水溜りボンド『ANN0』密着&インタビュー:止まらない二人が見据える“コンビとしての未来”

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2020年01月27日 14:11  リアルサウンド

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撮影=竹内洋平

 2020年1月1日深夜、人気YouTube動画クリエイターの水溜りボンドが、新年1発目の『オールナイトニッポン0(ZERO)』でパーソナリティを務めた。2015年1月1日より、毎日投稿を続けてきた水溜りボンド。今やメインチャンネルの登録者数は420万人を突破し、トップクリエイターとして走り続けている。


(参考:水溜りボンド、「仲が悪くなりました」動画で見えた揺らぐことのない信頼関係


 2019年は彼らの夢が多く叶った年でもあった。ハイクオリティな動画投稿を続けながら、幕張メッセをはじめとした大型会場でのイベントを成功させ、雑誌『Quick Japan』で表紙巻頭特集を飾り、SHIBUYA109のシリンダー広告を務めた。そして7月に『オールナイトニッポン0(ZERO)』に初挑戦。その高いトーク力への反響を受けて、今回のお正月放送へとつながった。


 今回、リアルサウンドテックでは生放送のスタジオに潜入。また、オンエア直後の彼らにインタビューを行なった。2019年末“水溜りハウス”を飛び出し、新体制で突き進むことを宣言した彼ら。果たして、水溜りボンドが見据える2020年とは?


・水溜りボンド×ラジオリスナーの化学反応


 26時過ぎ、スタジオにやってきた水溜りボンドは、さっそくブース内で打ち合わせを開始。CM明けに流れるジングルを録音すると、今度は仲睦まじくスマホで動画を撮影し始める。そのときの動画が、トミーのアカウントで「ブースから皆様へお願い!!」というつぶやきと共に投稿されたツイートだ。


 ただでさえ話題満載なお正月。リスナーと共に「#水溜りボンドANN0」のトレンド入りに挑む。このツイートは、生放送を今か今かと待ちわびているファンたちによって、またたく間に拡散され、続々とつぶやかれていく。この一体感を生む力こそ、水溜りボンドの本領だ。


 ニッポン放送の建物内では、オンエア中のラジオ音声が響き渡る。25時から放送している『橋本環奈のオールナイトニッポン』がエンディングを迎えると「この後、深夜3時からは『水溜りボンドのオールナイトニッポン0(ZERO)』です」という言葉が。2人の固くなっていた表情が、心なしか緩んだように見えた。そして27時59分、ヘッドホンを装着。


 「1、2の3……」スタッフのキューが出ると、2人は息を大きく吸い込み「水溜りボンドのオールナイトニッポン0(ZERO)!」と元気よくタイトルコールを読み上げた。そして「橋本環奈さん、お疲れ様でした」と台本通りに語りかけるトミーに、「お疲れ様でした、とか言うな!」とカンタ。水溜りボンドらしい掛け合いが繰り広げられ、徐々に緊張が和らいでいく。


 「#水溜りボンドANN0」がトレンド3位に入ったという情報を聞けば、カンタが「すごい、いけー、登れー、駆け上がれー!!」と大興奮。リスナーから深夜ラジオならではの愛あるイジりが続々届き、メール文面が印刷された紙をトミーがビリビリに破くパフォーマンスも飛び出す。だが、よく見ると破いているのは余白の部分。さすが「YouTube界のNHK」との異名を持つ、根が真面目な水溜りボンドだ。


 積極的にメールを読み上げていく2人にリスナーも、粋なレスポンスで応える。気づけば『水溜りボンドのオールナイトニッポン0(ZERO)』は、“無人島に行くアメリカ人とチャーハン職人による、パーカーとチャーハンの通販番組”という謎番組に仕立て上げられてしまう事態に。全リスナーの盛大なボケに、カンタが翻弄され、トミーのツッコミが炸裂するという、新たな化学反応が生まれた放送だった。


・「みんなの代わりにやってる」を“背負ってる”


 視聴者が自ら選んで見に行くYouTube動画と異なり、ラジオはつけていたら耳に飛び込んでくるメディアでもある。この日たまたま聴いていたという人に向けて、彼らは自分たちをこんなふうに紹介した。


 「秘密基地の最強バージョンを作りたい、友達の誕生日にサプライズをしたい……誰もが思う『やってみたい』を一般の兄ちゃんたちが代わりにやって、10分くらいの動画にまとめてる。『本当にやるのはいいわ』となるところを、本当にやるのがYouTube動画クリエイターである」と。


