「過去の女の記憶だけで生きられる」爪切男×善雄善雄 “経験と創造”対談

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2020年01月23日 22:30  ソーシャルトレンドニュース

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"「過去の女の記憶だけで生きられる」爪切男×善雄善雄 “経験と創造”対談"

小説『死にたい夜にかぎって』が賀来賢人さん主演で実写ドラマ化……!
『日刊SPA!』での連載から人気に火がつき、書籍化、そしてこの度ドラマ化されるこの小説は、原作者・爪切男さん本人の実体験のエピソードを元に構築されているもの。初恋の相手は自転車泥棒、初体験の相手は車椅子の女性……そして人生で一番愛した女性・アスカは、唾を売って生計を立てている――そんな様々な女性たちとの日々と心の揺れが綴られている。


そして、その爪切男さんを尊敬し、爪切男さんとプライベートでも親交があるのが、劇団ゴジゲンのメンバーであり、自身でも劇団ザ・プレイボーイズを主宰する、善雄善雄さん。永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリーで『卒業をさせておくれよ』を連載中の善雄さんだが、この連載も自身の実体験をもとにしたもの。
2人とも、チェリーのコンセプトのように、過去を引きずりながらもそれを創作に変えていけている理想のオトナなのでは……!? ということで、2人に『死にたい夜にかぎって』の話はもちろん、“実体験を文章にするということ”や“過去との向き合い方”について話を聞いた。

続くべき人とは偶然が重なっていく


――お二人はお知り合いということですが、最初のきっかけは何だったんですか?


善雄「僕はもともと『死にたい夜にかぎって』が大好きだったんですが、直接お目にかかったのは結城企画という劇団のアフタートークの司会をやらせて頂いた日ですね。ゲストが『夫のちんぽが入らない』のこだまさんで。見にいらっしゃってた爪切男さんとロビーでお話をさせて頂いたんですよね。で、そこでは一旦お別れしたんですが、劇場からの帰り道で、下北沢のお店に並んでるこだまさんと爪切男さんたちと偶然鉢合わせして」


爪切男「僕が『飯食うんですけど、どうですか?』って言っちゃったんです。瞬間的に、初対面の人に飯どうですかって言っちゃった、どうしよう……って思ったんですが……」


善雄「僕は逆に『入りたい』みたいな空気出しちゃったかも……と気にしてました。仲良しグループに知らない奴がひとり乱入してきたみたいになっちまった……と」


――お互い一瞬の間に、気を遣われまくってますね……。それを機にご縁が続いてるんですね。


爪切男「その後も色々な偶然が重なって会っているんですが、その日のうちに偶然再会したことも含めて、続くべき人とは不思議な縁が重なって続くんですよね」


女性の思い出がCDラックのように並んでいる


――さて、『死にたい夜にかぎって』は過去の女性たちの話が綴られています。エピソードの深さもさることながら、まずはすごい記憶の量ですよね。


爪切男「自分の頭の中に、昔の女たちとの記憶がCDラックみたいに綺麗に並んでるんです。だから、すぐに取り出せてしまう。今日も、渋谷の駅から、この取材場所に来るまでの間に4人の女を思い出したんです。一蘭であのキャバ嬢とラーメン食ったな、とか……」


善雄「僕もわりと、ささいなことも覚えている方なんです。中1で好きになった女の子が、わざわざ俺のために教卓までプリント取りに行ってくれたのに、ありがとうの一言が言えなかった、とか……でもこれも、爪さんがそういうお話したり書いたりしてくださったことで、記憶の蓋が開いたから思い出せたみたいな部分だと思うんです。この本はそういう楽しみ方もできる」


爪切男「BiSHのアイナ・ジ・エンドさんも『死にたい夜にかぎって』の解説文で書いてました。中学生の時、プリントを前から回すときに、振り返った男が『お前ブタに似てるな』って言ったことを自分だけはずっと覚えてるって。向こうは忘れてるし、たった一瞬の記憶でも、こっちにはずっと残っている」


善雄「爪切男さんのCDラックの中には、両想い以外の女性もたくさん並んでるんですか?」


爪切男「両想いじゃなくてもいいんです。一方的に俺が好きだった女だけでも大丈夫です。だから、今、40歳になっても独身なんですけど、そんなに寂しくないんですよね。年を取れば取るほど、色んな女の記憶で、寂しさを相殺できる。まあ、前に一緒に暮らしていた女に『あなたは過去の女の人の思い出で自分を元気づけているから、何年も暮らしているのに、私があなたを助けてあげられてる気がしない』って言われて、何も言い返せなかったことはありましたけど……」


善雄「決して目の前の相手を大事にしてないわけではないのに……ちょっと趣旨は違うかもですが、いわゆるそういう行為の最中に、なんとなく気持ちが乗らないってとき、過去の記憶を引っ張ってくるみたいなこともありますもんね……」


爪切男「それはみんなやってると思います!やってないっていう奴は嘘をついている。男だけじゃなくて、女もやってるんじゃないかな……いや、言い過ぎかな、怒られそうで怖い」


彼女に過去を聞くべきか?


