、わいせつなシーンもあるから、子どもにも見せたらあかんな。

純士 映画が終わったあと、ロビーで若い男の子が「すっごい面白かった!」と言ってたのを聞いて、俺はこう思いましたよ。「それはお前の人生が面白くないからだろ」と。つまらない人生を送ってる人が、自分よりもダメな奴らを見て憂さ晴らしをする映画ですね、これは。

――夫婦そろって、ここまで酷評するパターンは珍しいですね。

純士 われわれはこう見えて、道義上よくない問題に対し、「まァ、なんてハレンチなことを!」と騒ぐ老夫婦みたいなところがあるんですよ(笑)。
(取材・文=岡林敬太)

『パラサイト 半地下の家族』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士  0点
麗子  0点

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

このニュースに関するつぶやき

  • 個人の感想ね。おれには武士の、てとこで笑わせてもらいました。て、誰やねん、こいつは。
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  • よくカンヌ取れましたね。
    • イイネ!12
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