喜美子の心の奥に残る八郎の存在 『スカーレット』新しい家族の形

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2020年02月17日 12:12  リアルサウンド

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『スカーレット』(写真提供=NHK)

 信楽窯業研究所で喜美子の話題とともに八郎の話が上がると、武志(伊藤健太郎)は肩を落としていた。NHKの連続テレビ小説『スカーレット』が20週目の初日を迎え、八郎(松下洸平)の存在の大きさを感じる回となった。


 「川原八郎は妻である川原喜美子(戸田恵梨香)の才能に負けて信楽から逃げていった」そんな噂に顔を強ばらせる武志に、恩師・掛井(尾上寛之)は優しく寄り添う。「親は親。子は子ぉや」という掛井の言葉に、表情が和らぐ武志。武志にとって喜美子と八郎は、母と父であり、尊敬する陶芸家でもある。陶芸家としての意地と誇りが2人を別れさせたことも理解している。そんな中、掛井がかけた言葉は、両親の関係に複雑な心境を抱いていた武志の心をそっと解きほぐした。


【写真】穴窯で佇む八郎(松下洸平)


 「あかまつ」では4年ぶり信作(林遣都)と八郎が再会する。気楽に「どうでもええ話」をしたい信作と、そんな信作に「何でも言え」と伝える八郎。端から見れば会話の内容はくだらないものなのかもしれないが、信作と八郎のやりとりから、2人の仲が出会った頃と変わらないものだと分かる。昔のままの信作と八郎の姿に、安心感を抱いた視聴者もいるはずだ。


 そして締めくくりは喜美子の言動だ。アンリ(烏丸せつこ)と語った夜のことをほとんど覚えていない喜美子だが、アンリから「1人で寂しいんやろ? 泣いてたやん」「ハチさん、ハチさん言うて泣いてたで」と伝えられ、呆然としていた。喜美子の心の奥底には、八郎の存在がはっきりと残っていたということだろう。


 どんな噂が立とうと、武志にとって八郎が父親であることに変わりはない。そして喜美子にとっては、陶芸家への道に進む代わりに失った「大事なもの」だ。1人で過ごすようになったことで、よりいっそう「大事なものを失った」と感じていたのだろう。第20週のタイトルは「もういちど家族に」。新しい家族の形が築かれるのかもしれない。


(片山香帆)


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