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『テセウスの船』掴みかけた手がかりは振り出しに “視線”が重要なメタファーに?

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2020年02月17日 06:01  リアルサウンド

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リアルサウンド

写真『テセウスの船』(c)TBS
『テセウスの船』(c)TBS

 被害者の集いでの岸田由紀(上野樹里)の説得が功を奏し、新たに証人が名乗り出た『テセウスの船』(TBS系)第5話では、真犯人をめぐって登場人物の思惑が交錯する。


参考:日曜劇場、ミステリージャンルで変化? 『テセウスの船』原作との比較で謎を解く


 音臼小事件尾の真相を追う田村心(竹内涼真)の相棒は、31年前は若き日の佐野文吾(鈴木亮平)だったが、現代では週刊誌記者となった由紀だ。心とともに面会に訪れた由紀に、佐野は「ふつつかな息子ですが」と頭を下げる。元いた世界で心と由紀が夫婦になったことを知らないはずの佐野だったが、心の表情から伝わるものがあったのだろう。


 証人として名乗り出た松尾紀子(芦名星)の旧姓は佐々木で、死んだ長谷川翼(竜星涼)の元婚約者でもあった。松尾紀子は、刑事の金丸(ユースケ・サンタマリア)が崖から突き落とされたときの様子を知っていた。


 『テセウスの船』現代編では、由紀や松尾のほかに心の姉・鈴(貫地谷しほり)や、鈴の義理の母で元小学校教師の木村さつき(麻生祐未)がキーパーソンになっている。「年月は人を変える」とさつきが言うように、31年という時間は外見でだけでなくそれぞれの内面にも変化を及ぼしていた。


 さつきは整形して名前を村田藍に変えた鈴を「殺人犯・佐野文吾の娘」と名指しし、協力を求める。教え子で義理の息子であるみきお(安藤忠信)は音臼小事件で後遺症を負って車いす生活。さつきの佐野に対する憎悪があからさまに外に漏れ出しているのが恐怖を感じさせる。小学校教師として生徒から慕われていたさつきが、ここまで変貌してしまった理由が気になる。


 また、明るい性格の少女だった鈴からは笑顔が消えていた。いったんは佐野の再審請求に賛成する決意を固めたが、さつきの脅しに怯え、心に向かって「これが私たちの運命なんだよ」と首をうなだれる。加害者家族への世間の冷たい視線が、鈴たちの人生にも大きな影を落としてきたことが虚ろな表情や物腰から伝わってきた。


 本格ミステリーであり時を超えた家族の絆を描く『テセウスの船』では、視線が重要なメタファーの役割を果たしている。明音を監禁した山中の小屋で扉の隙間から凝視する眼や、鈴の行動をとらえる監視カメラの視角など、窃視することは見られる側にとって同一性を奪われることに通じる。真犯人によって運命を狂わされた鈴や佐野は、幸福な未来に生きる可能性そのものを奪われているとも言い換えられる。


 一方で、心とともに音臼小事件を探る由紀は、「自分には見えていないものがあるって気づかされたんです」と佐野に語る。真実を探求することと、そこにあったかもしれない可能性を信じることとは、必ずしも矛盾するとは限らない。佐野や心との出会いを経て事件の核心に踏み入る由紀は、その関係性を体現する人物であり、ラストシーンの抱擁は、信じ合うことによって別々の現実が重なり合うような象徴的な場面だった。


 必死の努力でつかみかけた真犯人に通じる手がかりは闇に葬られてしまった。ネット上での犯人をめぐる考察が盛り上がりを見せる中、制作サイドからは原作と異なる真犯人の存在も示唆されている。明らかに怪しい行動を見せる人物のほか、過去と現在、またもう一つの現在を行き来する中で浮上するキャラクターも考えられる。ミステリードラマとしてここからが佳境の『テセウスの船』。見逃せない展開が続きそうだ。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。


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