――おふたりとも、いい感じに過去が溜まってきているようですが(笑)。逆につきあっている女性に過去の話を聞くことはありますか?


爪切男「いやいや!聞かないです。つきあってる女の過去なんて聞いたって傷つくことしかないから! 過去を聞くのは風俗嬢だけです」


善雄「ああ……」


爪切男「風俗嬢に、初対面でいきなり『私、アナルいけるのよ』って言われたことがあって。今日まで15人の男が私のアナルプレイを通過してきた、と。そのときはプレイしながら『北斗の拳』で、空にケンシロウのライバルたちの顔が浮かぶように、よく知らない15人の顔を浮かべましたよね。今の彼女のアナルを、彼らが作ってくれたんだ……って。『プロジェクトX』で困難なトンネル工事を成し遂げた工事員のような。でも、そんなのは、彼女には感じたくないじゃないですか(笑)」


善雄「僕も、昔は聞いてましたけど、最近は傷つきたくないので、あまり聞かないです。でも、におうときはありますよね。LINEの駆け引きがうまいとか、酒に詳しいとか、『スラムダンク』が好き、とか……。明らかに女性一人では辿り着かなかったろう要素に影響を感じてしまう。ただの妄想かもですけど(笑)『死にたい夜にかぎって』に載っていた自転車の話なんてまさにですよね。後ろに乗っけたら、二人乗りがめちゃうまかったから、この子は色んな男と二人乗りしてきたんだろうな、と想像がよぎる……という」


爪切男「人とつきあう上では、言わなくていいこと、聞かなくていいこと、知らなくていいこと、がたくさんあるんですよね。でも、みんな言おうとしたり聞こうとしたりするからダメになっちゃうわけで。台本があるエンターテインメント、種のある手品……やっぱり、知らなくていいんです(笑)」


書くことで、過去の自分を切り離せるようになる


――お二人は過去の経験を文章というかたちでアウトプットされていますが、それによって過去との距離感が変わってきたりがするのでしょうか。


爪切男「本にしたような『初体験が、車椅子の女性だったんです』みたいな話は、むかし飲み屋で酔っ払いとかにはよく喋っていたんです。酔っ払いは笑ってくれるんですよね。友達には真剣な顔をされてしまうから、逆に喋りづらいんです。そうしたら『書いて残したほうがいい』って言ってくれる酔っ払いがいて、ブログを作ったのが始まりですね。まずは自分の記憶を留めておくために書こう、と」


善雄「出てくる女性、全員魅力的ですよね」


爪切男「なら、よかったです。でも、(主要登場人物である)アスカはたまったもんじゃないと思います。どうしても自分の視点で書くから、俺だけが頑張った話にとられがちなんですけど、彼女のほうが頑張ってますからね。でも、書くことで『もしかしたらあのときのアスカはこんな気持だったのかな』ってわかるようになっていったんです。だから、作家じゃなくても、どこに出すわけでなくても、覚えてるうちに1回書いてみることはオススメしますね」


善雄「僕も、自分の過去を書くことは精神的にいいなと思ってます。『卒業をさせておくれよ』第7回(お祭り騒ぎの裏側で)の内容は、高校時代の1番辛い記憶だったんです。当時は、死にたいと思ったくらいで。ずっとベットの上で動けなくて泣いていて。でも、あれが世に出たときに、その経験が役に立ったような気がして、救われたんです。文章にして客観的に見ることで、自分と切り離せたのかもしれないですし」


爪切男「たしかに、切り離せたのかな、って感覚はありますね。書かなかったらヤバかったかもしれない」


善雄「そうなんですよね、他人事のようになってくるというか。あの内容も、読んだゴジゲンのメンバーが『あんな辛いことあったら、俺だったら演劇やめてるわ』って言ってくれて。人から見たらそれくらい辛いよな……って話してるうちに、自分のことなのに他人事のようになってきて」


爪切男「他人のよう、という話でいうと、この本に書いた時代の俺を知っている友達は、あの頃の俺を本当につまらなかった、って言うんですよ。女がいるとそこに気持ちがいってるせいか、当時の自分はつまらなかったんしょうね。だから正直、誰かと付き合うのは怖いんです。つきあったまま、自分を保てればいいんでしょうが、それができる自信がないんですよね」


ぺこぱと野性爆弾に女性への精神を学ぶ


善雄「『死にたい夜にかぎって』を読んでいると、正直、自分が実際に会ったら『ちょっと関わらないほうがいいかも……』と思ってしまうような女性でも、爪切男さんは受け入れて、むしろ愛で包み込んでいる感じがしますよね。ビンタしてくる同級生とか、ラッパーの赤毛ちゃんとか、2メートルの身長がある女性、ダイダラボッチちゃん、とか……」


爪切男「昨日、M-1見てて(※取材日はM-1グランプリ2019決勝の翌日)俺の女性への考え方、ぺこぱのツッコミに似てるな、って思ったんですよ」


善雄「ツッコミが否定をしない漫才の」


爪切男「俺、全部、肯定してるんです。ダイダラボッチも『私、身長2mあるの』『2m……くらいの女とならすべてが新鮮に思える!』みたいな感じで(笑)。ぺこぱのツッコミは車に2回ぶつかられても『2回ぶつかられたってことは俺が車道にいたのかもしれない』って発想になるじゃないですか。みんなぶつかられたらすぐキレちゃったりするけど、ぺこぱのあの前向きな精神がすごく大事だと思うんです。だからってそういうお笑いがいいって言ってるわけじゃないですけどね。ぺこぱの漫才は単純に面白いだけだし。