 「本当にやるのはいいわ」となるのは、実際にやるのは大変なことだから。もちろん、彼らだってそれは同じだ。番組内では「話してるときがピーク」「いざ、やるとき全然楽しくない」との本音も溢れる。毎年恒例となっている無人島企画や、お互いに仕掛けるドッキリ企画、そのほかの動画も年々そのスケールが大きくなり、ついにトミーはおそらく日本人動画クリエイターとしては初となる南極大陸に上陸してしまった。


 そんな途方もない労力をかけて実現してきた理由を、「背負ってる、(みんなの)“やってみたい”を」と語っていたのが印象的だった。多くの人が「やってみたい」「見てみたい」を代わりに実現していくという使命感。そして、彼ら自身が抱く想いが自然と重なるから彼らの動画はネタが尽きない。


 今回のラジオも、気づけば「よく知るトミーとカンタがラジオの生放送を乗りきるところが見たい」「自分たちの手でお正月にトレンドワード1位をかっさらう体験がしたい」と、彼らの願いがリンクした形に。だからこそ、水溜りボンドの夢は次々と叶っていくのだろう。


 「楽しかった」「またやりたいな」ホクホクした表情で1時間半のオンエアを終えた2人が、そのままブースでインタビューに応じてくれた。


・「視聴者さんたちを携えて、公式戦に行くみたいな気分」(トミー)


ーー生放送、お疲れ様でした。


カンタ:ありがとうございます。こんな夜中に。


トミー:本当に、新年早々わざわざ。


ーーありがとうございます(笑)。オンエアを終えて、率直な感想はいかがですか?


カンタ:無事うまくいってよかったです。


トミー:いやいや、うまくいったかどうかは判断するのは俺らじゃないから!


カンタ:でも、Twitterでトレンド1位だったから。(マイクに向かって)ありがとうございます、みなさん!


トミー:それ、流れてないからね!


カンタ:まだ続いてるのかなって。そういうドッキリかもしれないし(笑)。


トミー:ニャハハ。いやー、やっぱりめちゃくちゃ楽しかったですね。まず、相方が対面に座ってトークするというのが、新鮮で。YouTubeだといつも隣に座ってカメラを見ながら話してるから、目線に困るというか。だから、今(隣になって)めちゃくちゃしゃべりやすいです。


カンタ:たしかに! 生配信とかだったら、数字とか画面越しに反応が見えるんですけど、このブースで完結しちゃっているのが、すごく難しくて。逆に自分たちがラジオを聞いていた方だったから、そっちの想像が膨らんで。こういう感じで聞いてる人がいるのかな〜とか。


トミー:そういう意味で緊張はしましたね。YouTubeの動画だと自分たちで編集もできるし、あまり決まりごとがない中で自由に話せるけど、ラジオだと何分でセリフを言うとか、一発勝負で進行しなきゃいけないので。それは、ステージと近い感覚だなと思いました。


ーー前回の『オールナイトニッポン0(ZERO)』が大好評だったことを受けて、今回第2弾となりました。


カンタ:本当に嬉しいです。まさか2回目できると思ってなかったので。これもニッポン放送の方々と、何よりいつも応援してくれる視聴者さんのおかげです。YouTubeの動画って、僕らが楽しいことを好きなだけ喋っている部分があって。でも、ラジオという場になると、いつも付き合ってくださっている視聴者さんたちを携えて、公式戦に行くみたいな気分でした。


トミー:(チャンネル登録者数)420万人のグループの中にいる学級委員2人、という感覚でいました。「誰が代表していくんだ?」「じゃあ、トミーとカンタが行って、喋って来いよ」みたいな。みんな同じ母体だと思うので、緊張して聴いてたんじゃないかな。「大丈夫か、あいつら」っていう。


カンタ:“僕らが失敗したら、もうYouTuberが呼ばれなくなるかもしれない”というプレッシャーもありました。まだまだ“YouTuber”と一括りで見られる場面が多いので。


