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一之輔、書道には自信あり! 娘を相手に鬼コーチ化

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2020年01月26日 16:00  AERA dot.

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写真春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!
 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「大寒」。

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 小学生の頃、近所の書道教室に通っていた。その教室は筆の洗い場が外にあった。バケツに水を張ってその中で筆を洗う。真冬は朝からピーンと氷が張っている。子供は氷が大好きだ。氷の表面に墨で字を書く。「こおり」。そのまんま過ぎて笑いが止まらなくなる。筆先でつつくとあっけなく割れた。筆でグルグルかき混ぜていたら、筆先に氷のカケラが引っかかったのか、筆先がスポッと根元から抜けてバケツの中にゆらゆらと沈んでいった。「あ〜」。先の無い筆だけが残る。こないだも抜けたのでボンドでくっつけておいたのに。腕まくりして筆先を拾う。手が内側からパンッとはじけるんじゃないかと思うくらい冷たい。漆黒の冷水の中、どこにあるのかまるでわからない。5分が1時間に感じられた。ようやく見つかったが、肘から先が黒ずんで、霜焼けになった。おまけに風邪を引いた。風邪は末端からを実感した『大寒』の頃。

 冬休みの書き初めの宿題で、賞をもらった。小5の時だ。学校で2人の代表の一人に選ばれ、千葉市内の大きな体育館で行われる書き初め大会に出場することになった。たしか『大寒』あたりの寒い日だった。学校代表者がズラリと並び、「始め!」の太鼓の合図で一斉に書き始める。5年生の課題は『元気な子』。300人くらいいただろうか。こんな大勢の席書会は初めて。周囲はどんな字を書くのか気になって仕方ない。その日は千葉テレビの中継が入っていた。生まれて初めてテレビカメラを見た、そして映されるドキドキ感。端から順にカメラが迫ってくる。これまた気になって仕方ない。後日録画したビデオを観てみたら挙動不審な小動物みたいに頭を左右に動かして、四方八方を気にする私が一瞬映っていた。友達が来るたびにそれを見せた。「テレビに出ちゃったんだよ!(喜)」と盛り上がっていたら、「ジャージ着た『アカベコ』みたいだなぁ」とKくん。「上下違うジャージでよく千葉(大都会)に行けたなぁ」とも。その時書いた『元気な子』は装丁されて、30過ぎになるまで実家の床の間に掛けてあった。

 今年、小3の娘の書き初めの課題は『お正月』。「パパ、教えて!」と助けを求めてきた。娘は左きき。左手じゃ筆遣いは難しいけど、やってやろうじゃないか! 鬼コーチと化した私は娘の背後に陣取り、「そこ、角度つけて! 真っ直ぐに! 払いは元気よく! 太く行け! 曲がるな! もうちょっと辛抱して、そこから筆をいっぱいに使って大胆にっ!!」。学校から支給された用紙はたったの3枚。新聞紙にひたすら練習し、いざ本番。3枚書き上がる。「納得した?」。憮然とした表情の娘。「まだやりたい?」。頷く娘。よし、紙、買いに行こう! 文房具店で書き初め用紙を購入し、書く書く。途中、どうしても上手くいかず自分に腹が立ち涙を流す娘。いい涙だ! 最後の1枚。『月』の最後のハネ。「さー来い! そーだっ! はねろっ! いけるって! いけるって! さー思い切りはねてみろっ!!」……決まった。顔に墨をつけて抱き合って喜び合う父娘。「暑苦しい……」と家内が呟いた。

 提出したものが返ってきたら装丁して飾ろう。『大寒』の頃には戻ってくるかな。寒い日はなぜか筆を持ちたくなる。真冬に嗅ぐ墨汁の香りはいいもんだ。

※週刊朝日  2020年1月31日号

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