――出てくる女性に対してもそういう爪切男さんなりの肯定と敬意があるから、心地よく読めるんですかね。


爪切男「野性爆弾の『概念』っていうコントで、“靴を履くという概念ではなく履かせて頂くという概念”であれば物の見え方が変わってくるのではないかっていうのがあるんです。だから俺は“チンコを入れるのではなく入れさせて頂いているっていう概念”です。拒否されていないっていうのがすごく嬉しくて。ホテルのエレベーターに乗っていると『この女の子は、俺のチンコを受け入れてもいいって思ってくれているんだ』って感じて、すごく嬉しくなるんです」


善雄「むちゃくちゃよくわかります。僕は今まで、自分から好きになった人と付き合えたことがなくて。うまくいったときは全部向こうから『これでもか』ってくらい“誘っても大丈夫感”を出してもらってたんですよ。たぶん自分に自信がないから、そうじゃないとなにもできなくて。だから、世の中的にはいわゆるヤリマンの人なんて嫌われがちですけど、僕は大好きですし、神様みたいな人たちだな、って敬意を持っています」


爪切男「O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール)っていうバンドが著書で素晴らしい“ヤリマンの定義”をしていて。『極論だけど、経験人数と相手の顔をきちんと覚えていれば、1000人とヤッてても、その子はヤリマンじゃない』っていうんです。ということは、5人としかヤッてなくても、4〜5人?とかあいまいに言う奴はヤリマンになる。人数を数えなくなる感覚が大事なんだろうなって」


善雄「あーー!」


爪切男「数えなくなったらヤバいんです。俺らは少し時間もらえれば、具体的な数字出せるじゃないですか」


善雄「ええ、確実に数え上げられますね」


爪切男「数えなくなった人は、思いやりがない人なんで、そいつは俺らが憎悪すべき、ホントのヤリマンなんです」


善雄「それでも、爪切男さんは会うと受け入れてしまいそう(笑)」


爪切男「敵対が苦手なんです。言葉の通じる日本人同士なら、話せば分かると思っていて。親父が言ってたんですよね。『話せばわかる。話せばわからなそうな奴からは逃げろ。でも、8割以上の奴は話せばわかる』って」

主演・賀来賢人に伝えたいこと



――最後に、ドラマ化に際して、今思うことを教えて下さい。


爪切男「主演は、賀来賢人さんなんですよね……。ありがたいやら恥ずかしいやらです。周りの人は早く二人が会ってるところを見たいって言うんですが」


善雄「会いたくないんですか?」


爪切男「たぶん……何を伝えても恥ずかしくなるので、叔母さんである賀来千香子さんの話に逃げちゃいそう。でも、俺、1時間以上は賀来千香子さんの話できるんですよ。『七人の女弁護士』とか、どれだけ彼女が我々の世代の女神であり、そして今、第二の全盛期に入って、なお美しく輝いているのかを……」


善雄「それは甥っ子に伝えてもしょうがないので、本人に伝える機会を探りましょう……!」

(取材・文:霜田明寛)

【書籍情報】


『死にたい夜にかぎって』
作者:爪切男
単行本・文庫本好評発売中
発行元:株式会社 扶桑社

 

【ドラマ・原作情報】
・ドラマ版公式サイト:https://www.mbs.jp/shinitai_yoruni/
・原作本公式サイト:https://www.fusosha.co.jp/special/tsumekiriman/ 

主演:賀来賢人
原作:爪切男『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)
監督:村尾嘉昭
脚本:加藤拓也(ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』)
制作:TBSスパークル
製作:カルチュア・エンタテインメント MBS

 

【放送・配信情報】
MBS:2020年2月23日スタート毎週日曜24:50〜
TBS:2020年2月25日スタート毎週火曜25:28〜
2020年2月25日(火)TBS放送終了後よりTSUTAYAプレミアムにて独占配信開始!

 

【善雄善雄 公演情報】
ゴジゲン第16回公演 「ポポリンピック」
作・演出:松居大悟
出演:目次立樹 奥村徹也 東迎昂史郎 松居大悟 本折最強さとし 善雄善雄 木村圭介(劇団献身)

札幌公演:2020年1月25日(土)〜1月27日(月) 扇谷記念スタジオ シアターZOO
京都公演:2020年2月8日(土)〜2月9日(日) THEATRE E9 KYOTO

お問合せ:Tel.03-6453-2080(平日10〜18時)
HP:http://www.5-jigen.com/
企画製作・主催:ゴジゲン

<アフターイベント情報>
札幌公演
1月25日(土)18:00 納谷真大(ELEVEN NINES)
1月26日(日)13:00 ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS)※追加アフターイベント
1月26日(日)18:00 「ゲーム王は俺だ!〜北の国だよ!全員集合〜」




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