トミー:逆に、僕らがいい結果を出したら、全体にいい影響を及ぼせるんじゃないかとも思っていて。背負うものがあるのは承知の上で、気合が入ったところはありますね。


ーー前回にも増して、積極的にリスナーからのメールを読み上げている印象でした。


トミー:打ち合わせのときから、それは意識していました。YouTubeよりもずっと長い歴史を持つ、ラジオという媒体で培われてきた文化というか、コミュニケーションの取り方みたいなのを経験したくて。ふだんからラジオを聴いてくださっている人からのリアクションもほしいなと思っていたので、たくさんふざけてくれて嬉しかったです。「これ、聴いてたやつ!」みたいなラジオっぽいやりとりに、一人称視点で触れられたのはめちゃくちゃいい経験でした。


カンタ:きっとYouTubeと同じような話をしたら、いつも見てくださってる視聴者のみなさんは盛り上がってくれるでしょうけど。やっぱりラジオの土俵に立ったら、そこでの闘い方があると思うし。意外と、そんな新鮮な状況から、YouTubeでは出なかった僕らの一面がポロッと出てきたんじゃないかなと。ずっと応援してきてくれた視聴者さんにとっても新しい発見があって、ラジオをずっと聴いてきた方に「お、水溜りボンド、けっこうしゃべれるじゃん」みたいに思ってもらえていると……。


トミー:幸せだよね。YouTubeチャンネルとしての『水溜りボンド』なのか、コンビとしての“水溜りボンド”なのかっていうところの違いでもあるんですよね。チャンネル名とコンビ名を同じにしちゃったので、ややこしいんですけど。トミーとカンタの2人で構成されたコンビが、YouTubeで活躍するときはこう、ラジオで話すときはこう、みたいな感じで、どこで何をするのが一番いいのかっていうのを考えながら、今後も取り組んでいきたいなって。


・「僕らにできることを可視化していきたい」(カンタ)


ーーちなみに、これまでどんなラジオを聞いていたんですか?


カンタ:ダウンタウンの松本人志さんと高須(光聖)さんの『放送室』(TOKYO FM)は聴いてましたね。今だと星野源さんやオードリーさんの『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)を聴いています。


トミー:僕も同世代の方がやってるラジオはチェックしてます。あと、オードリーさんの『オールナイトニッポン』にハマったのが浪人時代だったので、現実逃避だったのかなと思ったんですけど、エンターテインメントを演る側となって分析するつもりで聴いていても、いつの間にかいちリスナーになってるんですよ。それってすごいことだなと。テレビと出すところと、全然違うじゃないですか。それにラジオを聴いてからテレビを見ると、また違う感情が湧くし。それってラジオという媒体にマッチしている証拠だと思うんですよね。


カンタ:実は僕、武道館でやったオードリーさんのイベントにも行っていて。そこに集まったファンの人たちの熱量がすごいんです。「あのラジオを生で見られる!」みたいな。YouTubeをはじめ、メディアが多様化してきましたが、やっぱりラジオにしかない魅力ってあるよなと思いました。声しか聴こえないし、深夜ってのもいいんですよね。そんな魅力が、僕らの活動を通じて、少しでも広がっていってくれたら嬉しいです。


ーー夢だったお正月にラジオ出演という最高の形で2020年をスタートされましたが、2020年はどのような活動を目指していますか?  


トミー:新体制になっても、基本的なスタンスは変わらないつもりです。チャンネル的には、誰でも楽しめる動画を創りたいとは思っているんですけど、生き方として安定を求めているわけじゃ全然ないので。挑戦し続けることがやりたいことですし、やりたいことを制御して数字を狙うとかはありません。やりたいことをやる、そのスタンスを崩したことはないんで。それにのっとって、やれることが増えていくという感じですね。


カンタ:5年やってきて「YouTuberにはなれたのかな」という感覚でいます。ただ、“YouTuber”という職業が世間に認められたと感じる一方で、「じゃあ何ができるの」となっちゃう瞬間があるのも事実で。だから、こうやって「ラジオをやらせてもらいました」という経験が、わかりやすく僕らのできることとして可視化されていくのかもしれません。そんなふうに、どんどんできることが見えていく面白い年にしたいですね。


トミー:今はYouTubeチャンネルの『水溜りボンド』と、ごちゃまぜになっている状態ですが、これからコンビとしての“水溜りボンド”がどのくらいまでいけるのか、今年と来年にかかっていると思うので。その挑戦が、つまるところYouTubeで活躍してきたクリエイターが、どんな関係性になっていくのかということにも繋がりますし、それが「業界」と言われるものになるのか、それとも「いちクリエイター」として突き詰めていくのか。そうしたことも含めて、大きな変革期を迎えるんじゃないかなと思います。


(佐藤結衣)


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